オーディオアンプの自作


3:部品選定

3-1:基本方針

部品を選ぶ際に考えるのは「良い」部品を使いたいということです。 部品の「良さ」を一言で語るのは難しいですが,自作屋が期待するのは「音の良さ」でしょう。 しかし,実際のところ事情はやや異なるように思います。

世間で定評のある部品を見ていくと共通する質感があります。 部品自体の重さ,リード線の太さ,固さ,輝き,部品表面の色・艶などの仕上げの状態,はんだ付けした時の安定感などです。 こういった質感は品質管理の行き届いた高額な部品に共通して見られます。 そして結果的には自作品の完成度の高さと信頼性につながります。

自作アンプで信頼性というと大げさですが,いざというときに壊れにく長く使えるということです。 定格電圧・電流の余裕度,数字には表れない性能に効いてきます。 振動しにくさ,外乱に対する強さ,直線性・線形性などに効いてくるので,結果として音質的にも有利に働くことになると考えています。

しかし,いくら信頼性の高い良い部品でも入手できなければ意味がありません。 安定して入手し続けるためには複数の経路から適切な価格で入手できる必要があります。

また,仕様が不明確な部品も使いづらいです。 コンデンサであれば許容リップル電流が不明だと電源には使えません。 定格を超えて使えばどんな部品でもいつか壊れます。ですから,安全に使うのは設計者の責務です。 仕様書がしっかりしていてどんな条件で使えばよいのか,どんな特性なのかができるだけ細かく記載されている部品ほど信頼できます。 それは製造メーカーに対する信頼でもあります。 健全な経営で末永く良い部品を製造してもらいたいですから,良い部品を製造するメーカを応援することも考えたいです。

オーディオをやっているとアメリカの部品が重宝がられる傾向を感じます。 アメリカのメーカーは軍事・航空宇宙の需要が安定して存在しますので高スペックな部品を製造し続けることができます。 それが品質を維持出来ている理由のひとつでしょう。 しかし,宇宙開発も民間主導の時代であることを考えると今後の展望は明るくありません。

国産でもよい部品メーカは沢山あります。 個人的に樹脂モノは国産の方が良いと感じています。 民生用ではなく産業用の部品の方が手ごろな値段で耐久性も高く使い勝手が良いと思います。

3-2:入手方法

私が自作を始めた90年代と比較して現代の部品事情は大きく異なります。 インターネットを駆使すると国内・海外を問わず,古今東西,和洋中問わず様々な部品が手に入ります。 通販の難しさは手に取って質感を確かめられないことでしょうか。授業料は高くつきます。 しかも部品を選ぶのに時間がかかります。選ぶ際に睡眠不足になるのも悩みどころです。

3-2-1:秋葉事情

パーツ屋巡りは「巡礼」と言われていましたが,最近は時間が限られているので手短に済ませます。しかし,疲れます。 高校生の頃とは違い体力が低下してるせいもあるのかもしれません。。 しかし,実際に部品を手にして気付く点は多いです。 店員さんとの情報交換も非常に有益です。 目指す部品にはなかなか出会えなくても,代わりにもっと良い部品に出会うこともあります。 とはいえ,年間数回ですかね。秋葉原に出向くのは。

3-2-2:通販事情

大手は海外系が多いです。RSはイギリス系,digikeyとmouserはアメリカです。 RSは非常に歴史の長い小売通販です。digikeyは圧倒的な半導体在庫が売りでしたが今では他社が追従しています。 いずれもカード決済で個人にも売ってくれます。 国内系はChip1がメジャーですが,個人取引はしたことがありません。 国内は他にも零細な通販業者が結構多いようですが小売価格が高いのであまり使っていません。 ビンテージ系の部品に強いセレクトショップ的な位置づけの通販業者もあります。

大手は在庫管理が良く,翌日届いたりするのが魅力です。 中小だと支払いが銀行振り込みだったりして,ロスが出ます。 しかも在庫を持っておらず,バックオーダーとなることもあるので期待しすぎないことです。 まあ,ゆっくり作っている分には問題ないですが。。。

オークションでもそれなりに調達できますが,安定供給には程遠いです。

3-3:電子部品

3-3-1:抵抗

入力部,帰還部は音質への寄与が大きいと言われますので,抵抗はタクマンのREYを使っています。 それ以外はススムのチップ抵抗を使っています。大電流が流れる部分は福島双葉のMPCやKOAの酸金を使っています。

