オーディオアンプの自作


5:測定・改善

測定の前に動作確認を行います。 動作確認はブロックごとに行います。

電源とアンプを接続して電源を投入するわけですが, 初めて電源を投入する際はまず電圧増幅段のみで確認を行います。 電力増幅段は大電流を扱いますのでミスがあると一瞬にして素子が死にます。

電源投入前にテスターのテストリードをミノムシクリップなどで固定します。赤を電源,黒をグランドに接続します。 両手が開いている状態にすると余裕をもって作業できるので,ミスを減らすことができます。

電源投入後まず最初に電源電圧が設計通りか確認します。 どこかに大電流が流れていると正しい電圧になりません。

まず電圧増幅段の電源リップルフィルターを事前に動作確認しておきます。 無負荷でもそれなりの電圧が出ているはずです。±20Vで安定していればOKです。

OKならば定電流源,初段のエミッタ電圧,カレントミラーのエミッタ電圧を測定して電流値が正しいかどうか確認します。

続いて,電圧増幅段の出力,MOSFETのゲート電圧を確認します。 アイドリング電流調整ボリュームを回してゲート・バイアス電圧が変化することを確認します。 電圧増幅段単体では出力から入力へ帰還がかからないので大きなオフセットが出ています。 その状態でざっくりとオフセット調整を行っておきます。 そしてアイドリング電流調整ボリュームを最小限に絞って電源を切ります。

いよいよ電力増幅段に電源を接続して電源を投入します。 やはり電源投入前にテスターのテストリードを固定します。

臭いや音に気をつけながら電源を入れます。トランスがうなったり,焦げるにおいがしたら素早く電源を切ります。 何も起きないようならば,電源電圧を確認し,正常なら各部の電圧確認を行い,設計通りであることを確認します。

異常がなければ調整です。 まずは出力オフセット電圧とMOSFETのゲート電圧を確認します。 問題ないようならばアイドリング電流を増やしていきます。

調整時にもテスターのリードをクリップで固定した方が良いです。

ドレインに挿入した0.1Ωの抵抗の両端の電圧を見ながらボリュームを回して10mV(100mA)程度に設定します。

オフセット調整と入力バイアス電流調整を行い,もう一度アイドリング電流を調整します。 調整時に電圧ふらついたり,半固定ボリュームの回転に対して急激,もしくは不規則な電圧変化が見られる場合は発振を疑います。

ともかく,なんとなく調整が出来たら,オシロスコープを出力に接続して発振していないことを確認します。 この際,オシロスコープの帯域制限は解除してください。100MHzなどの高周波で発振している場合,帯域制限がかかっていると発見できません。

ここまで来るのにきっと一苦労あると思います。 これでアンプはやっとスタートラインに立ちました。

5-1:最大出力

ダミーロードを接続して12.6V0-pの正弦波出力を出せるか確認しました。 両チャンネル同時動作はまだ確認していません。

三角波での最大出力時の波形を示しておきます。 0-Peakで13.4Vですので正弦波に換算すると11.2[W]出せることになります。


片チャンネル最大出力(8ohm)

1Ω負荷時の電流リミットの動作確認も行いました。 確認は三角波で行います。熱定格をオーバーする可能性があるので入力は断続的なバースト信号とします。手動ですが。

徐々に電圧を上げて行き,7A程度で三角の山がつぶれてきましたので,電流リミットが正常動作していることが分かりました。


電流リミット動作(1ohm)

5-2:波形応答

5-2-1:矩形波応答


矩形波応答(100kHz, 20Vp-p, 8ohm)

矩形波応答(100kHz, 20Vp-p, 8ohm//0.1uF)

アンプの安定性は矩形波応答を見ればわかります。10kHzを入力すると真四角な矩形波が見られました。 これでは何を見ているのかわからないので100kHzの矩形波を入力して立ち上がりと立下りを確認します。

負荷抵抗は8Ωを基本として負荷容量を1000pF〜0.1uFの間で切り替えてテストします。 10nF〜47nF付近が不安定でリンギング大きく出ます。 負荷容量を変化させるとリンギング量が変わりますが,Tr/Tfはあまり変化がなく,非常に安定しています。

