JBL D130 2-Way スピーカーシステムの自作


4:調整

4-1:補強

補強は各面に対して1本ずつ入れている。また,面同士を結合する補強も左右と前後に入れる予定。

各面に入れた補強は組立前に効果を確認した。

補強無しだと「ボーン」という共鳴が発生するが,補強後は「コーン」という音になる。 つまり,音が高くなる。音が高くなるということは強度が上がっている証拠だ。

周波数が上がれば共振の減衰が早まると共にダンピングの効果が発揮されやすくなるので共振は減っていく。

補強の位置は中心をずらしているので,叩く位置によって音の高さが変わる。これもポイント。 ただし,箱状に組み立ててしまうと板端が固定端となるため,板自身の共振ポイントも変化する。 したがって,補強の効果は薄まるように感じた。

面同士を結合する補強は箱状態になってから取り付けた。 「ゴン」という濁った共鳴音が「コン」という澄んだ共鳴音に変わる。 低い振動が効果的に抑制されているようだ。

特にバッフルと裏板を結合する補強材の効果は大きく,バッフルのもっとも振動するポイントの共鳴音が甲高くなる。

録音したのでFFTにかけてみようか・・・な・

4-2:バスレフポート

仮状態では表面のみ10Rの面取りをしてあった。つまり内側は直角のまま。

DIY Enclosure

この状態でスピーカーを取り付けてインピーダンスカーブを測定した。

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測定は220ohmの抵抗を介してアンプに接続し,スピーカ端子の電圧をDMMのACレンジで測定している。

結果はこの通りで計算通り48Hz付近にポート共鳴が来ている。

また,ポート共鳴周波数でインピーダンスが十分に下がっている。 このことからポートの共鳴周波数において減衰効果が少ないことがわかる。 円形の大口径ポートの効果がでているのだろう。 このことからバスレフはまともに動作していると言える。

ちなみにバスレフの動作抵抗が大きいとインピーダンスが下がらなくなる。 スリットバスレフや小口径のバスレフではそうなるだろう。 抵抗が大きいということは空気抵抗が大きいということなので,流速が早いと言える。 この場合はポートノイズの影響が気になるだろう。

ウーハーの出力音圧からも共鳴周波数を確認できた。10cmの距離で測定している。 インピーダンスカーブよりもQが高く鋭いノッチが確認できる。

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この状態で音楽を聞いてみると深い低音まで感じられるし,ボン付もない(ように思う)。

ポート共鳴は周波数はもう少し高くてもよいので,内側も面取りを行った。↓こんな感じ。 面取り後の共鳴周波数は後ほどのお楽しみ。

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部屋の特性,置き方でも変わるので現状のこの状態でセッティングして調整を行う。 おそらく,ポート設定を低い側に振ることはなく,高くしていきたい気持ちが強い。 高くするということはポート径を大きくするということなのでその都度木工が必要になってしまうのが悩み。

4-3:吸音

吸音なしの状態では中音域に響きが感じられる。

ユニットが無い状態でマイクを内部に入れインパルス応答(拳で叩く)のFFT解析してみると如実に定在波が現れた。

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366Hzを筆頭として左右に二山ある。この3つの周波数が計算上の定在波の1次成分とぴたりと一致する。 120Hzは常に存在したのでノイズのようだ。

側板同士の左右の定在波がもっと強い。面積が大きいからだろう。 天地方向にも発生しているが面積が小さいこととポート開口があることから弱いのだと思う。 一番弱いのが前後方向の定在波。これはユニットの開口があるためと思われる。

スピーカを取り付けて音圧特性を測ると440Hzに山がある。これは前後方向の周波数と一致する。 裏板はユニットと平行面なので定在波を放射しやすいのだろう。やはり裏板の吸音は必須だ。

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いずれにせよ2次以上の定在波は弱いことが分かった。せっかく比率を最適化したのにあまり意味なかった・・・

少しの吸音材を入れるだけで改善したので,FFTで定量的に見ながら吸音材の量を決めて行く。 平行面でも片側にすれば量を少なくできる。

1次の抑制だけ考えれば空間の中央部に吸音材を置くのが一番効果が高いだろう。

CSD解析(ウォーターフォール特性)を行える環境があると容易にデバッグできるだろう。導入を検討すべし。


4-3:続き:ARTAを使ったエンクロージャーの吸音テスト

ARTAはPCIのAudio I/Fを搭載したWin2kマシンでは動作せず。 仕方ないのでWinXPのラップトップで検証した。 そのため,ラップトップのマイク入力のF特の影響を受けて,低域がロールオフしている。また,ゲイン過剰でノイズが多く,低音圧レベルの分解能が低下していると思われる。

