JBL D130 2-Way スピーカーシステムの自作


6:システム設計

6-1:2Way

D130だけだと高域が足りないのは残念ながら事実。 フルレンジと言ってもそこは15インチ。

15インチ・スピーカーをベースにシステムを組むことを考えると,2インチスロートのホーン・ドライバを考える。

さらに2インチ・ドライバーでは超高域が不足するのでスーパーツイーターを追加する。

というのが(ちょっと古い)一般的な考え方ではないだろうか。

JBLは現在でもこのようなシステムを作っている。

横道にそれるが,SRやPAの進化した形はラインアレイという手法だ。 線音源を作るために横長の形状をしており縦方向に2次元的な指向性を持つように設計されている。 12〜15インチの低音,8〜10インチの指向性制御したミッド,線音源化したホーンによるハイ。 これを縦に連ねて懸下する。さらに18〜21インチのサブウーハを必要なだけ設置する。

これで高音圧で明瞭な音と広いサービスエリアを両立できる。

家庭用のシステムを考えると,まずスピーカーとリスナーの距離が近い。 つまり,スコーカ―もしくはツイーターとウーハーの距離が離れると位相差の影響を知覚しやすくなる。

小口径ユニットを使ってツイーターとウーハーをできるだけ近づける理由はここにある。

大口径の場合は同軸ユニットが最良なのはこういった理由からもうなずける。

こういったことから考えると2インチ・ドライバーを使用した大型ホーンシステムはホーンによるミッドレンジがメインであり,ウーハーは補助的な役割でしかない。

2wayでクロスオーバー周波数を500Hz程度まで下げられるのであれば有利だが,そのためには大型のホーンが必要になる。 1kHz以上でクロスすると音楽でも音声でも重要な帯域が分割されてしまうので難しくなる。

D130のような大型フルレンジの場合は本人にできるだけ頑張ってもらい,足りない超高域をスーパーツイーターで補うようにした方がつながりが良いように思える。

ということで今回はスーパーツイーターとの2Wayとする。

あくまでもD130を主役と位置付けて活躍してもらう。


6-2:ツイーター

様々な形状・方式のツイーターが存在する。 技術的なバリエーションの多さはコーン型トランデューサー中心のウーハーとは比較にならない。

基本的な方式はコーン型,ドーム型,ホーン型,平面型,リボン型の5種類に大別できるだろう。

コーン型は単純に紙でできたコーンを用いた小型のスピーカーだ。 ツイーターならば直径10cm以下が多いだろう。 コーンの直径よりもボイスコイル径が小さいのが特徴だ。

ドーム型はボイスコイルと同じ直径のドームから音を放射する。 主にハードドームとソフトドームに大別される。 ハードドームはアルミなどの軽金属が主流でハイエンドではボロン,ベリリウム,カーボンなどで作られる。 ソフトドームは絹等の繊維や樹脂でできている。

大きいものだとNESのソフトドーム(TOA製)が直径100mmだそうだ。ATCも大きいが75mmだそうだ。

ホーン型は軽い振動板にホーンロードをかけた方式でホーンスピーカーを小型にしたもの。 ボイスコイル直径はダイアフラム径と同程度だ。 ダイアフラム開口部にイコライザーを配して指向性や周波数特性を制御するとともにホーンによって能率を高める。

ドーム型はホーン型のホーンを取り去ったモノと言ってもいいかもしれない。

平面型は樹脂膜に電極を形成したもの。コンデンサー型や平面磁気回路のツイーターがある。

リボン型は金属箔を磁場中に置いたもの。

その他には,セラミック(ピエゾ),イオン(プラズマ)のツイーターもある。

D130と組み合わせる条件は高能率であること。 ウーハーより能率の低いツイーターは使えない。

そうなると能率の低いドーム型や平面型は落選する。

リボンツイーターも低価格のモノも手に入るが,魅力的な製品にかける。 能率の面から考えても選択肢が少ない。そしてまともなリボン型は高価だ。

結果的にホーン型ツイーターの出番となる。

6-3:JBLのホーン・ツイーター

JBLの高能率なツイータ―について簡単に触れておく。

D130にふさわしいツイーターと言えばJBLの075がすぐに浮かぶ。 075は1956年に登場した。

ハイドロ・フォーミングされたアルミ製のリング・ラジエーターを採用しており,スムースな高域を再生する。

リング・ラジエーターとはドーナッツ状のダイアフラム(振動板)の呼称だ。 発音部を断面で見ると2次元的な構造になっている。 そのため反射や位相干渉が単純になり音波の制御がしやすい。 ダイアフラムからホーンスロートへ直接音波を導くことができるため抜けが良く端正な音になる。

