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FOSTEX NF-1 雑感・改造など


 FOSTEX NF-1

FOSTEX NF-1

 設計思想に惚れて購入したのだが,なかなか硬派なヤツで頼もしい。

 基本的にはフォステクスが得意なフルレンジにツイーターを足したスピーカーシステムだが,フルレンジのウーハーにHP振動板というハイパボリックカーブを利用した構造を採用しているのが新しい。 シドニーのオペラハウスの屋根と同じ構造だそうで,直線部分が存在しないため,強度的に優れているということだ。

  また,通常の振動板のように分割振動が発生しにくいため,高域をスムーズに伸ばせるようだ。 エッジにも工夫がされているし,マグネットも強力なモノを搭載している,フォステクスの良心を形にしたようなユニットだ。

 ツイータは通常のソフトドームツイータだが,ウーハーと能率を合せるというユニット専業メーカーならではの仕掛けがしてある。 結果的に,アッテネータ無しでウーハーとツイーターをクロスオーバーさせることに成功している。 できればここに純マグネシウムツイーターを持ってきたいものだ。。

 宣伝文句をもう少し引用すると,,
・ネットワークは単純なほうが良い,だから,コンデンサー1個でつないでいる。
・内部は単線で配線している。
・HPサウンドリフレクタ-で無駄な残響を押えている。
などである。

 もう少し褒め殺すと,ネットワークがシンプルになれば,アンプの負担が減る。 また,ユニット自体の素性がよければ,小細工なしにユニットの特性を100%発揮することができる。 素性の良くないユニットを使用してネットワークで合わせこむようなことをすると,音にまとまりがなくなるだろうし,補正すればするほど位相は乱れてしまうだろう。 また,足り無い部分を足そうとすると歪みが増えたりするので,好ましくない。 そういった面でも,まずユニットありきで,開発を進められるフォステクスの強みが活きていると思う。 つまり,音色的に好ましくなかったらネットワークで調整するのではなくて,ユニットの設計に戻ることができるということだ。


 


NF-1の内部を見てみる

 FOSTEX NF-1内部

  本当に極太の単線で配線されていた。 ツイータも同じ線材だ。

 FOSTEX NF-1内部

 内部の写真 HPサウンドリフレクターなるものが2枚入っている。 内部に発生する音を効果的に吸収して,従来の吸音材よりも格段に残響成分を少なくすることに成功したそうだ。 結果としてエンクロージャー内部の響きがウーハーのコーンを通して漏れ出てくる現象を軽減できるのではないかと考えられる。

 定在波の減衰にも寄与しているはずである。 通常の長方形のエンクロージャーでは対面する面の間に定在波が発生してしまう。 エンクロージャーが小型だと定在波の周波数が高くなり,音色に及ぼす影響が大きくなるだろう。 最近,台形のスピーカーが多いのはこうした理由がある。



 FOSTEX NF-1 ネットワーク

 ネットワークの写真。 本当にコンデンサー一個でつないでいる。 HP振動板は分割振動が起こりにくいので,高域の減衰がスムーズになり,ウーハーにLPFを入れる必要がなくなるとか。

 バスレフポートはかなり長く,チューニング周波数は低めに設定されているようだ。 インピーダンスカーブを見てもそれほどおかしな形をしているわけではないので,決して無理な設計ではない。 NF-1が発売されたあと,低音が出すぎると言う人もいたようだが,今までのニアフィールドモニターの低域がスカスカだったわけで,これが本来の低域バランスだと思う。 もちろん,低域は置き場所に左右されるので,床に置いたり,壁に近づけたりすれば低域が過剰に聞こえるかも知れない。 そういった使いこなしや低域のさば読みを含めてプロ用なのだと思うし,決して鳴らしにくいスピーカーではなく,ポンと置くだけでそれなりに鳴るに違いない。



 FOSTEX NF-1 CSコンデンサに交換

 コンデンサーをFOSTEXのCSコンデンサーに交換。 東一電機が受託生産しているらしこのコンデンサーは,銅箔と錫箔のハイブリッドの箔巻きで,引き出し線が1.0mm位の単線と,NF-1のためにあるようなコンデンサーだ。