Tr/Tfは520nsecです。振幅を変えても波形変化はほとんどありません。小振幅から大振幅まで安定しています。 スルーレートで帯域制限されている感じではありません。

立ち上がり立下りは20Vp-pに対して10%-90%で520nsecです。容量負荷では750nsec程度です。

立ち上がり100nsec程度,スルーレートで200V/usecが出れば大満足でしたが,FETの容量が目論見よりも大きくなっていますので遅くなりました。 しかし,立上りと立下りの速さが奇跡的に一致しています。FETのマッチングがよいことがわかります。

最大出力時のSR(スルーレート)は50V/usecと計算されます。パワーアンプとしてはかなり高速の類に入ります。 電圧帰還のパワーアンプではここまで速いと安定性を保つのに非常に苦労します。容量負荷をぶら下げても安定でありつつ,この速度は驚きです。

立ち上がり,立下りは臨界減衰の様相を呈しているので帯域制限はCRによる時定数で発生しているようです。 ドライバ段の電流を増やせば更なる高速化が期待できます。


立ち上がり応答(Tr=520nsec, 20Vp-p, 8ohm)

立ち下がり応答(Tf=520nsec, 20Vp-p, 8ohm)

立ち上がり応答(Tr=760nsec, 20Vp-p, 8ohm//0.1uF)

立ち下がり応答(Tf=740nsec, 20Vp-p, 8ohm//0.1uF)

5-2-2:寄生発振の確認

波形無し

無信号時に安定しているアンプでも特定のDC電圧を出力した場合に突発的に不安定になることがあります。 このような現象を寄生発振と言い特に電圧帰還アンプでは起きやすい傾向があります。

特定の条件下でしか発生しないため,見過ごされがちです。 音響用に重宝される有名なオペアンプをヘッドフォンアンプに使ったら発生したことがあります。

確認方法は以下です。 入力する矩形波の周波数は100kHzのままとして,出力振幅を1V程度に小さくします。 そして,入力電圧にDCバイアスをかけます。DCアンプの場合はこれでOKです。 DCが増幅できないアンプの場合は低周波の三角波で変調して確認するしかないでしょう。

DCバイアスを出力の波形が飽和するまで変化させつつ,負荷容量を切り替えて挙動を確認していきます。 DC出力は出力段の損失が大きくなるので過熱には注意します。

このアンプはどんな条件でも寄生発振は全く見られませんでした。矩形波の波形の変化も僅少です。非常に安定しています。

この特性ならPSRR測定用のバイポーラ電源として使えます。

5-2-3:飽和時の挙動確認


飽和復帰(8ohm)

過大入力で出力段が飽和した時の挙動も重要な要素ですので確認しておきます。

入力波形を三角波として入力電圧を大きくしていき,出力を飽和させます。 出力を飽和させると破滅的な結果になるアンプもあります。

回路によってはDCが出る,気絶してなかなか戻ってこない,飽和復帰時に発振するなどの挙動を示します。 その程度ならまだしも,ラッチアップを起こせばアンプとスピーカーが同時に破壊します。 こういった非定常な動作は半導体アンプ設計で非常に苦労する部分です。

この回路はかなり深くクリップさせても飽和復帰は非常に速やかで破たんは全くみられません。非常に安定しています。 キレイに上下対称にクリップしています。 この特性ならギターアンプとしてギンギンに歪ませても大丈夫そうです。冗談ですが半分本気かも・・・

5-3:周波数特性

波形無し

単純に広帯域なアンプならばもちろんそれに越したことはありません。 しかし,それ以上に大切なことは,高周波を入力しても安定であるという点です。 安定な回路は聞き疲れのしない安らかな高音域を再生できます。

高周波に対する安定性はRFI耐性と言われています。 主に初段素子の整流効果によって,入力された高周波がオフセット電圧に化けてしまい,変調ノイズを発します。 特に小信号を扱うオペアンプで問題視され,初段に接合容量の大きいFETを使用した低ノイズアンプはRFI耐性が低いです。

