JBL D130 2-Way スピーカーシステムの自作
5:測定
耳で合わせるというのもよいけど。自分の耳は信用ならないので測定したい。
5-1:測定方法
必要なものはパソコン,アンプ,マイク,オーディオインターフェースだろう。
パソコン:なんでもいい(USBがついていれば・・・って普通ついてるでしょう)
アンプ:広帯域の方が色々考えずにすむのでトランジスタアンプが良いだろう
アンプの帯域が足りない場合はキャリブレーションを行うか,マイク出力とアンプ出力を同時に測定する必要がある。
マイク:測定用のマイクも安価に手に入る,コンデンサーマイクならある程度なんでもいい
ベリンガーやdaytonオーディオのマイクが安い。Audixのマイクもそこそこ安い。
手持ちのPCM-D50でも十分と思うけど,高音域をちゃんと測定したいなら測定用のマイクを使うべきだろう。
オーディオインターフェース:USB接続のモノが安く手に入る
USBオーディオインターフェースは2万出せば買える。
マイク入力があり,ファンタム電源が使えること。
音圧特性を測るにはマイクが必要。
アンプの周波数特性を補償するためにはアンプの電圧出力をパソコンにつなぐ必要がある。
インピーダンス特性を測るためには電流を検出する手段が必要になる。
手持ちのアンプは困ったことにBTLだ。
電流検出をどうやるか。 差動アンプを作るべきか・・・
ソフトとしては有名なフリーソフトのWGやWSがある。 ARTAもラップトップには導入してある。その他にもいろいろありそうだ。
5-2:インピーダンス
低音の音圧特性を正確に測定するには大規模な無響室が必要。一般家庭の部屋で測ると定在波の影響や設置位置の影響が出てしまう。 そこで活躍するのがインピーダンス特性。これを見ればバスレフがまともに働いているかが一目瞭然というわけだ。
JBLの指南書には100Ωの抵抗を挟んで電圧から求める方法が紹介されている。 抵抗値は高ければ定電流的な駆動になり,低ければ定電圧的な駆動になる。
駆動インピーダンスによって特性が変わるらしいので,できれば実使用に近い状態で測定するのがよいと思う。
今回は電流プローブをオシロに接続し,オシロスコープで電流を測定,マルチメーターのACモードで電圧を測定した。 周波数は発振器の周波数を手で調整している。低周波では分解能を細かく(1/8oct),高域では荒くした。
ちなみにマルチメーターは0.5Vrmsを示していたが,とても音が大きい。103dB/Wは伊達じゃない。 1Wの電力を入れるためには8ohmだと2.83Vrmsになるのだが,そんなにパワーを入れたら壊れるんじゃないだろうか。 少なくとも低音は入れられないのかもしれない。
総合インピーダンス特性
バスレフの反共振周波数(fd)は40Hz程度でインピーダンスは7ohm程度を示している。
前回の測定では反共振が50Hz程度だった。 違いはユニットをしっかりと固定したこと,バスレフ開口部のフレアを内側にもつけたこと,駆動インピーダンスが220ohmだったこと。 また,アンプのHPFをfcを1/10にしたことと。測定は電圧と電流を同時に測定したことから10Hz付近の測定精度が向上している。
反共振でインピーダンスが十分に下がっていることからバスレフがまともに動作していることが分かる。 吸音材が多すぎるということもないようだ。
反共振はもう少し高くてもよいかもしれないけどしばらく様子見。
5-3:音圧測定
PCM-D50を使って屋内で測定。設置場所の都合も有り,反射や定在波の影響が取りきれない。 マイクの特性は補正していない。
PCM-D50の周波数特性,引用:ソニー
ラップトップに入れたARTAで測定を行った。オーディオIFが無いのでパソコンのマイク入力とヘッドフォン出力を使っている。 特にマイク入力のノイズフロアが高く不満があるが測定できる程度のSNは確保できていると考えている。
なお,前半の測定は測定系の周波数特性を補正していない。 特にPCのマイク入力は低域が100Hz程度で落ちているのに気付き,後半の測定はF特を補正した。
ツイーターの位置調整
最初に行ったのがツイーターの位置調整。タイムアライメントなんて言ったりする。 ツイーターの位置を調整して位相差による周波数特性の凹みを補正する。
スピーカーは壁から50センチほど離し,壁の反射の影響を減らすため部屋に対して斜めに置いた。マイクはエンクロージャーから1mの位置に設置している。
まず,エンクロージャーの前縁から70mmの位置にツイーターを置いて測定を行った。 Step応答を見てみるとふた山になっている。 6.26msecずらすと丁度よさそうだ。音速を350m/sとして18mmに相当する。 とりあえず20mm後退させて前縁から90mmの位置で再測定を行った。結果を比較した。
Step応答,ツイーター位置の差(70mm,90mm)
いい具合にピークが重なった。フルレンジ+ツイーターの2wayらしく素直な応答だと思う。 また,ユニット同士の位相も正相だとわかった。
F特で見てみると70mm位置では5kHzがへこんで見えるが90mm位置ではよりフラットに見える。
周波数特性,ツイーター位置の差(70mm,90mm)
ツイーターのHPF調整
位置調整ができたので,ツイーターのクロスオーバーネットワークのカットオフやレベルを調整する。
非常にシンプルな12dB/octのネットワークだが,Lの値を大きくとり,肩をなだらかにしてカットオフ付近では6dB/octの特性としている。 コンデンサーのみの6dB/octネットワークではツイーターがダンピングされないという現象が発生する(NF-1をいじった経験より)。 コイルを入れることにより,ボイスコイルが発する逆起電力をショートする働きを期待する。ダイアフラムのfoが分かればそれに合わせたダンピング回路を入れてもよい。
また,アッテネーションは抵抗を挿入するだけの形式としている。 抵抗値は巻き線式のPOTにより0ohm〜10ohmまで連続可変できる。
