JBL D130 2-Way スピーカーシステムの自作


6:システム設計

6-1:2Way

D130だけだと高域が足りないのは残念ながら事実。 フルレンジと言ってもそこは15インチ。

15インチ・スピーカーをベースにシステムを組むことを考えると,2インチスロートのホーン・ドライバを考える。

さらに2インチ・ドライバーでは超高域が不足するのでスーパーツイーターを追加する。

というのが(ちょっと古い)一般的な考え方ではないだろうか。

JBLは現在でもこのようなシステムを作っている。

横道にそれるが,SRやPAの進化した形はラインアレイという手法だ。 線音源を作るために横長の形状をしており縦方向に2次元的な指向性を持つように設計されている。 12〜15インチの低音,8〜10インチの指向性制御したミッド,線音源化したホーンによるハイ。 これを縦に連ねて懸下する。さらに18〜21インチのサブウーハを必要なだけ設置する。

これで高音圧で明瞭な音と広いサービスエリアを両立できる。

家庭用のシステムを考えると,まずスピーカーとリスナーの距離が近い。 つまり,スコーカ―もしくはツイーターとウーハーの距離が離れると位相差の影響を知覚しやすくなる。

小口径ユニットを使ってツイーターとウーハーをできるだけ近づける理由はここにある。

大口径の場合は同軸ユニットが最良なのはこういった理由からもうなずける。

こういったことから考えると2インチ・ドライバーを使用した大型ホーンシステムはホーンによるミッドレンジがメインであり,ウーハーは補助的な役割でしかない。

2wayでクロスオーバー周波数を500Hz程度まで下げられるのであれば有利だが,そのためには大型のホーンが必要になる。 1kHz以上でクロスすると音楽でも音声でも重要な帯域が分割されてしまうので難しくなる。

D130のような大型フルレンジの場合は本人にできるだけ頑張ってもらい,足りない超高域をスーパーツイーターで補うようにした方がつながりが良いように思える。

ということで今回はスーパーツイーターとの2Wayとする。

あくまでもD130を主役と位置付けて活躍してもらう。


6-2:ツイーター

様々な形状・方式のツイーターが存在する。 技術的なバリエーションの多さはコーン型トランデューサー中心のウーハーとは比較にならない。

基本的な方式はコーン型,ドーム型,ホーン型,平面型,リボン型の5種類に大別できるだろう。

コーン型は単純に紙でできたコーンを用いた小型のスピーカーだ。 ツイーターならば直径10cm以下が多いだろう。 コーンの直径よりもボイスコイル径が小さいのが特徴だ。

ドーム型はボイスコイルと同じ直径のドームから音を放射する。 主にハードドームとソフトドームに大別される。 ハードドームはアルミなどの軽金属が主流でハイエンドではボロン,ベリリウム,カーボンなどで作られる。 ソフトドームは絹等の繊維や樹脂でできている。

大きいものだとNESのソフトドーム(TOA製)が直径100mmだそうだ。ATCも大きいが75mmだそうだ。

ホーン型は軽い振動板にホーンロードをかけた方式でホーンスピーカーを小型にしたもの。 ボイスコイル直径はダイアフラム径と同程度だ。 ダイアフラム開口部にイコライザーを配して指向性や周波数特性を制御するとともにホーンによって能率を高める。

ドーム型はホーン型のホーンを取り去ったモノと言ってもいいかもしれない。

平面型は樹脂膜に電極を形成したもの。コンデンサー型や平面磁気回路のツイーターがある。

リボン型は金属箔を磁場中に置いたもの。

その他には,セラミック(ピエゾ),イオン(プラズマ)のツイーターもある。

D130と組み合わせる条件は高能率であること。 ウーハーより能率の低いツイーターは使えない。

そうなると能率の低いドーム型や平面型は落選する。

リボンツイーターも低価格のモノも手に入るが,魅力的な製品にかける。 能率の面から考えても選択肢が少ない。そしてまともなリボン型は高価だ。

結果的にホーン型ツイーターの出番となる。

6-3:JBLのホーン・ツイーター

JBLの高能率なツイータ―について簡単に触れておく。

D130にふさわしいツイーターと言えばJBLの075がすぐに浮かぶ。 075は1956年に登場した。

ハイドロ・フォーミングされたアルミ製のリング・ラジエーターを採用しており,スムースな高域を再生する。

リング・ラジエーターとはドーナッツ状のダイアフラム(振動板)の呼称だ。 発音部を断面で見ると2次元的な構造になっている。 そのため反射や位相干渉が単純になり音波の制御がしやすい。 ダイアフラムからホーンスロートへ直接音波を導くことができるため抜けが良く端正な音になる。