このアンプはバイポーラトランジスタ入力の電流帰還アンプですから,抵抗負荷の小振幅ならば1MHzの矩形波が余裕で通ります。 10MHzでやっと矩形波が正弦波になります。小信号帯域幅(抵抗負荷)は10MHzあります。

周波数を10MHz以上に上げると振幅はスムーズに減衰していきオフセット電圧が出るようなことはありません。 非常に広帯域でありながら安定しています。最終的には入力段に320kHzのLPFを挿入する予定ですが必要ないようです。

出力電圧が大きく,容量性負荷まで考えた場合,フルパワー帯域幅(FPBW)は1MHz程度になります。 ただし,回路損失が大きくなるので短時間に限ります。

5-4:ショックノイズ

波形無し

電源投入時にショックノイズが出ます。振幅は1V程度で幅10msec程度の矩形波が出ます。 実際に耳で聞いてみると「ボ」といった感じです。電力的にも1Wに見たいない電力ですので今のところスピーカーに悪影響はないと考えています。 最終的にはスピーカーとアンプを切り離す保護回路を入れいたほうが安心して使えると思います。 電源投入時にはスピーカを切り離しておき,安定してから接続する回路を導入したいです。

5-5:パワーアンプでRMAA

DTM向けのPC用AudioIFの評価によくつかわれるRMAA(Right Mark Audio Analyzer)を使ってパワーアンプの性能を測定してみました。 ヘッドフォンアンプの評価をしている人はいたように思いますが,パワーアンプの評価にはあまり使わないと思います。 まあ,手軽で色々と測定してくれるので便利なのです。

AudioIFはM-AudioのDelta Audiophile 2496です。

まずはリファレンスとしてループバックさせます。このサウンドカードは2003年頃の製品ですが,文句なしの性能です。
RMAAの結果レポート(サウンドカードのみでループバック:リファレンス)
20kHz付近の周波数特性がやや下がるのが特徴です。この1/2fs付近は信号処理の仕方によって微妙にうねりが出たりすることがあります。 パワーアンプの測定なので32bit 44.1kHzで行っています。


接続は上図です。

RMAAの結果レポート

・サマリーはIMD at 10kHzが「Good」,他は「Very good」以上
・ノイズレベルでは右chの50Hzピークが消滅,左chは微減・・・トランスカバーの効果ありです。
・クロストークは70dB以上と思ったより悪い,高域に向かって上昇するのでPSRR不足か

パワーアンプを通しているにも関わらず,安モノのUSB AudioIFよりも良い性能が出ています。 もちろんそこらのヘッドフォンアンプには全然負けません。これだけ「Excellent」を並べるのは結構大変なんですよ。

AudioIFの最大出力電圧が+2dBV(1.73V0-p)で,ゲインが4倍,負荷は4Ωです。 したがって,測定時の出力電圧が5Vrms程度,電力は6.3Wになります。

この測定ではトロイダルトランスにカバーを付けた状態です。 漏洩磁束を減らすためにショートリングの機能を期待しました。 100円ショップで購入したステンレスのカップに銅箔を巻いています。


5-5-1:パワーアンプでRMAA再々挑戦(ハム退治)

RMAAの結果レポート(初期状態)
改善前の状態。50Hzを基本とするハムが目立つが・・・測定用のラインケーブルの引き回しで変化することを発見・・・

RMAAの結果レポート(ハム改善,クロストーク悪化)

厚さ0.5mmの銅板でケースを作りトランスを収納しました。ショートリングの役割を期待しています。
ハムは減ったけど測定系の配置や引き回しでも結果が変化することがわかりました。

前回の測定からクロストークが悪化しています・・・
原因はATT BOXのGND配線でした。入力部のLRのGNDを接続した結果共通インピーダンスが発生ていました。
ATT BOXの蓋を開けた状態で測定したら数kHzにノイズが見えます。このレベルの測定は結構シビアです。。

RMAAの結果レポート(クロストーク改善,ノイズ飛込み)
これが最終データのつもりだったけどまた再測定かな・・・

Trans Case

5-5-2:パワーアンプでRMAA再々挑戦(クロストーク改善対策後)