ARTAのキャリブレーションは行っていない。 絶対レベルは意味をなさないため無視。 低域のロールオフは心の目で補正する。

測定は2回に分けて行った。

まずエンクロージャー単体で吸音材の効果だけを確認するため,10cmのフルレンジスピーカの音を箱内部に放射しマイクで残響を測定した。

続いて,本番用のユニットを載せてトータルの特性を確認した。

ARTAの設定

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セッティング(周期ノイズ)

低域の分解能をよくするためにシーケンス長を最大にした
低域を主に取りたいのでピンクノイズを選択
2回平均にしてみたが効果は薄い

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セッティング(MLS)

低域の分解能をよくするためにシーケンス長を最大にした
2回平均にしてみたが効果は薄い

エンクロージャー単体でのテスト

バスレフポートに10cmフルレンジを取り付けてノイズを再生, ユニット取付穴にはスピーカーを取り付けずに穴の中心にマイクを設置して録音した。

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ユニットから発生した音がバスレフポートへどのように抜けるのかを逆関数的に模していると言える。

状態の呼称

状態の説明

Default w/o 吸音材

吸音材が全くない状態

+リアパネ吸音材

リアパネル全面に吸音材を貼り付け

+トップ吸音材

上記に加え+天板全面に吸音材を貼り付け

+サイド吸音材

上記に加え+左側1/3,右側2/3に吸音材を貼り付け

ボトム拡散

「+サイド吸音材」に加え+底板に拡散装置を取り付け

サイド拡散

「+サイド吸音材」に加え+左右サイドの空き部分に拡散装置を取り付け

CSD特性

CSDはインパルス応答のスタート地点から少しずつ時間をずらしながらFFTを行った波形と考える。 インパルス入力に対する残響の時間変化が見られる。

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Setting

低域の分解能を上げるためにFFT lengthを最大に設定
高域は2kHzまで
スケールが100msecになるように「block sift」と「num of blocks」を設定
スムージングは無し

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Default w/o 吸音材

300Hzと720Hzに強い残響が発生している
音速を346m/sとすると,300Hzは上下方向の1次,720は左右方向の2次に相当
120Hzはユニット開口のヘルツホルム共鳴と考えられる

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+リアパネ吸音材

リアパネルを吸音するだけ残響が劇的に減る

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+トップ吸音材

ほとんど変化がない
300Hzの減衰がちょっと早まる
700Hz〜900Hzの残響が少し減る

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+サイド吸音材

40msec付近のさざ波が抑えられる
120Hzの減衰が早まる

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ボトム拡散

300Hzの減衰が早く始まる

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サイド拡散

40msec付近のさざ波がちょっと増える


Burst Decay 特性

バーストサイン波に対する応答波形だと思う。 奥方向の軸はサイン波1波長の倍数を示していると思う。 理想的には入力波形と同じくサイン波1発で静定するはずだが,アコースティック的な応答(共振など)により尾を引いてしまう。

CSDを波長(周波数)で正規化した指標ともいえる。

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Setting

高域は2kHzまで

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Default w/o 吸音材

300Hzの共鳴が非常に強い
その他1次成分である366Hzや426Hzは目立たない

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リアパネ吸音材

リアパネルを吸音するだけ残響が劇的に減る
CSDと同様

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+天板吸音材

低域で効果がでている

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+サイド吸音材

さらに切れがよくなり60periodsの1.3kHz付近の山が消える

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ボトム拡散

700Hz付近にさざ波が立つ

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サイド拡散

やはりさざ波が多少増える気がする


Energy Decay 特性

残響エネルギーの減衰を示してると思わる。早ければ早い方が残響が少なく切れが良い。

壁の反射がない無響室ならば垂直に落ちるのだろう。 ちなみにオーディオ用のリスニングルームでは残響が少なすぎるのはよくないと言われている。 スピーカーの残響は無くしたいのに,部屋の残響は残したいという矛盾を感じる。

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Default w/o 吸音材

切れが悪い状態

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リアパネ吸音材

132msecで-50dBを切る
-50dB以下にならないのは測定系のノイズの影響

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+天板吸音材

ちょっとだけ改善

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+サイド吸音材

あまり変わらないか・・・

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ボトム拡散

10msec付近に凸ができる

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サイド拡散

10msec付近に凸ができる


エンクロージャー単体では以下の写真のような状況になった。

吸音材は手芸用の天然ウール100%の「ニードル わたわた(H440-003-310)」を使っている。 後から気付いたのだが羊の臭いがする。

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紙皿で作った拡散装置を取り付けた状態。 100円ショップで購入した大きさの異なる紙皿2種類を2枚重ねにしている。 できるだけ深い容器を選ぶと拡散効果が大きいはず。