一般的な磁気回路と組み合わせることを考えると,工作精度の影響が少ない実に合理的な構造だ。

2インチ以上のダイアフラムをもつドライバーはイコライザーと呼ばれる複雑な形状の部品を使っている。 イコライザーの設計と製造精度で10kHz以上のハイエンドのレスポンスが決まる。 高い周波数は波長が短いので,緻密な設計と高い工作精度が要求される。

イコライザーは基本的に鋳造で作られる。 何重もの円環状のスリットをもつ複雑な形状なのでいくつかの鋳造部品を組み合わせて作る。

同じ口径のイコライザーならばスリットが多くすればより高い周波数まで再生できる。 特殊な製法により一体鋳造の7重スリットを実現したドライバーもある。

現在ではNCで複雑かつ高精度な切削加工が可能になっているので 大口径でも20kHz以上までレスポンスを持つドライバーが比較的容易に実現できるのだろう。

ツイーターは波長の短い高域を扱うので,加工精度が悪いと特性の再現性が悪く,製品のバラつきが大きくなってしまう。 古い製品は加工精度に問題があったというハナシもあるのでツイーターについては現行製品が有利と考えている。

075に話を戻そう。

D130と組み合わせる場合は2.5kHzクロスで使えるとしている。

見た目も個性的でブレット(Bullet)ツイーターというイチジャンルの教祖にあたる。

ただ,今日的な視点ではハイエンドの伸び切っていない。 また,指向性も少々狭いように思える。

その他,JBLの代表的なツイーターを紹介すると以下の3種だろう。

JBL 2402
JBL 2402
JBL 2405
JBL 2405
JBL 2404
JBL 2404

「2402」は075の後継機でプロ用。 磁石がフェライトになっている。

その他にネコ目で有名な「2405」。これも見た目が個性的だ。 スタジオ・モニターにも多くつかわれた。 水平方向の指向性が広くなっている。

4430に使われたバイラジアルホーンを小型化した「2404」。 指向性が広く,歪みが少ない,低い周波数から使えるのが特徴だそうだ。 あまり採用例が無いがPA用のスピーカーに使われた例がある。

いずれもダイアフラムと磁気回路は共通で,ホーンのみが異なる。 この3種は主にSRやPAを意識していたものと思われる。

6-4:ツイーター選定条件

繰り返しになるがウーハーより能率が高いこと。D130は103dB/Wあるので,ツイーターの能率はこれ以上必要。

ホーン型での条件は耐入力ができるだけ低いこと。 ツイーターに100Wもの電力を入れることは絶対にない。

PAやSRではハウリングが起きるとそのようなこともあるかもしれない。 だが,オーディオ用ではありえない。

だから耐入力は10Wでもおつりがくる。

口径は無駄に大きい必要はなく超広域の素直さを考えると小口径の方がよい。

指向性は広い方がよい。楽器から発する音は無指向性で空間に放射されるからだ。 少なくとも90度は欲しい

選定のヒントとしては,PAやSR用のホーンツイーターがまず考えられる。

世界中を見回すと様々なホーンツイーターがある。 まずピエゾはダメ。あれは圧電ブザーのお化けみたいなもので音は期待できない。 PA用も各種あるがハイエンドが伸びていない場合が多い。 耐入力が異常に大きいものは磁性流体を使っているモノがあるので注意が必要。 最近はホーンがABSなどのプラスチック製が多いができればアルミダイキャストのホーンがいい気がする。

色々と選択肢があるが,ブラジルのSeleniumとPRV Audioに目を付けた。

その他の選択肢として日本独自のホーン型スーパーツイーター群がある。 ゴトーユニット,エール音響,YL音響などが作っている。 大型のアルニコマグネットと小型のダイアフラム,小型のホーンがついている。 重量は10kgとかそんなオーダーだ。 なんともバブリーなツイーターだ。