 効果のほどは劇的で,シンバル系の粒立ちがはっきりして,しばらくはきつくて聞いていられなかった。 エージングが進んだのか,耳が慣れたのかはわからないが,今はとげとげしさは落ち着いて静けさと背景の描写力がUPしたという印象だ。 唯一のネットワーク構成部品なので,できるだけ良いものを使いたい。 というか,他に交換できる部品が無いというとても寂しいスピーカーなのも事実だ。 コンデンサーの交換は一押しの改造ということにしておこう。 5000円の投資でグっと格が上がる。 もっと複雑なネットワークを組んである製品はいじらないほうが良いと思う。金がかかるし,バランスは崩れるし。 ただケミコンを使用していたり,メタライズドフィルムだったりするのをみると精神衛生上よろしくない。 というか,箔巻きのフィルムコンに交換すると音質が繊細になるだろう。が,高域のバランスは悪くなるかもしれない。。。 後は,ユニットの背面にダンプ材を塗りたくるというのやってみたい。。

 もともとスタジオなどのニアフィールドモニター用に開発されたものなのだが,部品の少なさを考えてもコストパフォーマンスは最高だし,ペア10万でこれだけの音が出るのだからかなり戦略的な製品だと個人的には考えている。しかし,世の中への浸透力はいまいちなんだよな。。。

 これだけうだつが上がらないと,本当は大してよい音はしていないのではないかと自分の耳を疑ってやまない。疑心暗鬼。。



NF-1を逆相接続してみる

 まずはウーハーとツイーターの位相確認した。 確認する場合は正弦波では難しい。 なぜなら音速は案外遅く,10kHzを超えると位相がクルクルと回ってしまうからだ。 そこで,Duty20%ほどの矩形波で位相を確認した。これならば短いパルスの極性を見れば位相は一目瞭然だ。

 続いてステレオの片側だけ逆相にしてみる。 ここで音を聞いてみるのだが,イマイチ違いがハッキリしない。 だから駄耳なのだ。 空間の奥行きと広がりに若干違和感があり,シンバルやウインドチャイムの定位がおかしくなるのはわかった。 しかし,別段気にならなかった。所詮10kHz以上の位相なんてものは数センチ単位でおかしくなってしまうので,パッと聞きではあまり関係ないらしい。 常識から考えると叱られそうだし,だからお前の耳はダメなんだと言われそうだが,実際大して変わらない。

 両方を逆相にしてみる。 実はNF-1は元からウーハーとツイーターが逆相接続になっており,今回リファレンスの接続と逆にしたので,ウーハーとツイーターは同相になった。 マイクを使って位相合わせをした時に実感したのだが,10kHzでは波長が4cmほどなので,マイクの位置が少しずれただけで打ち消しあったり,強め合ったりするポイントが変ってしまう。 これがミリ単位で効いてくる。実際に聞くときに頭の位置をミリ単位で固定するわけにはいかないから厳密なことを考えても仕方ない。

 ところでなんと,同相,逆相共にF特が公開されているのでそれを比較してみた。 黒が出荷時の特性,赤が同相接続(出荷時の逆相)である。

FOSTEX NF-1 逆相接続・同相接続
縮小表示してます。

 5kHzと10kHzにうねりが見えるが,カットオフが10kHzなのでカットオフ以下の帯域で位相が回転してキャンセルしているようだ。 どちらにしてもそんなに差があるとは考えられないが,録音した音を同相で空間に放出するという意味では同相接続の方が気持ちがよい。 むしろ,同相でつないでまともな特性になるように作るべきであるのではないだろうか。

 資料を良くよく読んでみると逆相接続の理由が書いてあった。 逆相のほうが指向性が良いらしい。 逆相接続だと,ツイーターとウーハーの真ん中がフラットになる。正相接続だとツイーターの正面がフラットになる。 そして,逆相接続の方が指向性に暴れが少ないと記述があった。 設置状況に応じて変えてほしいということのようだ。

 これで堂々と正相接続で使える(気分的に)。 真正面で音楽を聞くなんてことはありえないから,それならば同相で空気中に出てきてもらった方が気持ちよい。 指向性を測定する時のF特も所詮正弦波で測定するだろうから位相を考えなければならないが,パルシブナ信号に対する応答は常に音の先頭を合わせる事が重要になる。 測定結果から指向性の乱れを気にするのはわかるが,人間の耳が縦の指向性にそれほどビンカンだとは思わない。 それは資料にも書いてあった。人間は横の位相変化にビンカンだから横置きにはするなと。