拡散装置の効果は認められたが,吸音が十分なら拡散する必要はない。 吸音できないような状況で残響を減らしたい場合は効果的に使えるだろう。 吸音ができない状態というのは,エンクロージャーの容積が少なくて吸音材を入れるとバスレフ効果が低下してしまうといった状況が考えられる。

ということで拡散装置は不要。


ユニット(JBL D130)込みの特性

実際に使用するユニットをバッフルに載せて約50センチの距離にマイクを設置して測定。 バッフルもちゃんと固定していないし,ネジ穴があちこちに空いている状態。

吸音タイプ1

エンクロージャー単体で決めた状態
吸音材はリアパネル+トップ+サイド,拡散装置は無し

吸音タイプ2

天板の吸音材を2/3に減らし,リアパネルの中央部を2重にした
両サイドの吸音材はユニット周辺に集中
天板とリアパネルの角を吸音材で埋める

Frequency Response 特性

低域がだら下がりなのは測定系の影響と思われる

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Default w/o 吸音材

吸音なしの状態では420Hz付近に大きな段差(10dB)ができている
事前の味見でも現れていて定在波による悪影響と考えている
単体では最も出ていた300Hz付近の共鳴は見えない

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吸音タイプ1

エンクロージャー単体テストで決めた吸音状態
420Hzのピークが減る

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吸音材なしと吸音タイプ1の違い

わかりにくいので重ねてプロット
グレーが吸音材なし
緑が吸音材1の状態
420Hzが5dB程度低下
700Hzから2kHzまでのピークが数dB低下
700Hzと800Hzのディップが改善

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吸音タイプ2

上下方向の影響(300Hz)が見られないので,天板の吸音を減らし,その分,1次反射の影響を減らすように調整

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吸音材なしと吸音タイプ2の違い

420Hzのピークがさらに下がる
350Hz付近の凹が改善
700Hz以上はほとんど変化なし

CSD特性

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Setting

高域は20kHzまで
num of blocksは減らして見やすくした
スムージングをかけている

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Default w/o 吸音材

エンクロージャー内部の影響が大きいのは300Hz〜2kHzの範囲
400Hz,500Hz,620Hz,820Hz,1kHzに山が見える

DIY Enclosure
吸音タイプ1

400Hz〜2kHzの間で残響が減っている
1kHzの残響が尾を引いている

DIY Enclosure
吸音タイプ2

さらに整理されてきれいになった


Burst Decay 特性

DIY Enclosure
Setting

20kHzまで

DIY Enclosure
Default w/o 吸音材

なんだかよくわからん

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吸音タイプ1

1kH〜2kHzの間が整理されている

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吸音タイプ2

36periods以降の凸が減っている


吸音材効果まとめ

吸音材は少しでも入れると劇的に効く。

さすがに皆無では定在波抑制ができない。 ノイズの入射方向の影響を受けやすいので,ユニットと平行に対向する面を重点的に吸音するのが最も効果的と感じた。 つまりやはり,リアパネルを重点的に吸音するのがよいというが間違いのない結論だ。

また,板の反射率は結構高いようなので,2次反射3次反射の影響も考えないといけない。 そう考えるとユニット取付穴から見える範囲は吸音材を貼り付ける必要があるということになる。 特に3つの面が交錯する角は反射効果が大きいと感じたので,少なくともユニットに最も近い部分,リアパネルと天板の交叉する角は吸音材で埋めてみた。

もっと吸音材をつめればもっと残響が減るだろう。しかし,すでに一定の効果は出ているし,クリティカルな部分は抑えている。 また,吸音材を詰め込むと中低域のレスポンス低下が懸念される。ということでここで一旦やめて部屋に設置の上,音出しをしてみることにする。


吸音材の追記

どうしてもボーカルのファンダメンタルな帯域にピークを感じるのでリアパネルから天板にかけてサーモウール60をドンと追加した。 この状態で半年我慢したが,それでもまだ男性ボーカルが膨らみがちなので,片側の壁にもう一枚サーモウール60をまたしてもドンと追加した。

サーモウールは羊毛と合成繊維を組み合わせたもので家屋の断熱材に使われるらしい。 厚みとボリュームがあり,小容量のシステムに使ったらすぐにお腹いっぱいだろう。

これで静かになった。吸音材を敵視する向きもあるが,副次的効果として雑音が減り,見通しが良くなりすっきりした。 最低域が減ってしまうかもと危惧していたが,そんなことはない。さすがに111リットルあると余裕だ。

人生の結論。吸音材は「必要悪」ではない。音が死ぬことはない。直方体の箱を使う限りは絶対に必要だ。


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