トランジスタアンプは真空管アンプに比べて抵抗の数が段違いに多いです。 その分,抵抗の音質への影響は薄まっていると感じます。 真空管アンプはプレート抵抗に何を使うかが非常に重要です。 一方,トランジスタアンプは入力周りと帰還回路を気を付ければよいと考えています。

3-3-2:コンデンサ

DCアンプはDC直結が基本ですのでコンデンサーはほとんど使いません。 トランジスタアンプではコンデンサーの質を問う前に減らすことが先決です。

小容量のCはチップ・セラミック・コンデンサーを使っています。 出力段のスナバーは信頼性の高い岡谷のXクラスを使っています。 電解コンデンサーは低インピーダンス品を使っています。最近のモノは小型で驚きます。

3-3-3:整流用ダイオード

整流ダイオードは最近流行りのSBDではなく,接合容量の小さいFRDを採用しています。 「FFPF10UP60S」は600V10Aの定格で,リカバリータイムの代表値は40nsecです。

トランジスタアンプでは整流ダイオードが働くのは10msecに一回(50Hzの場合)です。 接合容量が大きいということは高周波的には常に電源トランスとつながっているということを意味します。 電源トランスはノイズ源と思っていますので,できるだけつながりたくないです。その思いからSBDをやめました。

3-3-4:トランス

トランスは小型で容量の大きいトロイダル型を使いました。 安価に入手できるものから選びました。

使いこなしの工夫として,各巻き線間の容量を測定し,1次側と2次側の静電容量が最小になるように配線しています。

3-4:機構部品

3-4-1:コネクタ

出力端子は端子台を使います。 回路側もM3のビスでネジ止めできることがポイントです。 サトーパーツの「ML-60-S1AXF-4P」を使いました。

入力端子は今まで使った中ではもっとも高級感のある老舗カナレの端子「RJ-RU」を使います。

ACインレットは定番の「NC-173」です。メーカーつぶれたらしい。おしいなぁ。 大手のOEMもやってたらしくインレットはここのがもっとも良かったです。

3-4-2:配線材

配線材はいつも通りMOGAMIの2514/2516,BELDEN 8503を基本として使っています。

2514/2515は信号線に使い,BELDEN 8503は作業性がよいので他の一般配線に使っています。

今回は新たに日立のMLFCとBELDEN 1304Aを使ってみました。 MLFCは耐熱性が良く600Vと耐圧も高い産業用の電線です。電源の配線に2sqのMLFCを使っています。

MLFCの被覆は非常にしっかりしており,はんだ付けでもびくともしません。 同芯撚りで撚り合わせも非常に固くてしっかりしています。 カタログの表紙には新幹線の写真が入っていますが,鉄道でも使われているようです。 被覆は塩ビ(PVC)ではないので低容量で周波数特性もよいと期待できます。 MLFCの致命的な欠点は新品が臭うこと。新品のスニーカーのような臭いが抜けるまでに3か月くらいかかります。 そういえば新造車両はこんな匂いがしたような・・・

BELDENの1304AはLANケーブルですので4対のツイストペアから成っており,被覆を剥がして内部配線を取り出して入力部に使いました。 ボンデッドペア(Bonded Pair)と言われ,2本のツイストペア線の被覆同士が融着されています。 本来の目的はインピーダンスを安定化することですが,ツイストがバラけることがないので飛び込みノイズや振動によるノイズの低減が期待できます。 実際に使ってみると被覆が架橋されているらしく日本製のLANケーブルよりもはんだ付けに強い印象です。さすがはBELDENです。 LANケーブルの特徴はCAT5ではメッキ無しの裸銅7本撚り線となっていて,CAT6以上では裸銅単線となります。 高速なデータ伝送に使われますので特性インピーダンスは100Ωに規定されており,高周波ロスなども保証されます。 固く縒り合されたポリエチレン被覆の裸銅7芯撚りのツイストペアという他では得難いわたくし好みのスペックを持っています。

3-4-3:スイッチ

電源スイッチは フロントパネルは電源スイッチだけにするので,でかくて存在感のあるものを選びました。 そして自照式で緑に光るものを選びました。

電気的視点ではDPST(2極単投)を選びます。 電源を切った時にAC電源から完全に遮断されるので安全性が高まります。

3-4-4:ヒューズホルダ

最近のヒューズホルダーは感電防止機構がしっかりしていますので,何を選んでもそれほど変わりはありません。 フォームファクタから考えてミゼット(φ5.2x20)を選び,ファストンで接続できるホルダーを探しました。 手で交換できる大きめでしっかりしたサトーパーツ製の「F-400-01B2」です。

日本製の樹脂部品は品質が高いのでよく使います。


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