オークションでたまに出品されているが,値が張るし,壊れやすいし余り良いことはない。

ということで,,, SeleniumのST200,ST350,ST400もしくは, PRV AudioのTW450,TW350あたりがいいのではとおもっている。

Seleniumはダイアフラムがフェノリックなので躊躇。 PRV Audioはチタンだそうだ。TW450とTW350を比べると075的なのが450なのだが, より小口径で耐入力も小さい350でも十分で,超広域の伸びは350の方がよい。

オーディオ用を考えるのならば350がよさそうだ。安いし。

PRV audio TW350Ti
PRV Audio TW350Ti:http://prvaudio.com

例によって勝手に訳する。

PRV Audio TW350Ti スーパー・ツィーターは中音域から高音域まで反応がよく高能率です。 カプトン製の補強に載せられたチタン製ダイアフラムは軽くて薄く耐久性に優れます。

TW350Tiは高音圧を要求されるDJキャビネットに最適です。 シャープでスムースな音は大型コンプレッションドライバーが音を上げてしまうような会場で本領を発揮します。

鋳造アルミフレームなので良い音を保証すると共にどんな環境でも長持ちします。 交換用ダイアフラムがあります。

RMS Power 60 W
Program Power 120 W
Impedance 8 Ω 
Sensitivity 105 dB 2.83V@1m
Freq Response 3,000-25kHz @-10dB fall  
Rec Crossover  5,000 Hz 
Voice Coil Diam 1 in 
RE 6.2 Ω 
Le Inductance .085 mH 
Flux Density 1.7 T 
Weight 1.32 kg
      
Materials     
Voice Coil Copper   
VC Former Kapton   
VC Material Titanium   
Magnet Ferrite  

6-5:クロスオーバー・ネットワーク

D130の上を,切るか,切らぬか。

ツイーターの下をどの程度切るか,ATTはどの程度にするか,2次にするのか。

悩みはこんなところ。

まず,D130は頑張ってもらう。つまり上は切らない。出しっぱなし。うるさかったら切る。

TW350は結構能率が高いのでクロスを高くしつつ,ちょっとATTする。

HPFは肩をいからせた2次にしないがコイルは入れる。 カットオフ以下の低い部分をダンピングするのが目的。

DIY Enc HF cross over net work

Capは2uFの方がつながりが良さそう。そうするとATTは10ohm以上がいい。R1を20Ω〜50Ω位にしますか。

小改良

DIY Enc HF cross over net work

Capを2uFとし,手持ち部品でより減衰するようにした。

現状,5kHz付近がすっきりして聞きやすいが,プレゼンスに乏しくつまらない音なのでもう少しカットオフを落としてみようと思う。


6-6:調整!!

ツイーターのカットオフを落としていく。5uFまで容量を大きくしてみた。 メリハリが出てきて良いのだが,うるさい。遠くで聞くとちょうど良いが,近くで聞くととてもきつい。 特にスピーカーのすぐ前にソファーがあるので,ソファーに座るとツイーターからの音がもろに耳に刺さる。

ということで・・・無指向性にしてみた・・・写真は後程。

ツイーターを下向きに固定して,ステンレスの半球をツイーターの下に置く。 音場が広がり快適になった。

指向性が広くなった分,ツイーターのレベルを上げた。ほぼ最大の状態だ。 10kHz以上のレスポンスが悪くなった気がするのでATTの12Ωに1uFをパラった。

この状態で半年は聞いただろうか。やはりプレゼンスに欠ける。 きれいな音なのだが,ドンシャリ気味だ。


3Way化・・・

ここで登場したのが,前主役であるところのジャーマン・ビンテージ・スピーカーだ。 イソフォン(ISOPHON)のP1318という13センチ×18センチのオーバル(楕円)スピーカーを引っ張り出してきた。

非常に軽く薄いコーンを持ったスピーカーで弦楽器や打楽器,管楽器を気持ち悪いほどリアルに再生してくれる。 それを後面解放の平面バッフルに搭載している。低音はスカスカ,まったく出ない。

