JBL D130 2-Way スピーカーシステムの自作


1:計画


1-1:スピーカーについて思うこと

JBL 4430&4431
JBL 4430 & 4431:http://audio-heritage.jp

一時期本気で購入しようとしていたのがJBLの4430だった。結局あきらめたけど。 15インチの2ウェイが理想だという気持ちがどこかにある。

さて,音を発する起源とはなんだろう。原始の時代までさかのぼるなら「雄叫び」や「唄」だろうか。 楽器の起源とはモノをたたいたり,振り回したりそんなところから来るのだろうか。

蓄音機を発明したのはかの有名なエジソンだ。 エジソンは空気中を伝わる音波の振動を機械的に記録した。それがオーディオ装置の起源だろうか。

音楽や音声自体になにか魔法の力があるとしたら,スピーカーは魔法の小道具ということになる。 事実,スピーカーで再生した音楽は人々を感動させることができる。

音楽の力については枚挙にいとまがない。 だからこそ,その出口を担うスピーカーに何ともいえない魅力を感じてきた。

残念ながらそれほどの財力と情熱があったわけでなく,様々なスピーカーを手に入れて試したわけではない。

しかし,,,親父のシステムがJBLだからJBLの音は知っている。
ライブハウスに出入りしたり,PAの真似事をやってきたからSRの大音量も体感している。
DIATONEの3WAY密閉型スピーカ(DS-77EX)を使っていたから,そのどうしようもなくもどかしい低音を知っている。
大学のころ音響系の研究室にあったソニー製のスタジオモニターの音をちょっとだけだが聞いたことある。
自分で録音してミキシングしていたからパッケージソースがどれだけ加工されているのか知っている。
JBLのSRシリーズの音圧,ターボTMS-4の音飛び,巨大なウーハーを生かす難しさを経験している。

ま,その程度なんだ。

D130から何を得るのか。何を手にするのか・・・何を失うのか。

1-2:スピーカーの能率と時代的な背景

ラッパ付のSPレコードはまさに機械的に音楽を再生していた。 ラッパを使うと大きな音が出せるが,ラッパ自体に増幅作用があるわけではない。 ラッパは音を拾う機械系と音を放射する空間のインピーダンスを一致させる整合器として機能する。 インピーダンスを合わせることでエネルギーロスを小さくすることができ,音が効率よく空間に放射される。

ロスが大きければ音が小さくなり,ロスが少なければ音が大きくなる。 そして低い音まで大きな音で聞きたければ大きなラッパが必要になる。

機械再生にはこういった物理的な制約があるが,電気再生が実現すると音量の問題は徐々に解決されていった。

スピーカーに求められる能率はその時代に実現可能だったアンプの出力に影響されている。 初期の真空管アンプはせいぜい10ワット程度しか出力できなかったため,大音量を出すためには能率の高いスピーカーが必要だった。 中音域(500Hz以上が目安)ではホーンロードが十分かかり能率を確保することは容易だったが,低音を出すのは難しかった。

ALTEC A7
ALTEC A7:http://audio-heritage.jp

映画館用のスピーカー・システムは低音を効率よく放射するために古今とわず大口径のウーハーを使っている。 その口径は46センチ(18インチ)や38センチ(インチ)であり,大型のエンクロージャーか,巨大な後面開放バッフルにマウントされ, 多少なりともホーンロードをかけることで100dB/Wを超える能率を稼いでいる。

ALTECのA7はシアターシステムとしては現代的な部類に入るかもしれないが15インチ(38センチ)だ。

JBL PARAGON
JBL PARAGON:http://audio-heritage.jp

もっとも美しい家庭用スピーカーと言われるパラゴンも15インチだ。 途中からウーハーがLE15に変更になり能率が低下したが,低いといってもスピーカー単体で94dB/Wあり,さらにフロント・ホーンを加えている。

時代が進むと共にアンプ出力は増大した。真空管アンプでも多極管を使用すれば容易に100Wを得られるようになった。 トランジスタを使った半導体アンプは大電流を扱えるため,数百ワットを超え,1000ワットを超えるアンプも実用化された。