一般的な磁気回路と組み合わせることを考えると,工作精度の影響が少ない実に合理的な構造だ。

2インチ以上のダイアフラムをもつドライバーはイコライザーと呼ばれる複雑な形状の部品を使っている。 イコライザーの設計と製造精度で10kHz以上のハイエンドのレスポンスが決まる。 高い周波数は波長が短いので,緻密な設計と高い工作精度が要求される。

イコライザーは基本的に鋳造で作られる。 何重もの円環状のスリットをもつ複雑な形状なのでいくつかの鋳造部品を組み合わせて作る。

同じ口径のイコライザーならばスリットが多くすればより高い周波数まで再生できる。 特殊な製法により一体鋳造の7重スリットを実現したドライバーもある。

現在ではNCで複雑かつ高精度な切削加工が可能になっているので 大口径でも20kHz以上までレスポンスを持つドライバーが比較的容易に実現できるのだろう。

ツイーターは波長の短い高域を扱うので,加工精度が悪いと特性の再現性が悪く,製品のバラつきが大きくなってしまう。 古い製品は加工精度に問題があったというハナシもあるのでツイーターについては現行製品が有利と考えている。

075に話を戻そう。

D130と組み合わせる場合は2.5kHzクロスで使えるとしている。

見た目も個性的でブレット(Bullet)ツイーターというイチジャンルの教祖にあたる。

ただ,今日的な視点ではハイエンドの伸び切っていない。 また,指向性も少々狭いように思える。

その他,JBLの代表的なツイーターを紹介すると以下の3種だろう。

JBL 2402
JBL 2402
JBL 2405
JBL 2405
JBL 2404
JBL 2404

「2402」は075の後継機でプロ用。 磁石がフェライトになっている。

その他にネコ目で有名な「2405」。これも見た目が個性的だ。 スタジオ・モニターにも多くつかわれた。 水平方向の指向性が広くなっている。

4430に使われたバイラジアルホーンを小型化した「2404」。 指向性が広く,歪みが少ない,低い周波数から使えるのが特徴だそうだ。 あまり採用例が無いがPA用のスピーカーに使われた例がある。

いずれもダイアフラムと磁気回路は共通で,ホーンのみが異なる。 この3種は主にSRやPAを意識していたものと思われる。

6-4:ツイーター選定条件

繰り返しになるがウーハーより能率が高いこと。D130は103dB/Wあるので,ツイーターの能率はこれ以上必要。

ホーン型での条件は耐入力ができるだけ低いこと。 ツイーターに100Wもの電力を入れることは絶対にない。

PAやSRではハウリングが起きるとそのようなこともあるかもしれない。 だが,オーディオ用ではありえない。

だから耐入力は10Wでもおつりがくる。

口径は無駄に大きい必要はなく超広域の素直さを考えると小口径の方がよい。

指向性は広い方がよい。楽器から発する音は無指向性で空間に放射されるからだ。 少なくとも90度は欲しい

選定のヒントとしては,PAやSR用のホーンツイーターがまず考えられる。

世界中を見回すと様々なホーンツイーターがある。 まずピエゾはダメ。あれは圧電ブザーのお化けみたいなもので音は期待できない。 PA用も各種あるがハイエンドが伸びていない場合が多い。 耐入力が異常に大きいものは磁性流体を使っているモノがあるので注意が必要。 最近はホーンがABSなどのプラスチック製が多いができればアルミダイキャストのホーンがいい気がする。

色々と選択肢があるが,ブラジルのSeleniumとPRV Audioに目を付けた。

その他の選択肢として日本独自のホーン型スーパーツイーター群がある。 ゴトーユニット,エール音響,YL音響などが作っている。 大型のアルニコマグネットと小型のダイアフラム,小型のホーンがついている。 重量は10kgとかそんなオーダーだ。 なんともバブリーなツイーターだ。

オークションでたまに出品されているが,値が張るし,壊れやすいし余り良いことはない。

ということで,,, SeleniumのST200,ST350,ST400もしくは, PRV AudioのTW450,TW350あたりがいいのではとおもっている。

Seleniumはダイアフラムがフェノリックなので躊躇。 PRV Audioはチタンだそうだ。TW450とTW350を比べると075的なのが450なのだが, より小口径で耐入力も小さい350でも十分で,超広域の伸びは350の方がよい。

オーディオ用を考えるのならば350がよさそうだ。安いし。

PRV audio TW350Ti
PRV Audio TW350Ti:http://prvaudio.com

例によって勝手に訳する。

PRV Audio TW350Ti スーパー・ツィーターは中音域から高音域まで反応がよく高能率です。 カプトン製の補強に載せられたチタン製ダイアフラムは軽くて薄く耐久性に優れます。

TW350Tiは高音圧を要求されるDJキャビネットに最適です。 シャープでスムースな音は大型コンプレッションドライバーが音を上げてしまうような会場で本領を発揮します。