天板の上に載せてやるとピアノのプレゼンスも非常によくなった。パンクを聞くにはうるさいけど。

D130にそのまま並列に接続しただけだが,今まで弱かった4kHz付近がはっきり出ている。 つまり,その帯域に限ってはD130以上の能率を持つことになる。ただしインピーダンスは4Ωだ。

8Ωに4Ωをパラったのだからアンプとしては厳しい。簡単なネットワークを作りちょっと抑え気味にした。 これでシステムインピーダンスとしては4Ω程度になる。

現在,ATT用の抵抗として6.8Ωを直列に挿入,HPFとして32uFのコンデンサーも直列に入れている。 オケ,ピアノの明快さ,男性・女性ボーカルのリアルさ,フュージョンの奥行と空間,ロックのうるさい部分など様々なジャンルを聞きバランスが取れるこの数値に決めた。

クロスオーバーネットワーク

1インチドライバとホーンを導入することを長らく考えていたが,なんの,これがヨーロピアン・オーディオということか。 D130の軽やかで抜けのよい低音とイソフォンのリアルな中域がよくマッチする。

後面解放なので後ろ側に盛大に音が漏れ出している。音像をピンポイントに結ぶには不利だが,音場感がでて広がるので聞きやすくはある。 スピーカーを内振りにして指向性を制御することもできる。左右の壁からの1次反射は音像をぼかす主原因なので20度程度の内振りは好ましい。

アメリカの豪快な物量が低音を支え,厳格さと正確さをドイツが加える。ココになぜかブラジルのノリが加わる。 そして最終的には日本人が作ったアンプが駆動する。国際色豊か?おかしみが溢れる。

これがプア・オーディオの面白さかもしれない。

D130 + ISOPHON OVAL

写真はやや古いけど雰囲気こんな感じ。

回路図は現在の状態。イソフォンのカットオフ周波数を上げるか,シャント抵抗を入れるか悩み中。ツイーターのカットオフも少し上げるか。悩み中。


cross over network

2220に変更後のメモ。現状ネットワーク。
2220に変えてからISOPHONEのカットオフをぐっと下げたが,中音域が過多になってしまった。 さすがに2220の上を出しっぱなしはやりすぎたようであまり入れたくないがコイルを入れた。 やんわりと2220うえの方を切ってやるイメージでカットオフは高め。 ISOPHONの上も出しっぱなしだし,3つ単純にパラレルにつないでうるさい帯域を抑えた感じになっている。 きっと定位は甘々なんだと思うし,アンプの負荷は重くなる。最低インピーダンスは5Ωくらいだろう。

しかしD130+ツイーターと比べると声の質がとてもよくなった。これはISOPHONに負うところが大きい。 重心が低くなった分,バランスもよくなった。

接続はすべて正相。F特は気にしていない。クロス付近が盛り上がっているかもしれない。 スピーカーのF特もあるし。ネットワークのF特だけじゃ議論できない・・・

中域と高域は低域をダラ〜と切っているだけなのでパワーを入れられない。 けどパワーは入れないし,コイルを増やしたくないのでダラ〜って感じ。だらしないクロスオーバー。

あ,あと最後の仕上げのスパイスとして2uFのコンデンサのひとつはウーハーの端子に直結しておいた。 こうするとESRが最小となり滑らかな音になると言われている。


2220のエージングが進んだのか中域がモリモリ出るようになってきた。特に500Hz付近は箱の特性との相乗効果なのか山盛りの印象。大音量にすると暴力的とも思える。 部屋と箱を含めたマッチングもあると思うが,低音が回っているという表現よりも純粋に音圧が高いと感じる。 つまり,共鳴や共振で作られた偽の音圧ではなく,スピーカーユニットが発生する音圧が過多と感じた。

いくつか対策は考えられる。いつも頭をよぎるのはユニットをLE15か2205に交換する。 最低域を伸ばして中音域を抑えるには効果的だろう。 しかし切れの良いの低音を目指してD130を導入した当初の思惑からは外れていく・・・

もう一つはネットワークでの対策。元々コイルは入れたくなかったが,すでに2mHを入れてしまった。 もう少し中音域を抑えるためにはコイルのインダクタンスとコンデンサーの容量も増やせばよい。