最大出力というわかりやすい売り文句に乗じて,家庭用にも安価に大出力のアンプが供給されるようになると,スピーカーの能率が低くても大音量が出せるようになってきた。

小型化と低域再生の要求

同じ口径のウーハーでより低い音を再生するためにはエンクロージャーの容積を大きくするか振動板を重くすればよい。

しかし200リットル以上の大型エンクロージャーは映画館じゃあるまいしそんなに大きなものを家庭に持ち込めるわけない。

比較的小音量の家庭用スピーカーは重低音を再生すべく重い振動板を使うようになった。

さらに同じ容積の箱で比較した場合,スピーカー口径は小さい方がより低い周波数まで再生可能だ。

方向性として小口径のウーハーが普及したのはこうしたふたつの事情がある。 結果として小口径・低能率の時代がやってきたわけだ。

小口径の重いウーハーを使うことで共振周波数を低くして「小さいわりに低音が出せる」という技術革新は大口径・高効率スピーカーを駆逐した。

ONKYO GRAND SCEPTER GS-1
ONKYO GRAND SCEPTER GS-1:http://audio-heritage.jp

そんな時代の流れに逆らい,過渡応答の良さを追求したカタチがこのグランセプターだ。 ウーハーはフロント・ホーンによって中域の能率を高めている。 不足する低域はネットワークに組み込まれたイコライザーによってブーストされている。 逆に言うとホーン・ロードのかからない最低域はそのままで効率が高すぎる中域を絞っている。

低音を出すということ

しかし,スピーカーは「音楽」を再生する「楽器」でもあるということを忘れてはならない。 経済的かつドメスティックな事情だけがスピーカーの方向性を決めるものではない。

小口径で小型だけど重低音が出せますという方向性は妥協でしかない。「小口径の割には低音が出ます」という表現が正しい。

フォルテッシモでどれだけ大きな音を出せるかが音楽表現の肝だ。 アコースティック楽器は大きな音を出そうとするため効率を重視する。 ラッパをつけたり,響板で響かせたりして音を効率よく放射できるように工夫を重ねる。

一方,スピーカーは周波数特性を平らにして歪を減らすために能率を下げて行った。 このような鈍いスピーカーで音楽性豊かな表現が可能なのか疑問だ。

逆にスピーカーの能率を上げることで周波数特性には表れない立ち上がりのよい,粒立ちのよい音が,つまりリアルな音が期待できる。

ところが低音を出すためには物理的な大きさが必要だ。 大太鼓やウッドベースなどの低音楽器は必要な低音を出すためにあの大きさになった。 つまり,スピーカーにもある程度の大きさが必要だということになる。

こんなことから低音については大口径が圧倒的に有利だという考えを支持したい。 大口径スピーカーが不利なのは自宅における立場だけだ。

JBL EVEREST DD65000
JBL EVEREST DD65000:http://www.harman-japan.co.jp

大型スピーカーの終着駅は現在のところこれだろう。15インチ2発。いわゆるダブルウーハーだ。


追記:

1-3:家族と楽しむスピーカー

DIY Enclosure JBL D130

紙おむつと人形たちに囲まれて楽しげなD130。 こんな絵を歓迎するオーディオファイルはそれほどいないだろう。

2013年現在4歳♂と1歳♂がいる家庭としては先行きが不安だ。

家族のことを考えるとスピーカーの立ち位置は怪しくなる。
・怪我をさせないこと
・いたずらに耐えること
・童謡が美しく再生できること
・小さな音量で再生できること

怪我をさせないこと

まず倒れるような背の高いトールボーイ型スピーカーや,スピーカースタンドを使うことができない。
コンクリートブロックに載せたりするのもアブナイ。
スピーカーの上に登ってヒーローごっこをするぐらいは許容しないといけない。

いたずらに耐えること

パンチや蹴りに耐えなければならない。
グリルネットは非伸縮性の固い奴をピチピチに張ってやる。 それでも心配なら金網などでスピーカーガードを取り付ける。音に影響が出てしまうけど。
落書きされても塗りなおせばいいやと思えるほど気楽な塗装にしておく。
塗料は舐めても安全な塗料を使う。

童謡が美しく再生できること

歌のお姉さんの歌声が美しく再生できなければならない。
音声帯域でクロスオーバーする設計は不安がある。
子供用の音楽は案外生楽器を使ったものが多いので,生楽器をちゃんと再生できないといけない。

小さな音量で再生できること

昼間に「ぞうさん」などを大音量で再生したとしても,自分の好きな音楽は子供が寝静まってから聞くことになる。 ロックやジャズを小音量でも迫力をもって再生するには周波数レンジが広くなければならない。

小音量で低音を出すためには大口径が有利だと言われるが,大口径の方が音響インピーダンスが低く効率よく放射できるからだと理解している。 確かに,16センチのシステムより小音量でも深い低音がしっかりと出る。

高能率のホーンツィーターも小音量でもシャキッとした音を聞かせてくれる。

夜中にグラスを傾けながら音楽を聴く贅沢というものが戻ってくる・・・ 一人でもいいし。二人でもいい。

実際おいてみると,「大きくて圧迫感があるから早く売るなり譲るなりしろ」と言われているが,家族の絆につながるスピーカーに成長してほしい。


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