 GS1300とGS1302が気になる。 ちとお値段がはる。しかし,HP振動版が世に広まることはよいことだ。

 ツイーターダンピング計画始動!22uF,1.8mH,10Ωで直列共振回路を作り並列ダンパーとする。 コンデンサーによって隔離されたツイータの共振を押さえ込むことで過渡応答がなくなりより安定した動作を実現できる。 予想される効果としては800Hzの付帯音の減少,ツイーター全帯域にわたっての歪みの減少が考えられる。

 詳細は追ってレポート。



ツイーターの共振峰に対するインピーダンス補正をシミュレーションで解析する

FOSTEX NF-1 シミュレーション回路図
図1:シミュレーション回路図

 図1の回路図はNF-1に使用されているツイーターとそっくりな単売ユニット,FOSTEX FT28D のインピーダンス特性を示す等価回路に加えクロスオーバーネットワークに搭載されているコンデンサ(1uF),さらに今回検討する直列共振回路を組み合わせた回路です。 FT28Dの等価回路は定数を調整してFOSTEXが公開しているインピーダンス曲線にあわせました。 この等価回路を使用してインピーダンス特性に現れる共振峰を補正するシミュレーションを行い,どのような効果があるのかを検証しました。


図2:等価回路のインピーダンス特性(縦軸はLOGスケール)

  図2は等価回路のインピーダンス特性です。 共振周波数は850Hz程度で,インピーダンスのPeakはデータからは読みにくいのですが30〜40Ωになるように調整しました。 Qはインピーダンスが16Ωになる周波数を読み取りおおまかに設定しています。 今回のシミュレーションには関係ありませんが,高域のインピーダンス上昇も再現させています。


1,補正後のインピーダンス特性

FOSTEX NF-1 インピーダンス補正
図3:インピーダンス特性
補正無し:縦軸はリニアスケール

FOSTEX NF-1 インピーダンス補正
図4:インピーダンス特性
最適なQを持つ直列共振回路で補正した場合

FOSTEX NF-1 インピーダンス補正
図5:インピーダンス特性
Qが大きな直列共振回路で補正した場合

FOSTEX NF-1 インピーダンス補正
図6:インピーダンス特性
Qが小さな直列共振回路で補正した場合

  図3〜6は各条件でのツイーター裸のインピーダンス特性です。 直列共振回路のQを変化させると補正の具合が変化します。。 スピーカの等価回路が持つQにできるだけ近いQで補正をかけると上手に補正できることがわかりました。 また,直列共振回路の共振峰の深さは8オームに近くすることで滑らかな補正カーブになります。


2,ネットワーク込みでのインピーダンス特性

FOSTEX NF-1 インピーダンス補正
図7:ネットワークのHPF・1uFを挿入した状態でアンプ側から見たインピーダンス

  図7はネットワークのHPFコンデンサ1uFを挿入した状態でアンプ側からみたインピーダンス特性です。 赤いラインが補正前の特性ですが,補正前は若干うねりがあるもののほとんど差が見えません。 NF-1はツイーターのカットオフ周波数が例外的に高く,20kHz付近にFcがあるため,元々ツイータのインピーダンスの盛り上がりは影響が少なくなっています。 845Hzの共振周波数に対して20kHzなので共振周波数に対して24倍もの高いFcでつないでいます。 通常の2Wayでは2k〜8kHz程度にカットオフを持ってきます。 Fcは共振周波数の2倍以上がよいといわれますが,4倍以上でつなぐのが無難と思います。 低い周波数でつなぐ場合は6dB/octでは特性的に満足できないので,12dB/octか18dB/octでつなぐ必要が出てくると思います。 そうなるとネットワーク素子が増えて音質を変化させる要素が増えてしまいます。 NF-1の場合はFcが高く,HPFのコンデンサーのインピーダンスが高いので,アンプ側からは補正の効果がほとんど見えないということになります。 元々インピーダンスのピークの影響は少ないとも言えます。

  ではインピーダンス補正を行なう意味はないのでしょうか? そうではありません。ここでわかった重要なことは,インピーダンス補正の有無がアンプの負荷特性には影響しないと言うことです。 共振峰を抑えるインピーダンス補正は「1uFのコンデンサー」という障壁の向こう側でのみ補正の効果があります。 最初に述べたとおり,コンデンサーという障壁のおかげでツイーターはダンピングかかからず自由奔放な状態にあります。 アンプでは制御できない,手の届かない状態にあるということです。 インピーダンス補正の効果は次に行なうステップ応答の解析によって知る事ができました。