JBLのネットワークは500Hz,800Hz,1200kHzがスタンダードだ。500Hzとすると例えば3152Aなどが該当する。 ところが,JBLやALTECの汎用ネットワークはセオリー通りの設計になっていることが多くあまり参考にはならない。 現在の設計手法ではユニットの特性を考慮した専用設計が一般的になっている。 具体的には周波数によるユニットのインピーダンス変化を考慮すること,及びユニットの裸の音圧特性を同時に補正するような特性をネットワークに持たせることだ。

そもそもJBLのプロフェッショナル向けユニットが真価を発揮するPAやSRの現場ではグライコ(グラフィック・イコライザ)で最終調整して仕上げるのでネットワークはざっくりでよいのだ。 チャンデバ(チャンネル・デバイダー)を使ったマルチアンプやバイアンプならばなおさら・・・ネットワークは家庭用スピーカーの必要悪だ。

cross over network

まずコイルの選定のために計算。

500Hz付近を少し押さえたいので3mH〜4mHのコイルを使う。Z=2*PI*L*Fより(8Ω,500Hzクロスだと2.55mHになる)

続いてコンデンサの選定のために計算。

コンデンサの容量はすでに20uFをぶら下げているので,20uF〜40uFが目安。Z=1/2/PI/C/Fより(8Ω,500Hzクロスだと40uFになる)

キャパシタの容量は大きい方が高域の減衰が良いが,コイルとコンデンサを組み合わせたLPFはFc直下にピークを生じる。 ホーンドライバのHFPの場合はFc付近のピークが良い方向に働くこともあるが,ウーハーのLPFの場合はこのピークは悪い方向に働いてしまう。 なぜならウーハーはピストン振動領域から分割振動領域へと遷移する領域で必ずF特性の暴れ(ピーク・ディップ)が発生してしまうからだ。 この暴れはウーハーの個性なのだが,個性はマスクしたほうが素性が良くなる。

ウーハーのHFPは理想的にはFcの1/2octくらい手前からレベルを下げ始めてFc以降でストンと落とすのが理想だが,次数が高くなると部品点数が多くなりコスト高となる。 バッフルステップ効果を考慮に入れるならレベルを下げ始める周波数が肝となってくる。しかしコイルが増えてDCRが増えるのは何としても避けたいのでダラダラ・クロスにするしかない。

Fc付近のピークを抑えるためにキャパシタには必ずシリーズ抵抗を入れる。抵抗値は10ohmから20ohm。 抵抗値が小さいとFc直下のピークが1dB以下ではあるが大きくなり,抵抗値が大きいとFcより上の減衰特性がdB単位で悪化する。 どちらにせよFcをまたいで余計な帯域が残ってしまう。どちらをとるかはバランス次第。 さらに全てのキャパシタにシリーズ抵抗を入れてしまうとハイエンド側のフィルターの切れが悪くなるのでシリーズ抵抗を挿入しないキャパシタと組み合わせる必要がある。

つまり,シリーズ抵抗が入ってくることで定数の決定は複雑化してしまう。 シリーズ抵抗の抵抗値,抵抗値入りのコンデンサ容量と抵抗値なしのコンデンサ容量という3つの変数に分けられる。

コンデンサの容量が大きく抵抗値が小さいとインピーダンスが下がりすぎてドライブが難しくなるので注意。 真空管アンプで駆動する場合はインピーダンス特性が周波数特性に現れるので,調整にコイルを使うかコンデンサを使うかによって特性に変化が出てしまう。 インピーダンス特性もできるだけフラットにしておきたい。

以上のようなことを考えながらコイズミ無線の店頭でコイルとコンデンサを選んだ。

ウーハー用のネットワークは部品が大きい。つまり値段が高い。いちいち部品の値段を考えるようになったのはいつからだろうか。 ドメスティック・オーディオの悩みどころ。

店頭在庫との兼ね合いで結果的に3mHと33uFを選んだ。 理想的なFcは506Hzだが,追加の容量が20uFあるので400Hz付近から切れ始める予定。

結果的に既存のコンデンサ20uFと組み合わせて上図のような接続にした。

抵抗は10Ωと15Ωを購入したがコイルのインダクタンスが予定より低いのでFcより上をより落とすために10Ωとした。 シミュレーション上では250Hz〜350Hzにかけて0.3dB〜0.4dBほどのピークを許容する代わりに1kHzで1.0dBのフィルタリング効果を稼いだことになっていた。