電源配線図をよーく見ているとクロストークの悪化要因を発見しました。

共通インピーダンスはゼロにしなければなりませんので,バスバーを作って抵抗値を下げています。 しかし,バスバーとはいえ抵抗値はゼロではない。甘く見てみていました。 バスバーから電源基板への配線がピッグテールとなっています。ピッグテール自体は抵抗ゼロでなくてもよいと考えています。 しかし,ピッグテールの取り出し位置がまずく,バスバーを流れる電流によって仮に100uVでも電圧が発生すればその電圧がそのままクロストークなってしまうのでした。

スピーカー接続端子から直接電源基板に配線を飛ばすように変更しました。

RMAA測定の結果レポート(クロストーク改善対策後)170915

久しぶりにアンプを引っ張り出しました。改造作業は30分ほどで終わり,測定してみました。 Rチャンネルの歪みが増加しています。バイアス電流が少なめになっているのかもしれません。 クロストークは100Hzでは3dBほど向上しましたが,1kHzでは少し悪くなりました。全体的には低下して素直になったのでまあ良いかと。 もっとよくなると期待していたのですが・・・

市販のパワーアンプはクロストークの数値が記載されていません。あまり重視されないみたいですね・・・

5-6:歪み率の測定

「Wave Gen」と「Wave Spectra」を使って歪み率を測定してみました。 測定はレベルを変えて直読するだけなので簡単ですが,設定によって値が変化するのである程度試行錯誤が必要でした。

最大出力が10Wに届いていないのはゲイン不足です。AudioIFの出力が最大+2dBVなので電圧では1.26Vです。 アンプのゲインは4倍なので電圧で5V,電力で3.125Wまでしか測定できませんでした。 最近のオーディオ製品は+6dBVが多く,それに合わせてゲイン設計を行ったためです。


Fig:1

Fig:2

Fig:1に左チャンネルのTHD+Nグラフを示しました。Fig:2は同様に右チャンネルの特性です。 横軸は出力電力[W]を示し,縦軸はTHD+N[%]です。 1kHz測定時はサンプリング周波数を44.1kHzとしています。 10kHz測定時はサンプリング周波数を96kHzとしています。 赤は1kHzの歪み率を示し,1W付近を底にして低パワーでは単調増加を示し,高パワーで徐々に上がっていきます。 青は10kHzの歪み率を示し,0.1W付近が底になっています。 サンプリング周波数を高くするとノイズレベルが上がる傾向が見られ,1kHzの測定よりも10kHzの測定時のノイズフロアが上昇しています。 これはAudioIFに搭載されたADCのICとしての性能が見えているようです。 なお,アナログな測定装置では原理的にTHD+Nしか測定できないので多くのアンプの測定結果はここに示したように低パワーで単調増加の特性となります。

この結果ではハイエンドのパワーアンプと比べて劇的に歪率が良いとは言えません。 広帯域に努めましたが10kHzの歪み率が十分低いとは言えません。ここら辺が残念なところです。 しかし,低NFBの電流帰還アンプにしては良い性能が出ていると思います。 たとえばこのアンプに電圧増幅段を増設して40dBのNFBをかければ歪みもノイズも1/100になり,このグラフから見えない領域に達します。 そして,このアンプのように高速で高安定なパワーバッファならば簡単に実現可能です・・・あえてしないのですが。


Fig:3

Fig:4

ノイズ分を差し引いたTHD特性を見てみます。 ノイズがなくなるので低パワー時の数字が劇的によくなります。 低パワー領域では0.01%を大きく下回ることがわかります。 0.01%を切ることを目標にしていたのでまずまずの結果といえます。 10kHzの測定では48kHzまで録れたとしても4次高調波までしか取れないので測定としては不十分でしょう。 欲を言うなら5次高調波はぜひとも測定したいです。とすると,8kHz付近で測定を行うとよいかもしれません。