3,ステップ入力に対する電圧応答

FOSTEX NF-1 インピーダンス補正
図8:ネットワークの1uFを挿入した状態で等価回路の電圧Step応答
最適なQをもつ直列共振回路で補正:茶色のライン(グレーのラインは補正無し)

FOSTEX NF-1 インピーダンス補正
図9:ネットワークの1uFを挿入した状態で等価回路の電圧Step応答
Qが大きな直列共振回路で補正:茶色のライン(グレーのラインは補正無し)

FOSTEX NF-1 インピーダンス補正
図10:ネットワークの1uFを挿入した状態で等価回路の電圧Step応答
Qが小さな直列共振回路で補正:茶色のライン(グレーのラインは補正無し)

  共振峰に対するインピーダンス補正を正しいQで行なうことによってステップ入力後の過渡応答がなくなっています。 グレーのラインは補正無しの場合ですが,1Vのステップ応答に足して25mVくらいの減衰振動が見られます。 この振動は外乱によって注入されたエネルギーの逃げ場がなくなり共振することによって発生しています。 例えればブランコに石をぶつけるようなものです。 直列共振回路を取り付けて最適にダンピングすることによって,外乱によって注入されたエネルギーを効率よく吸収して,共振による振動板の暴れを抑制する事ができることになります。 また,直列共振回路のQが変化すると応答も変化します。 最適なQを選ぶことによってステップ応答に対して理想的な減衰を得る事ができます。

  シミュレーション波形は電圧ですが駆動電流を見てみると,直列共振回路を挿入してインピーダンス補正を行なうと電流の過渡応答は逆に大きくなります。 一見すると逆効果のように見えます。しかし,この電流が振動板の余計な動きを抑制しています。 最初はダンピングが効いていないのかと焦りましたが,電流ではなく電圧を測定してみると見事にダンプされている事がわかりました。

  スピーカーは本質的に電圧で制御するデバイスであり,印可される電圧に比例した音圧が発生するという設計で作られています。 ですので電圧の応答で振動板を動きを知る事ができると考えられます。 つまり,振動板の余計な動きによって発生する逆起電力を抑えてるために余分な電流が流れていると考える事ができます。


  1Vのステップ応答に対して25mVくらいの減衰振動が見られるとすると,このスピーカにステップ応答を入力した場合,845Hzの音が入力の1/40の振幅で数msec発生することになります。 100dBのS/Nを云々する音響機器にとって1/40=32dBは大きいと思います。 NF-1のF特を見ると2次歪みが900Hz付近で盛り上がっています。 もしかすると共振峰を抑えることによってこの盛り上がりが消えるかもしれません。。。


ツイータのインピーダンス補正実践

 機械的共振によるインピーダンスの盛り上がりを補正してやることによって,ツイータの音質向上を図る事ができるのではないか,という趣旨で進めてきた今回の企画ですが,実践して見ました。

 そもそも,機械系の振動というものは電気回路でシミュレートできます。 つまり,振動している機械系の振動を抑えるのに電気回路を使用して振動を抑える事ができるということです。 もちろん,電磁誘導という物理現象が電気と力学的運動を結び付けている事が前提になります。

 まず,スピーカを振動板とエッジで構成された振動系と考えます。 この振動系は共振周波数を持ちます。 スピーカのインピーダンス特性に見られる盛り上がりがこの共振です。 共振点を持つ以上,この共振周波数では過渡応答が見られます。いわゆるリンギングというやつです。 このリンギングを最小限に抑えるためには低いインピーダンスで駆動してやる必要があります。 駆動インピーダンスが低いということは共振を抑え込む力が強いと言うことですので,共振は押さえ込まれます。 ウーハーの場合は出力インピーダンスの低いアンプで駆動してやればそれだけ共振が押さえ込まれることになります。それは一般的にダンピングファクタが高いということです。

 さて,ツイータの場合を真面目に考えましょう。 ツイータも共振周波数を持ちます。 ツイータにパルスを加えたり指ではじいたりすると(普通は壊れるのでしませんが)共振周波数で揺れます。 もし,出力インピーダンスの低いアンプに接続されていたり,12dB/octのネットワークのようにコイルが接続されているなど,スピーカー端子の両端が低インピーダンスでショートされていれば共振は抑え込まれます。 NF-1のような6dB/octでクロスオーバするスピーカはツイーターの入力にコンデンサーが接続されています。 ツイータ側から見たアンプの出力インピーダンスは低域になるにつれて上昇し,直流では無限大になります。 この状態では,共振をダンピングする要素はありません。

