1、どこで歪ませるか

*歪みを発生させる要因としては、まず真空管やトランジスターなどの増幅器があげられます。大きな入力が入ると、出力の大きさに限界があるため歪みを生じます。

このアンプには回路構成をみてわかるように何段階もの増幅回路で構成されています。特にドライブチャンネルの2段の真空管は歪みを発生させるために存在します。しかし、その他の真空管も歪みを発生させることができます。

例えば出力管の発生する歪みはプリアンプで発生させる歪みとは倍音構成が異なり、Mesa/Boogie 出現以前のギターアンプは全て出力管により歪みを得ていました。そもそもギターアンプの歪みは、大きな音を出そうと過度にボリュウムを上げた結果であり、その時代の歪みにこだわる人は一向に減りません。

出力管で歪みを得るにはマスターボリュウムを上げる必要があり、音量も必然的に大きくなります。たとえその音が欲しくても音量コントロールできないため、困ることがよくあります。もし出力管による歪みが欲しければパワーアンプとスピーカーの間につなぐパワーアッテネーターの使用を薦めます。

ドライブチャンネルと出力管以外にも、出力の大きいギターでトーンコントロールとゲインを大きく上げると2段目の真空管で軽いクランチが得られます。つまり、ノーマルチャンネルでもプリアンプにおいて歪を得られることになります。このように歪みを得るにはいくつかの選択肢があり、得られる音も異なります。

2、Normal chとDrive chの関係

*ドライブチャンネルはノーマルチャンネルの後ろに位置するので、ノーマルチャンネルの音作りの影響が出ます。2つのチャンネルを切り替えて使うとき、どちらかのチャンネルで好みの音を得るためには、もう一方のチャンネルの音がある程度犠牲になるのは避けられないことです。

Drive のつまみはそれを補正するためにあります、Drive にはBottom、Top 2つのブーストが装備されていますが、この2つは歪みの前すなわちプリイコライザーです。また独立したHi Low のイコラザーも装備していて、この2つは歪みの後、ポストイコライザーです。これらを上手に使えば欲しい音色に近い音が作れると予想しています。

3、パワーチューブの話

*パワーチューブすなわち出力管によりアンプの音は変化します、特にフルアップにしたときにその差が顕著になります。ギターアンプではよく使われる出力管の種類は6L6、5881、6550、6V6、EL-84などがありますが、このアンプにはEL-34が使われています。

それぞれが異なった音色を持っていますが、EL-34はイギリス製のギターアンプによく使われ、Orange 、Hiwatt 、VOX 、Marshall 等で使用されたこともありました。そして、EL-34と一言でいっても製造された国、メーカー、時代により音も異るといわれています。

*15W以上のギターアンプでは普通、Push-Pullと言う、2本の出力管を使う回路になっています。この場合2本の出力管の特性は同じであることが理想的です。しかし、残念ながら真空管は、たとえ同じ工場で同時に製造したとしても、特性が同じになることはありません。

そのため、Push-Pullで使う場合は特性の近い真空管を選ぶ、ペアマッチングが必要になります。ペアマッチングの方法もバイアスに必要な電圧を合わせるだけであったり、倍音構成や音色までもそろえるのが特長のブランドもあり値段も2倍くらい違います。どのブランドの真空管を使用するかは経験でしか得られないノウハウがあるので一言では説明できません。

4、歪みとEQのホットな関係

*音色をかえる最も手っ取り早い方法がイコライザーを通すことです。と言っても、いつどこでEQ に通すかで音色が異なってきます。

具体的にはEQ を通すのが歪ませる前か後ろかの違いが一番効いてきます。それを意識することで自分の欲しい音にに対する音作りの実現性が大きく異なってきます。例えばワウペダルをディストーションエフェクター前につなぐか、後ろにつなぐかがよくわかる例です。次の表にまとめてみました。これはHosoya.REV.の主観です。

