LINE6 DL4 EXTREME MODIFY

初稿:2012-06-06:てか工事中


プリアンプ

プリアンプの目的は,,,
・適切なダイナミックレンジに調整する
・トゥルーバイパスの音色変化を最小限にとどめる
・真空管アンプに接続した状態を再現する
・余計なノイズは付加しない

ダイナミックレンジ調整

DL4のゲイン設定を継承しました。

エフェクターの存在を消す

エフェクターの存在を消して,ギターを真空管アンプに直結した状態を作り出します。

そのための肝となる部品は超低ノイズかつ低歪みのFET入力オペアンプです。 ダイナミックレンジと低ノイズ性能,そして真空管アンプに直結した状況を再現するためにはディスクリート部品では難しいです。

ディスクリート部品は一つかますだけで音が変わります。たとえその変化が好ましい変化だったとしても今回は排除します。

しかしながらどんなに高性能なオペアンプを使用しても,エレキギターと真空管アンプを直結した時のマジックは再現できません。

この特別なマジックを再現するためのちょっとした工夫を加えます。

疑似真空管受け回路(tube input capacitance emulator)とでも呼びましょうか。

それだけではありません。トゥルーバイパス時とエフェクター通過時ではやはりトーンに差が出てしまいます。

疑似ケーブル負荷回路(cable capacitance emulator)も追加します。

トゥルー・バイパスは音色が変わる

トゥルー・バイパスは確かに純粋にバイパスしているのですが,つないだだけでギターの音色は変わってしまします。

オーバードライブなどのエフェクターはそもそも音を変えるのが目的なのでそれほど気になりませんが,ディレイやリバーブはドライ音がクリーンなので差が気になります。

なぜ音が変わるのか,バイパス時とエフェクト通過時でギターにつながるシールド線の長さが変わるからです。

ギター → 5mのシールド → エフェクター → 5mのシールド → アンプ

上記のような状態を考えます。

トゥルーバイパス時はギターに直接10mのシールドがぶら下がります。

しかし,エフェクター通過時はバッファされるのでギターから見ると5mのシールドしか見えません。

みなさんご存じのようにシールドの容量が変われば音色が変わります。

真空管アンプに接続した状態を再現する

真空管アンプの入力には真空管特有の容量(キャパシタンス:コンデンサー)があります。 オペアンプで直接ギターの信号を受けた場合,真空管の入力容量の影響が出ませんので音色が変わります。

入力容量をエミュレートすることでハイの出方をコントロールできます。

LINE6 DL4 EXTREME MODEFIY PREAMP SCHEMATICS
Input PreAMP Schematics ( L Channel Only )

左チャンネルのみの回路です。実際,ギターを直結する場合はモノラルで入力するので,同じ回路がパラレルになります。

種明かし

種を明かせば簡単です。

トゥルー・バイパス補正のためにケーブルの容量を模したコンデンサを並列に入力に入れます。 3m〜5mの長さのシールドを想定して500pF程度の容量になるようにします。 ここでは220pFとしていますが,実際はL,Rの両チャンネルが並列になりますので加算されて440pFとなります。

真空管の入力容量を模したコンデンサも入れます。ここにはフェンダーの入力回路に入る68kを直列に追加します。 フェンダーの入力回路はハイ入力だと68kが2本並列になります。 この回路もL,Rの両チャンネルが並列になりますので実際は34kohmと200pFとなります。

コレだけで全く同じトーンが得られるかどうかというとそれは無理かもしれません。 でも,最低限コレくらい行っておかないと説得力がないと思います。

ここまでするとバイパス時とエフェクト通過時のトーンの変化はとても少なくなります。 むしろエフェクターとアンプをつなぐシールドを交換した際のトーン変化の方が大きくなります。

今回はエフェクター・アンプ間の接続に5mのシールド線を使ってトーンの合わせこみを行いました。 この状態でエフェクター・アンプ間の接続を10mのシールド線に交換するとエフェクトを通した方が音が元気になります。 バイパス時は音色が丸くなり平坦な音になってしまいます。

バイパス時の方が音色が劣化するのはシールド線が長いからです。 長いシールドを使うときは適切なバッファを入れてやることでトーンの劣化を防ぐことができるというわけです。

入力保護

真空管はちょっとやそっとでは壊れませんが,半導体部品は静電気や過電圧であっけなく壊れます。

入力回路は真空管アンプと同様にコンデンサーを使わない直結としています。 FET入力のオペアンプはバイアス電流が少ないので直結が可能です。

しかし,直結だと過大な入力が入った際にオペアンプが壊れやすくなります。 オペアンプの入力もある程度(例えば10mA)の電流には耐えられますが,それでも心配です。

そこで入力には保護ダイオードを追加しました。1kΩの電流制限抵抗も付けました。

保護ダイオードには普通の小信号用のダイオードではなく,J-FETをダイオード接続して使用しています。 普通のダイオードは逆電流がある程度流れますので,ハイ・インピーダンス入力には使えません。J-FETをダイオード接続とすると逆電流がとても少ないです。 これも評価冶具回路を作って確認しました。実測で1pA以下でした。

保護用のJ-FETが100mA程度まで流せると考えると100V程度の過電圧には耐えられます(瞬間的ですが)。 これで安心してホット・スワップできます。

増幅

ゲインはDL4に倣っています。1.5倍程度です。 単純な非反転増幅ですが,抵抗値を小さくして熱雑音の発生を抑えています。 さらに小さくするとさらにノイズは減りますが,オペアンプの負荷が重くなり,消費電流も大きくなります。

部品

オリジナルはTL072を使っています。FET入力のオペアンプとしては一般的ですが古典的な部類に入ります。 マイナス側の入力レールの制限が厳しく,過大な入力を与えた時に出力の位相が反転するという致命的な欠点を持っています。

オペアンプの選定について,結論は先送りしていますが,選ぶ際に考えたことはこちらに記しています。

TIのオペアンプ特集


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