コイルは抵抗値が低いことを優先してコア入りを選択する。3mHと3.6mHで迷ったが抵抗値の低い3mHを採用。 コンデンサは電解は避けたいがシリーズ抵抗を入れるので低インピーダンス性は求められず箔巻きでなくてメタライズドで充分。 コスパ優先なので特に迷いはなく部品は決め打ち。コイルは Jantzen Iron Core Coil + Discs。コンデンサは Jantzen Cross Cap。

結果的に暴力的とも思えた中低域がすっきりした。

Lee Ritenour | Rhythm Sessions : 中低域がたっぷりで飽和気味の録音だが,許せるバランスに落ち着いた。

Eric Clapton | Unplugged : リズムを刻む足音を失うことなく少しすっきりとした印象に変化。

Paul McCartney | Kisses On The Bottom : ポールのボーカルの基音がしっかり録れているのだがすっきりして聞きやすくなった。

Holly Cole | Don't Smoke In Bed : 過剰だったベースがすっきりしたのでボーカルが引き立ちより聞きやすくなった。

テレビ番組なんかもチェックに使うが,男性アナウンサの音声が自然になり聞きやすい。

バランスが良くなったことで声の通りがよくなった。最低域も聞き取りやすくなりイヤフォンの音に近づいた。 空気を揺るがす迫力が失われたわけではなく,バランスが良くなった分,音量も上げられるのでより迫力のある音を楽しめる。


2020/04/25
211シングルアンプが出来上がって音を聞いた印象。ダンピングファクタが低いとはこのことか! 中低域にコブシが入るという表現を目にしたことがあるが,まさにその通り。 ただ膨らんだだけとは違い量感はあるけどブーミーではない。自然な感じ。 よくスピーカーが歌うとかいうけど,そんな印象。ただ,ソースによってはボーカルのサシスセソがきつい印象があるのでネットワークを変更した。

cross over network

ミッドレンジのレベルを上げたことが原因かと思っていたが,ツイーターを絞ればきつい印象は無くなるので,ツイーターのカットオフを上げた。 1uFを5本入れていたが2本外して3uFとした。ATTを調整しながら何枚かCDをかけていい塩梅に落ち着いた。 元々家庭用のオーディオの高音はしっとりと優しい音が好まれる。 近接視聴の環境が多いからだと思われる。一方でPAやSRは強靭で突き刺さるような高音を出すと大空間になじんでよい具合となる。 映画館もしかり。結構バリバリと鳴っている。

どちらかというとプロ志向の音作りが好きなのだが,好みが変わってきたらしい。 それから真空管アンプの音とマッチするという意味で少し手を入れる必要があったようだ。

試験的に入れていたミッドレンジの3.3mHもハンダ付けした。 いつ入れたか覚えてないけど,確かミッドレンジのレベルを上げるために5.1Ωを追加した時,一緒に入れた気がする。

ツイーターは無指向性にしてから空間になじみが良くなり部屋のどこにいても楽しめる音になった。 真空管アンプにしてから低音のなじみが良くなったのでさらに空間になじむ音となった気がする。 ただし,アンプが熱いのは困る。気になる。


cross over network

どうもローミッドが強すぎる。迫力はあるんだけど。迫力は満点だけど,少し膨らみすぎだしもう少し深いところが欲しい。 LE15や2205,E140のようなコルゲーション付きのコーンならいいのかと悩んだけどそこまで踏み込む勇気がなく。 まず,真空管アンプを使っているのならばクロスオーバーで調整が可能なので,10uFを二つ追加。さらに10Ωに50Ωを並列してさらにローミッドを落ち着かせた。

enclosure bracing

enclosure bracing

続いて何年かぶりに開封。補強を足した。たまたま丁度よい長さの2x4材が手元にあったので長さを合わせてボンドを塗り,木ネジで締め上げてみた。ボンドは歯ブラシで塗るとよいみたいなので試してみたが,確かに指で塗るがごとくしっかりと塗ることができる。

