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スピーカの違いなど

最終更新日2011-04-23


今日はEVM-12Sを軸に,3種類のスピーカーを録音してみました。

トーンは全て12時に設定しています。FET入力で,ゲインはマックスです。
出音はそれほど大きくありません。弦の生音が入ることがあります。
久しぶりの録音なので録音の音量も小さくなってしまいました。

いつも通り,PCM-D50の一発録り,44.1kHz-16bit,No-EQ,No-EFXです。
3台のキャビを横に並べています。マイクがXY配置なので鳴らすスピーカーによってやや定位が変わります。

BRIGHT DEEP ROCK MANUAL ACCENT
VOLUME JAZZ TREBLE MIDDLE BASS PEDAL OVERDRIVE LEVEL


本日の食材はスピーカーです。ものは,VINTAGE-30,AXA-12,EVM-12Sです。

何せ最近ギターに触っていなかったので,演奏がよれよれなのはいつも通り愛嬌ですが,チューニングもボロボロでした。


AXA-12 :
フェーン(FANE)のアルニコスピーカー。
フェーンはハイワットやオレンジに使われていたことで有名(ただしフェライト)。
ツイードデラックスサイズのキャビに入れて使用。オープンバック。

ストラト,ES-335で録音
110422_AXA_ST.mp3
110422_AXA_ES.mp3


VINTAGE30 :
セレッション(CELESTION)のデファクト・スタンダード的なスピーカー。
マーシャル,フェンダーをはじめ様々なアンプメーカーが採用している。
自作のキャビに入れて使用。クローズバック。

ストラト,ES-335で録音
110422_V30_ST.mp3
110422_V30_ES.mp3


EVM-12S :
エレクトロボイス(ELECTRO-VOICE)の楽器用スピーカー。
EVM-12Lの兄弟にあたる。耐入力,音圧は12インチとしてはピカイチ。
元々PA用のシステムとして入手したので箱はそのまま使用。バスレフ。

ストラト,ES-335で録音
110422_12S_ST.mp3
110422_12S_ES.mp3


3つの比較。 諸元の抜粋はあえてデーターシートの記載をそのまま載せています。

AXA-12(FANE):
イギリス製のスピーカー。10年以上使用してきたのでエージングは十分。
こなれた音色になっている。特筆すべきはその耐入力の高さ。アルニコスピーカーとしては破格の100Wとなっている。 アルニコは減磁しやすいので100W入れる勇気はないが・・・。
VINTAGE30と比較すると丸い感じがしてハイのザラつきは少ないが,荒い感じにはならず特有の味がある。 クリーンだと音抜けがやや物足りない。 ミッドの強さは十分で,暖かさと太さを演出していると思う。 低域はオープンバックなのでタイトになっている。

Power Handling (A.E.S.)            : 100W
Frequency Respons                  : 70Hz - 5.5kHz
Sensitivity(in above range)1W/1m   : 101dB
Resonant Frequency fs              : 85Hz
Voice Coil                         : 1.75inch
Magnet Weight                      : Alnico 34oz. ->0.96kg

VINTAGE30(CELESTION):
2009年に新品で入手したスピーカー。生産国は??。
他の2台と比べるとザラついたハイが特徴的。 しかし,標準的なギター用スピーカーの中では能率が高く,中低域はよく出るほうなので,痛いだけではなくピッキングニュアンスもしっかり出る。 明るくカラっとした音色が持ち味。クリーンでも歯切れがよく抜けがよい。 クローズバックだが低域がルーズにならないのは強力な磁石のおかげかもしれない。

Power rating(W)                : 60W
Frequency range                : 70-5000Hz
Sensitivity                    : 100dB
Resonance frequency Fs         : 75Hz
Voice coil diameter            : 1.75"
Magnet type                    : Ceramic
Magnet Weight                  : 50oz. ->1.42kg

EVM-12S(ELECTRO-VOICE):
80年代に製造されたと思われる。PA用のスピーカーシステムを改造して使用している。
中域の太さが圧倒的で,ピッキングニュアンスが非常によく出る。 ハイの抜けも悪いわけではなく,おいしい帯域がしっかり出ている。 暴れる成分が少ないので,荒っぽさや,ザラつきは少ない。リニアな特性を感じさせる。 クリーンでも透明な音色で,パンチのあるレスポンスを持っている。 一応バスレフだが共振効果は弱く設計されているっぽい。低域はタイト。

Long-Term Average Power Handling Capacity : 200Watts(per EIA Standerd RS-426A)
Frequency response in TL806               : 80-7000Hz
Sound Pressure Level, 10feet 1watt input  : 91.5dB  ->1W/1m : 101dB m/W
Free-Air Responce Frequency               : 70Hz
Voice coil Diameter                       : 2.5in.
Magnet Weight                             : 2.2kg(4.9lbs)

3者を比較:ボイスコイル
VINTAGE30とAXA-12は1.75インチ径のボイスコイルをもつ。 ボイスコイルが小さいとJENSENに代表されるような明るくパリっとしたトーンになるらしい。 ボイスコイルが大きいスピーカーの代表はJBLのD-120,K-120,E-120だ。これらは4インチのボイスコイルを持っている。 ボイスコイル径が大きいとよりフラットな特性になるようだ。 EVM-12Sは2.5インチと中庸なボイスコイルを持っているので明るさもありつつ,ピーキーさが少ないという特性になっているようだ。 これはEVの資料に書かれていたし,確かにそのように感じる。
ボイスコイルはEVM-12Sはエッジワウンドと表記がある。素材はアルミのようだ。 VINTAGE30とAXA-12は通常のラウンドワイアのようだ。素材はおそらく通常の銅線だろう。 エッジワウンドボイスコイルは通常の丸い断面をしたワイアはなく,四角い断面をしたワイアを巻く方法で,磁気ギャップ中の占有面積を稼ぐことができ,能率が上がるという利点がある。
ボイスコイルボビンの素材はEVM-12Sがポリイミドを採用している。AXA-12はファイバーグラスのようだ。VINTAGE30は公表されていない。 ボビンの耐熱性が高ければ耐入力は大きくなる。しかし,低周波の大電力を印加した場合はコイルが焼ける前に物理的に破壊することも考えられるので耐入力は目安と考えたほうがよいだろう。 また,アルニコ磁石は大入力時に減磁しやすいらしくそういった意味でも無理な運用は避けるべきと思う。