Cap容量の違いによる周波数特性
容量を変えるだけでアッテネータ―のような働きになっていることがわかる。カットオフ周波数は1uFで16kHzくらいと思われる。 事前検討でインピーダンスは10ohm程度と出ていたので一致する。インピーダンスを10ohmとするとLが効き始めるのは1.6kHzということになる。
グレー:D130,緑:ツイーター(0.47uF,1uF,2uF)
D130とのつなぎを見るとこんな感じになる。2.2uFでフラットにつながりそうだ。
続いてアッテネータの動作を検証する。 実際にLFとHFをつないだ状態でアッテネータの効果を見てみるとこんな感じになる。
0.47uFではアッテネータ―があまり効かない。フラットとは言えないがHFを十分補えている。
1uFではつながりがよくなるがややハイ上がりになるので5ohm以上の抵抗が必要。
2uFでは5kHz以上を補っていてさらにつながりがよいが10ohm以上の抵抗が必要。
室内音響込みの特性確認
スピーカーを想定する置き場所に置く。部屋の隅っこに追いやられている。壁の影響が大きく出るだろう・・・
部屋の中で測定をすると壁の反射により中高域に暴れが生じ,定在波の影響により低域にピーク・ディップができる。
ここからはPCのヘッドフォン出力とマイク入力のF特を補正している。 ヘッドフォン出力をマイク入力に直接つなぐと以下のような特性になる。 1kHzで正規化(0dBとする)したキャリブレーションデータとしてARTAに読み込ませる。
キャリブレーションデータ
室内音響の影響を確かめるために,複数の場所で測定を行った。測定位置は下記の図の通り。 リビングは幅が3mm程度,天井高さは2.4m,奥行きは結構ある。。
測定ポイント
マイク高さはウーハーとツイーターの中央付近の70cmに設定した。
縦軸はキャリブレーションをしていないので相対比較となる。
凹:69Hz,122Hz,202Hz,346Hz〜405Hz,500Hz,644Hz
凸:103Hz,165Hz,738Hz
凹:69Hz,128Hz,311Hz,401Hz,604Hz,931Hz
凸:112Hz
凹:71Hz,118Hz,349Hz,598Hz
凸:60Hz,274Hz,436Hz,516Hz
凹:72Hz,113Hz,202Hz,247Hz,400Hz,533Hz
凸:58Hz,441Hz
凹:90Hz,134Hz,217Hz,328Hz,511Hz,921Hz
凸:58Hz,115Hz,431Hz
凸凹が多すぎでひどい特性。これでもまともに聞こえるのは人間の耳のおかげなんだろうか。
配置上の制約からスピーカーを内ぶりにせず,壁と平行においているため,高域が減衰している。 5kHzより上が盛り上がっているのは相対的にツイーターのサービスエリアが広いからだろう。
120Hz〜130Hzのディップ(凹)は横方向の定在波によるものだろう。60Hz〜70Hz付近のピーク(凸)も横方向の定在波だろう。
C2m点,L2m点でRの中音域のレベルが低いのはRのすぐそばにソファーがあるためと思われる。 R2m点ではソファー越しに測定しているため全体的にレベルが低い。
C1m点,C2m点などで見られる,350Hz付近の谷は結構影響が大きい。波長にして1mなので定在波だろうか。 測定点を1m刻みにしているのが良くないかもしれない。
400Hzの段差はこのシステムの特徴だと言える。奥行き方向の内部定在波の影響だとすれば吸音材を増さないといけない。 1mでの500Hz付近の盛り上がり大きいし,1kHzに凹があるので回折によって生じるバッフルステップ効果かもしれない。 C3m点で緩和されることからもそんな気がする。ネットワークで補正可能だがC3mでは影響が少ないので気にしなくてもよいかもしれない。
「C3m Mic CAL」はマイク特性を補正した結果。50Hzで10dB補正すると30Hzまでフラットに出ているっぽい。
Near Field 測定
Near Field測定と言っても,スピーカーは床に直接置いているし,壁からは1mくらいしか離れていない。 実設置状態でのNear Fieldというか・・・なんとも中途半端な測定となった。
Blue:D130, Pink:TW350-Ti, Yellow:Port (floor),Light blue:TOTAL
ユニットから10cmの距離で測定を行った。測定箇所はウーハーのセンター,ツイーターのセンター,バスレフポート(マイクはポート正面ではなく,スピーカー正面の床に置いた)の3カ所。 縦軸は校正していないので,100dBの線は目安。
TW350-Tiは9kHzの凸が特徴かもしれない(マイクの特性かもしれないけど)。シャキッとした音につながっているのかも。 4k〜5kHzをもう少し出してもよいかもしれない。
D130は5kHzの凹と6kHzの凸が特徴的。ここら辺をクロスオーバーで切るのかが悩ましい。センターキャップをダンピングしてもよいかもしれない。 低音は400Hzまでは素直。80Hz以下はポート出力が勝っている。低音は設置場所によって様子が変わると思う。 中音域の430Hz付近の盛り上がりが気になる。奥行き方向の定在波か?吸音材はかなり入れているのにしつこい。
ポート出力は高い周波数までレスポンスが観測されているが,測定ポイントがD130のすぐ近くなのでD130からの音も拾っている。 櫛状のうねりが見られるので遅延による干渉が起きているようだ。 スピーカーを横倒ししてポートの出口で測定すると,また違った様子になると思われる。
ここではマイクのF特も補正してみた。80Hz以下6dB/octで落としてみたが,SNが悪いこともあり過補正になったので80Hz以下の補正は無しとした。
PCM-D50の周波数特性,引用:ソニー
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