ボンドは乾いていないけど補強を追加したリアパネル(バックパネル)の響きは固さを増し,ボワンという帯域。おそらく200Hz〜500Hz位と思うけど少し落ち着いた。

吸音材はユニットの背面側が最も効果的なのは分かっているのでユニット背面を重点的に詰めている。吸音材の足掛かりとしても補強材が役立つ。 吸音材は背面空間があると大きな効果を発揮するからだ。吸音材の背面を意識しながら補強材を足掛かりとして吸音材を詰め直した。

やはりユニットの背圧を受ける正面から受け止めるリアパネルの補強は効果が高い。一応メイプルの30o角棒で補強を入れていたが足りなかった。38mmx89mmの2x4材でちょうどよいくらいだった。とはいえ,補強を入れすぎると内部容積が減ってしまうので容積分として最初から勘定に入れておくとよい。強度を出すためにはV字補強ってのも効果が高そうだぞ。

こだわりポイントとしては,補強材はベニヤやMDFではダメ。集成材はまだましだが無垢の棒を使う。これに限る。強度が最高だ。強度を考えるならアルミアングルやカーボンも選択肢に入ってくる。そんなこんな。オミクロン株ピーク下の花粉症前夜。音楽を聴くのはまた楽しい。

その1週間後,9mmのヒノキ集成材で作ったミッドレンジ用の箱の内部に補強を入れた。ボンドと万力でちまちまと1日かけて作業した。 一カ所失敗があり,スピーカー・ユニットが取り付けられなくなった。夜泣きながら修正した。。。疲れた。

熱帯魚の水槽に使う濾過用のフィルターもごっそり買ってきたのでそれを詰め込んでみた。 各種癖がとれて音像が遠くなってしまったが,その分,奥行きや広がりは出たように思う。


2022年初夏

クロスオーバー・ネットワークを組み直した。

音的に満足してきたのでまとめてみた。材料はこんな感じ。バラック状態。ウーハー用の部品は床に直置きだった。

cross over network

ホームセンターで12mm厚のMDFを購入,φ1.5mmの穴を開けて1.6mmの単線を打ち込んで部品を固定している。 まとめるリスクとして,コイル同士の結合,共通インピーダンスの発生が考えられる。ので気を付ける。こんな感じ。 コイルはホットボンドで固定。

cross over network

公開記念として部品をメモっておくと・・・
大体コイズミ無線で買えるんだけど・・・

大容量のコンデンサはJANTZENのCROSS CAPを基本として微調整は手持ち在庫部品を使用。 ツイーターのコンデンサーはロシア製テフロンコンデンサと父親からもらったWEST CAPに加え0.68uFはポリカーボネイト・コンデンサを使用。 コイルもJANTZENを使用。ツイーターとミッドは空芯。ウーハーはDCRが重要なのでコア入り。 抵抗はJANTZENやDALEの巻き線抵抗を使用。ウーハーは手持ちのセメント抵抗などを使用。 ミッドの抵抗は無誘導巻きにこだわった。

配線材はIV単線1.6mmとテフロン被覆の銀メッキ線とすこし。 ウーハーのコイルはできるだけ直付け。


翌日改造

一晩悩んでウーハーのLPFに入る「33u+10u+10u」を「100uF」に交換した。ギリギリ押し込んだ。

cross over network

cross over network

100uFに交換した部分はカットオフ近辺の盛り上がりを抑制するとっても大事な部分。無駄に思えてしまうけど。 LCを使ったフィルタはインピーダンスを合わせてやらないと盛り上がりができてしまうのが問題。 そもそも中低域がモリモリ山盛りなので200Hz付近が盛り上がるのはよろしくない。 たし,100uF以上にするとインピーダンスに凹みができてしまう。すでに6Ω位まで下がっているかもしれない。

一方で不要な高域の減衰は2uF×5+10uFが担っている。こちらも重要。中域の滑らかさが決まる。らしい。 できるだけESRがつかないように小型の2uFを5本並列にしている。しかも5本中1本はユニットの端子に直付けしている。

150Hz〜200Hzが落ち着いたのだと思う。とても聞きやすくなった。でかい音で聞ける。アッテネータは12時を指している。とても気持ち良いので合格!!

これまでネットワークを箱の上に置いていたので箱の上が少しすっきりした。 実はおウチの人に邪魔だって言われてお片付けしたのでした。


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