鋳造アルミフレームなので良い音を保証すると共にどんな環境でも長持ちします。 交換用ダイアフラムがあります。

RMS Power 60 W
Program Power 120 W
Impedance 8 Ω 
Sensitivity 105 dB 2.83V@1m
Freq Response 3,000-25kHz @-10dB fall  
Rec Crossover  5,000 Hz 
Voice Coil Diam 1 in 
RE 6.2 Ω 
Le Inductance .085 mH 
Flux Density 1.7 T 
Weight 1.32 kg
      
Materials     
Voice Coil Copper   
VC Former Kapton   
VC Material Titanium   
Magnet Ferrite  

6-5:クロスオーバー・ネットワーク

D130の上を,切るか,切らぬか。

ツイーターの下をどの程度切るか,ATTはどの程度にするか,2次にするのか。

悩みはこんなところ。

まず,D130は頑張ってもらう。つまり上は切らない。出しっぱなし。うるさかったら切る。

TW350は結構能率が高いのでクロスを高くしつつ,ちょっとATTする。

HPFは肩をいからせた2次にしないがコイルは入れる。 カットオフ以下の低い部分をダンピングするのが目的。

DIY Enc HF cross over net work

Capは2uFの方がつながりが良さそう。そうするとATTは10ohm以上がいい。R1を20Ω〜50Ω位にしますか。

小改良

DIY Enc HF cross over net work

Capを2uFとし,手持ち部品でより減衰するようにした。

現状,5kHz付近がすっきりして聞きやすいが,プレゼンスに乏しくつまらない音なのでもう少しカットオフを落としてみようと思う。


6-6:調整!!

ツイーターのカットオフを落としていく。5uFまで容量を大きくしてみた。 メリハリが出てきて良いのだが,うるさい。遠くで聞くとちょうど良いが,近くで聞くととてもきつい。 特にスピーカーのすぐ前にソファーがあるので,ソファーに座るとツイーターからの音がもろに耳に刺さる。

ということで・・・無指向性にしてみた・・・写真は後程。

ツイーターを下向きに固定して,ステンレスの半球をツイーターの下に置く。 音場が広がり快適になった。

指向性が広くなった分,ツイーターのレベルを上げた。ほぼ最大の状態だ。 10kHz以上のレスポンスが悪くなった気がするのでATTの12Ωに1uFをパラった。

この状態で半年は聞いただろうか。やはりプレゼンスに欠ける。 きれいな音なのだが,ドンシャリ気味だ。


3Way化・・・

ここで登場したのが,前主役であるところのジャーマン・ビンテージ・スピーカーだ。 イソフォン(ISOPHON)のP1318という13センチ×18センチのオーバル(楕円)スピーカーを引っ張り出してきた。

非常に軽く薄いコーンを持ったスピーカーで弦楽器や打楽器,管楽器を気持ち悪いほどリアルに再生してくれる。 それを後面解放の平面バッフルに搭載している。低音はスカスカ,まったく出ない。

天板の上に載せてやるとピアノのプレゼンスも非常によくなった。パンクを聞くにはうるさいけど。

D130にそのまま並列に接続しただけだが,今まで弱かった4kHz付近がはっきり出ている。 つまり,その帯域に限ってはD130以上の能率を持つことになる。ただしインピーダンスは4Ωだ。

8Ωに4Ωをパラったのだからアンプとしては厳しい。簡単なネットワークを作りちょっと抑え気味にした。 これでシステムインピーダンスとしては4Ω程度になる。

現在,ATT用の抵抗として6.8Ωを直列に挿入,HPFとして32uFのコンデンサーも直列に入れている。 オケ,ピアノの明快さ,男性・女性ボーカルのリアルさ,フュージョンの奥行と空間,ロックのうるさい部分など様々なジャンルを聞きバランスが取れるこの数値に決めた。

クロスオーバーネットワーク

1インチドライバとホーンを導入することを長らく考えていたが,なんの,これがヨーロピアン・オーディオということか。 D130の軽やかで抜けのよい低音とイソフォンのリアルな中域がよくマッチする。

後面解放なので後ろ側に盛大に音が漏れ出している。音像をピンポイントに結ぶには不利だが,音場感がでて広がるので聞きやすくはある。 スピーカーを内振りにして指向性を制御することもできる。左右の壁からの1次反射は音像をぼかす主原因なので20度程度の内振りは好ましい。

アメリカの豪快な物量が低音を支え,厳格さと正確さをドイツが加える。ココになぜかブラジルのノリが加わる。 そして最終的には日本人が作ったアンプが駆動する。国際色豊か?おかしみが溢れる。

これがプア・オーディオの面白さかもしれない。

D130 + ISOPHON OVAL

写真はやや古いけど雰囲気こんな感じ。

回路図は現在の状態。イソフォンのカットオフ周波数を上げるか,シャント抵抗を入れるか悩み中。ツイーターのカットオフも少し上げるか。悩み中。


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