3者を比較:マグネット・ヨーク
VINTAGE30とEVM-12Sはフェライト・セラミック・マグネットを使用している。 フェライト・セラミック磁石は磁束密度が低いので大きなマグネットが必要になる。 VINTAGE30もギター用スピーカーとしては大きなマグネットを搭載しているのだが,EVM-12Sはさらに1.5倍のマグネットを搭載している。 さらにさらにJBLのE-120は8.5kgのマグネットを搭載しているということなので別格だ。 E-120の場合は先ほども述べた4インチのボイスコイルをもつので,この大きなボイスコイルのギャップを十分な磁束密度で満たすためにこれだけのマグネットが必要になったと思われる。 一方,AXA-12はアルニコマグネットを使用している。アルニコ磁石は残留磁束密度が高いので小型のマグネットでも強力な磁石ができる。
とはいえ,結果的にはギャップ中の磁束密度は3者でそれほど変わらないのではないかと思われる。
ギター用のスピーカーは音圧が必要なため,磁束密度を稼ぎ能率を高めるために,ヨークのギャップ長とボイスコイルの高さをそろえて設計する傾向がある。 このため,大入力時にはコイルがギャップを飛び出し,能率が落ちるのでコンプレッション効果が得られる。 EVの資料を読むとEVM-12Sもこのように設計していると記載がある。 VINTAGE30とAXA-12は伝統的な設計なので当然このような設計になっていると思われる。 また,EVM-12Sだけは大口径コイルを生かしてヨークの真ん中に穴を開けて放熱効果を高めている。

3者を比較:バスケット
スピーカーのコーンとマグネットを支える枠の部分全体をバスケットとよぶ。 VINTAGE30とAXA-12はプレス・スティールのバスケットになっている。鉄板を打ち抜き,プレス機で成型しているものと考えられる。 フレーム部分にリブや曲面を巧妙作り出すことで強度を維持しているものと考えられる。 ちなみにギター用のスピーカーはほとんどプレスで作られている。一方,EVM-12Sはアルミダイキャストのバスケットだ。 プレス・スチールは強度は十分だと思われるが鉄の特性上,鳴きやすく余計な響きが出やすいフレームと言えるだろう。 オーディオでは余計な鳴きが嫌われるので鳴きの出にくいダイキャストのバスケットはワンランク上と見られている。 ギター用の場合はどちらでもいいのだろう。どちらかといったら安いほうを選ぶのではないだろうか。 ただしアルミダイキャストのほうが断面積が大きく熱伝導率も高いので放熱性が高く,耐入力は向上すると考えられる。

3者を比較:まとめ
VINTAGE30もAXA-12もEVM-12Sも伝統的なスピーカーユニットを進化させたカタチといえる。 VINTAGE30はもっとも保守的だが,能率も高く素直な特性なので応用が広い。 AXA-12は通常のアルニコスピーカーが15W〜25W程度の耐入力しかないところで100Wという破格の耐入力を得ている。 しかし,構造は大きく変わっていないので,大きな入力は入れないほうがよいと思う。 何にせよ,12インチ1発ならば50W以上のアンプを接続するのは無理があると思う。
音色的にこのVINTAGE30とAXA-12はまったく異なり,AXA-12はハイを抑えた落ち着いたトーンになっており,VINTAGE30はセレッションらしい明るい音色になっている。
一方,EVM-12Sは安定して大入力に耐えられるように設計されいる。構造もがっちりしているので信頼性の高いユニットといえる。
AXA-12とEVM-12Sは高域があまり強調されず,フラットな印象がする。逆に言うとVINTAGE30のハイはやや強調しすぎかも。 AXA-12とEVM-12Sは耐入力が高いだけにコーンの動きが重い印象があり,音量を上げるにつれてグググっと前に出てくる。 特にEVM-12Sのヘッドルームは青天井で,どこまでも音圧とレスポンスが伸びていくイメージが強い。 VINTAGE30は大音量でも比較的安定しているが,やや抑圧的で平面的な印象にとどまる。

AXA-12は音色が暗く,地味な印象だが,ミドルのおいしいところは十分出ていると思う。組み合わせるアンプを選ぶと思われる。
VINTAGE30は明るさとメリハリがあり抜けがよい。中低域もしっかり出ているのでバランスはよいと思う。
EVM-12Sは中低域がとにかくブットクてピッキングニュアンスがよく出る。音量を上げればハイも抜けてくる。


おまけの録音。全てEVM-12S

途中でピックアップを切り替えています。
110422_12S_ES_11.mp3

アルペジオはギターのボリュームを絞ってます。
110422_12S_ES_PC.mp3

途中でミッドブーストを入れてますが,よく分かりません(汗)。
最後にギターのボリュームを絞ってます。
スムーステーパー改造をしているのでチャリチャリした音になってます。
110422_12S_ST_11.mp3


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