Fig:7:Lch

Fig:8:Rch

Fig:5:Lch

Fig:6:Rch

1kHz測定時のスペクトルを示しました。
出力電力は前回と同様に3W程度です。
Lch,Rch共に1kHzを基本波とするスペクトルと50Hzを基本波とするスペクトルが立っています。
50Hzは電源からの誘導で磁気結合と思われます。
1kHzの高調波はRchの方がやや大きように思われます。
歪率もLchが0.007%に対して,Rchが0.01%とやや悪化しています。

歪み波形を抽出してみました。
歪率計をもっている方はよくこんな波形を掲載しています。
パソコンだけでもできるモノか,挑戦してみました。

歪み波形は10000倍しています。
p-pで見ると0.02%〜0.04%の歪率になります。
やはりRchの方が悪いです。
この絵の注意点ですが,位相は手動で合わせています。

手順は以下です。フリーソフトとエクセルを使いました。
私的メモなので不親切ですが。。

・WGでサイン波を発生させる
その際,周波数の設定に注意が必要。
FFTに最適化しておく。
サンプル数は2048として最適化すると後処理が楽。
1kHz付近なら以下となる。

1012.060546875Hz = 44100/2048*47

・アンプを通し,スピーカー出力をATTしてWSで取り込む
サンプルBit数は24bitか32Bitフロートとしておく。
10秒で充分。

・SoundEngineでファイルを読み込み処理を行う
ノッチフィルターで1kHzをフィルタリングする。 周波数は上記を設定,処理する。2次(2kHz)でも減衰が無いことはホワイトノイズで確認済み
フィルター処理後さらにゲインを24dB(16倍)としておくとCSVに出力するときの丸め誤差が減る。
フィルタとゲインの順序が違うとクリップしてひどいことになるので注意。

・SoundEngineでCSV出力する「0-1」を選ぶ

・エクセルで演算する 2048サンプルごとに繰り返し加算し,最後に加算回数分で平均する。
out(m) = input(2048*n+m)
m = 1 to 2048,n = 1 to 180くらい,
最初と最後は捨てる。
知恵をしぼりマクロを組んで行う。
歪波形は10000倍する。CSV出力時に16倍したので1/16する。

オシロスコープならば1kHzでトリガをかけつつ,画面上で積分されるのでなんとなく歪波形が観測できる。 WAVEファイルをエディタで見てもノイズに埋もれてしまい,歪波形が見えてこないので加算・平均化処理が必要になる。 その際,加算する周期はFFT用に最適化した周期(今回は2048)とする。

「SoundEngine」フリーソフトですが,WAVファイルの編集において一通りのことができることと, WAVEファイルをCSVに変換して出力できるのでDIYerにとっては便利です。

5-7:出力ノイズ

60dBアンプでノイズを増幅してオシロで確認する予定。

FFTの結果を見るとホワイトノイズよりもハムが気になる。 電源配線の引き回しがいい加減だからだろうか。 もしくはトロイダルトランスから盛大に磁束が漏れているのかもしれない。 磁気シールドは難しいのでショートリングで対策していくしかない。

5-8:ダンピングファクタ

ダンピングファクタはアンプの「力強さ」を示す一つの指標です。 大出力でも非力,小出力でも強力とそんなことが言えるのです。

まあ,スピーカーケーブルでほとんど食われてしまうのであまり意味のある数字ではないのですが・・・

低周波(DC)から高音域(10kHz以上)に渡ってダンピングファクタ安定していることが良いアンプの指標と考えています。

ダンピングファクタを測定するには「ON/OFF法」と「電流注入法」の二つの方法があります。 電流注入法の方が正確な測定ができますが,電流を注入するパワーアンプが必要になりますので,セットアップがやや大げさになります。

しかし何と言ってもダンピングファクタの周波数特性を取るという使命があります。 電流注入法で周波数スイープしてダンピングファクタを測定する方法を考えました。

広帯域のパワーアンプをもう一台用意して接続するのは難儀ですから悩ましいところです。 ところが,測定対象はステレオアンプですから,隣のチャンネルを利用しない手はありません。

隣接チャンネルを使う問題点はクロストークの影響で多少誤差が出るだろうというところです。 クロストークの影響が測定したい電圧の1/10以下ならばあまり気にすることもないでしょう。

