LINE6 DL4 EXTREME MODIFY
初稿:2012-06-06:てか工事中
電源ノイズの設計
ノイズは熱雑音やショット雑音だけではありません。
厄介なのはスイッチング電源が発するスパイクノイズや,デジタル回路が発するノイズです。
自分自身ではなく,周囲の回路からもらうノイズ
ノイズが入り込んでくるルートは主に電源と信号線です。
DL4ではアナログ信号線はごく限られていますのでノイズが飛び込んでくることは考えなくても大丈夫です。
しかし,電源には要注意です。
電源から入ってくるノイズ
電源からどの程度のノイズをもらってくるのか定量的に数値化するのは困難です。
ですから,逆に考えて,電源がどのくらいクリーンだったら大丈夫なのかを検討しておきます。
先ほど試算した通り10uVrms以下の信号を扱いますので,電源由来のノイズは1uVrms程度まで抑えておきたいところです。
PSRR
PSRR(パワー・サプライ・リダクション・レシオ)は電源からどの程度ノイズをもらうか示す指標です。
普通に設計されたICではPSRRは60dB以上はあります。
60dBは1000倍ですので,1mVrmsの電源ノイズならば許容できるということになります。
1mVを測定するのはなかなか難しいので100倍に増幅するアンプを作りオシロスコープで確認しました。
電源ノイズ1mVをめざす
ノイズ源を整理しましょう。
急峻な電流変化が起こる部分でノイズは発生します。 ノイズの発生は仕方ありません。それをいかに食い止めるかが腕の見せ所です。
・スイッチング電源(DC-DCコンバータ)
・デジタル回路
・チャージポンプ
DL4では上記が考えられます。 他にもモーターを駆動したり,表示装置を駆動したりするとノイズが出ますがDL4にはありません。
ノイズ対策基本!臭いものには蓋
ノイズ対策の基本は「臭いものには蓋」です。
例えば,リビングルームの中にゴミ箱があり,生ごみが匂っているとします。
「鼻栓をする」は最悪の対策,「換気する」はまあまあ,本命が「ゴミ箱に蓋をする」です。 「ゴミを外に出す」という手段も考えられますが,それはノイズ源を別筐体にするという意味になるかと思います。
ノイズ対策はノイズを出さないようにするのが基本です。
フィルターは「上げて落とす」
ノイズを落とすにはフィルターが必要ですが,フィルターの基本はインピーダンスを上げて,それをコンデンサーでグランドに落とします。
インピーダンスの低い電源ラインは原理的にフィルターが効きにくいので,コイルや抵抗を挿入してインピーダンスをいったん上げてからコンデンサーで落とします。
DC誤差が許容できる回路には抵抗を挿入しても問題ありませんが,DC電圧のドロップが問題になる電源回路では抵抗器を入れることはできません。 そこで,コイルの登場となります。
コイルによるLCフィルターはΠ型フィルターが基本です。どちらが入り口でどちらが出口なのかを意識して定数を決めます。
LCフィルターはピークに注意
コンデンサーとコイルで作るLCフィルターは共振によるピークが発生しますので,十分注意して設計します。
ピークがあるということは増幅作用が発生することになり,ノイズが増幅されます。
FcにおけるQを適切に設定してピークを抑制するように設計します。Qを落とすにはコンデンサーに直列に抵抗(数Ω)を入れるという対策が必要です。
FB(フェライト・ビーズ)
FBはチップサイズの小型のコイルです。フェライト磁石のような外見です。
コイルに比べるとQが低く,高周波で抵抗成分を持つのでノイズをうまく落とすことができます。
DCR(直流抵抗)は大抵0.5Ω以下になっていますので,DC電圧のドロップは無視できるほどに小さいです。