歪みの前 高音域(Treble) Boost より倍音が多くなる、ギラギラする、痛くなる
Cut 甘くメロウな音、ウーマントーン
中音域(Mid) Boost 太さ、厚みが出る、荒っぽくなる
Cut 扱いやすい、高音域がうるさい、薄っぺら
低音域(Bass) Boost 存在感が出る、暴れる、もこもこ
Cut 前に出る、軽くなる、音圧感がなくなる
歪みの後 高音域(Hi) Boost ジョリジョリ、ザリザリ
Cut こもった音、ぬけが悪くなる
中音域 Boost ラウドな音、うるさい
Cut いわゆるドンシャリ
低音域(Low) Boost ズンとくる、迫力がでる、音が飽和する
Cut 中高音域が前に出る、退屈になる

*単純にイコライザーと言ってもアンプに装備されているつまみだけではありません、アンプ内ではつまみにはならないイコライザーが多く存在しています。

アンプ以外でもギターのトーンコントロール、エフェクター、スピーカー、スピーカーの数やスピーカーの装着されてるキャビネット、はたまたシールドやケーブルまでも関係してきます。それぞれのイコライザー的要素が、歪みの要素の前にあるか後ろにあるかを考慮して、音作りするとより積極的な音作りができるはずです。

5、EQ?

*一言でイコライザーといってもどの周波数をどのくらいの幅でブースト、カットするかで違ってきます。イコライザーにもいろいろと種類がありますが、このアンプのトーンコントロールに使われているのは、Fender が中期から採用しているトーンコントロールをモデファイしたイコライザーです。このイコライザーはギターアンプ用として使いやすく、回路構成は同じですが定数の異なったトーンコントロールがほとんど全てのギターアンプで使われています。特にトレブルによる高音域のコントロールに優れています。

このアンプではさらに幅広い音作り目指すためシフトスイッチを装備しました。ミドルはカットする方向だけに働き初期のFender では固定されていました、このアンプではより幅広く調整できるように大きめの数値のポットを採用しています。

ドライブチャンネルのポストイコライザーであるHi 、Low はシェルピングと呼ばれるタイプで、オーディオ機器によく使われていて、高音域、低音域を幅広くブースト、カットできる特徴があります。

*もしつまみを回すだけでは求める音が得られないとき、例えばHi のききぐあいがもっと高い音域だけの方がよいとか、もっとトレブルが欲しいとか言った場合には回路定数の変更が必要になります。それはまさに部品の交換を意味するので簡単にはできません、どの部品をどのくらいの数値に設定するかは多くのノウハウを必要とするので、ますます大変です。またさらに、パーツのメーカによっても音色は異なります。これらに関してはいまだHosoya Rev.では研究中の課題です。しかし、その時ベストと考えられる回路定数にしてあるのである程度使えるはずです。

6、音の選択肢

*このアンプは幅広い音作りを目指して設計したのでいろいろな音が作れる...たぶん。

*一番モダンな音はゲイン、トレブル、ドライブを全開にしローをグイッと上げてハイも好みにあわせてちょっと上げると、メサブギーも真っ青のサウンドになる。

*クリーンのままでマスターを上げていくと、ビートルズもびっくりのナイスクランチが得られます。このときパワーアッテネーターを使い5極管と3極管を使い分けるとより音を作り込めます。

*マスターを上げきれば、ジミヘンになりきれるかも。

*トレブルをおさえ目にすればぶっといクランチもいける。

*シフトによって、トーンコントロールの基本的な特性を変えることができます。左に倒すと、Fenderタイプのきらびやかな音。右に倒すとMashallタイプのややミドルの強い、ドンシャリになります。

*ドライブチャンネルではHi とLow を上げればワイドレンジのモダンなトーン。両方下げ目にするとナローレンジな古くさいトーンとなります。

*ドライブを下げてトップを右に倒してブーストすると、さらにトレブルの効いたクランチとなります。

*ブーストは、調整可能なハイカットフィルターを装備していて、ハイをカットしたミドルブーストとしても機能します。

7、足づかい

*ギターを弾くには両手が必要です。演奏しながら音色の切り替えが必要なのは現代の音楽を演奏するために必要なことです。そのためにフットスイッチを用意しました。

*ソロを弾くときに音を大きくしたい。そんなときはBOOST 機能を使います。また、ブーストしたときの高音域の量を調整することができます。

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