事前にクロストークを確認すると-80dB程度でした。 出力インピーダンスは40mΩ程と見込んでいましたので,4Ω負荷に対して1/100(-20dB)程度の電圧が出るはずです。 -80dBと-20dBですから60dBもの差がありまったく問題になりません。

実際に下図のように接続して測定してみました。


測定は正弦波スイープを片チャンネル交互に出力して行います。
1:Lchに波形出力,Lchを測定(基準レベル測定:Vin)
2:Rchに波形出力,Rchを測定(基準レベル測定:Vin)
3:Rchに波形出力,Lchを測定(出力インピーダンス測定:Vout)
4:Lchに波形出力,Rchを測定(出力インピーダンス測定:Vout)

出力インピーダンス = Vout/(Vin-Vout)*RL・・・となります。測定時のRLは4Ωです。
ダンピングファクタ(DF)= 負荷抵抗 / 出力インピーダンス・・・なので,出力インピーダンスが0.008Ωなら8Ω負荷でDF=1000となります。

「Wave Gen」と「Wave Spectra」を使い,結果をエクセルで計算させています。


Fig:5

Fig:5にダンピングファクタの測定結果(対8Ω)を示しました。 4000というかなり高い値が出ています。本当かな?疑心暗鬼。 4000というとSR用の超強力アンプ(出力2000Wとかそういう世界)の数字です。 通常のオーディオ用アンプは百万円クラスでも1000あれば大きい方です。 クロストークの影響がわからないので,クロストークは逆相で加算(つまりDFが悪化する側)されると仮定して計算しています。 なお400Hz以上で低下が始まりますが,ここからゲインが低下し始めるということです。 このコーナー周波数の高さも電流帰還のポイントです。 目標のDF=200@10kHzはクリアしています。しかしなあ,ちょっと高すぎです。 フィードバックの帰還ポイントをスピーカー端子部分にしているので,配線抵抗によるDFの低下は圧縮されます。 それにしても電流帰還なのでそれほど裸ゲインが高くないはずですが,なぜこんなにDFが高いのでしょうか。

5-9:クロストーク

究極的にはモノラルアンプが理想的ですが,ステレオアンプなのでクロストーク特性は重要です。 真空管アンプでは低い周波数で劇的に悪化することがあります。 トランジスタアンプでは配線の引き回しで悪化することが考えられます。 高い周波数では部品配置が効いてきます。 クロストーク特性はステレオ再生でリアルな音場を表現するために非常に重要な指標と考えています。


Fig:6

Fig:6にチャンネル間のクロストークを示しました。 もっと低いことを期待していましたがやや残念です。 低域で80dB以上。高域でも60dB以上確保できているので問題はないでしょう。 負荷が4Ωなので8Ωとすればもう少し下がるかもしれませんね。 RMAAの結果(90dB以上)とかい離があるのでもう一度測定してみてもよいかもしれませんね・・・

5-10:パワーオンドリフト

電源投入時は各素子が冷えているので温まる過程でドリフトが発生します。 このようなドリフトはDual-FETを使ってもオペアンプを使っても大なり小なり発生してしまいます。 温度結合をできるだけ密にすることと,部品の熱容量に対する電力量と放熱効果のバランスを検討する必要があります。


Fig:7

Fig:7に電源投入後のオフセット電圧の推移を示します。 始めの10秒はグラフは取れていませんが増加傾向です。その後減少に転じ,15分程度で安定して-1mV程度に落ち着きます。 電源投入後,常に10mV以内に入ってます。パワーアンプとしては優秀な数字です。 アンプ基板を垂直に取り付けていますので,天板を外すと温度分布が変化し,オフセットも微妙に変化します。 熱結合をしっかりして,コンパクトに作ることがポイントです。


Fig:8

Fig:8に電源投入後のアイドリング電流の推移を示します。 150mAを目標にしていますが,冷えていると多め,温まると少な目に推移するため,温度上昇に対しては安定です。 ガラス扉で閉めきった棚の中に設置していますので,結構熱くなりますが,連続運転しても問題ないようです。


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