 共振をダンピングしていない状態では振動板は共振周波数で常にフラフラと振動することになります 磁気ギャップの中央に収まらず,常にフラフラしていると言うことです。 これは音質上好ましいことではありません。 ギャップ位置によって磁力が異なります。つまり非線形性を持ちます。共振周波数で常に揺れているという事は振幅変調がかかることになります。

 共振を抑えるためにはツイータと並列に,これまた共振回路を設置してやれば効率的に過渡応答を吸収してくれます。 インピーダンス特性をフラットにする事ができれば理想的な応答特性を実現できます。

 さて,前置きがすごーく長くなりました。

 22uFのバイポーラケミコンと1.8mHのコア入りのコイル,8Ωのセメント抵抗,以上を2個づつ購入して1500円くらいでした。 これでインピーダンスの共振峰をキャンセルする事ができます。

  F = 1/2πsqrt(L*C) = 1/2π(22E-6*18E-4)^0.5 = 800[Hz]

 共振周波数はL*Cで調整できます。できれば20uFにしたいですね。 底のインピーダンスは8Ωが支配的です。これはツイータのインピーダンスにあわせます。 共振のQは L * C = 一定 の条件下でLとCの値を変化させて調整します。

 FOSTEX NF-1 インピーダンス補正回路

 効果の程は目覚しいものでした。 聞き比べないとわからないと思っていたので,最初に共振回路無しで3分ほど聞きました。 つづいて共振回路を接続してCDの同じ部分を再生したところ,ビックリ。 ツイータの能率が上がったように感じました。 シンバルの粒立ちがよく,トランペットなどの解像度も増しています。 何よりも背景の描写力が高まり,緻密な音になりました。 バランスはいっけん高域に寄ったように思いましたが,解像度が上がると最低域にまで意識が回るようになり,今まで聞こえなかった超低域の存在に気付いたりしました。

 ということで効果は絶大です。通過する電力はたいしたことがないので特に高い部品を使う必要もありません。 スピーカ端子と並列に安い部品でつくった共振回路を入れるだけで十分に機能します。 ただし一点だけ注意しなければならないのは,どこに共振回路を挿入するかという点です。 ツイーターの端子間に直接補正回路を接続しなければなりません。 アンプとクロスオーバーネットワークの間に入れても意味はありません。ですから,裏蓋をはずして作業する必要があります。

 「ビヨンド・ザ・キャパシター」その先では意外な事が起きていたようです。

 また最後になりますが,12dB/octのネットワークではツイータに並列にコイルが入るので共振峰がダンプされます。共振峰に対してインピーダンス補正を行なってもそれほど効果は大きくないと思います。


FT28Dのインピーダンス特性実測

FOSTEX NF-1 インピーダンス補正・実測
図10:FT28D Impedance Responce 実測

 インピーダンス特性を実測しました。測定方法を簡単に説明します。

 パワーアンプ出力にRを挿入してスピーカを接続します。

 AMP-----R-----Speaker-----GND

 R : 抵抗1k〜10kΩ
 Speaker : 被測定スピーカ
 Va : アンプの出力電圧
 Vs : スピーカ端の電圧
 Z : スピーカインピーダンス

 Vs = Z / ( Z + R ) x Va
 Vs x ( Z + R ) = Z x Va
 Vs x R = Z x ( Va - Vs )
 Z = R x Vs / ( Va - Vs )

 実測ではfsはカタログよりも若干高く,1.1kHz付近にありました。 おかげで共振周波数を800Hz付近に設定したLC共振器を取り付けると800Hz付近のインピーダンスが若干下がりすぎます。 共振周波数を高くするためにはCを小さくするのが一番手っ取り早いです。Cは10uFが適当です。

 ちょいと疲れたのでここまで。(2007-10-29)


 ダンピング用のコンデンサを10uFにすると共振周波数を1kHz程度にすることができます。 BENNICという銘柄のコンデンサーにしてみました。10uF DC250V耐圧で500円以下というお買い得なコンデンサーです。 22uFを購入しようとしていたときは品切れで,オーダーしても入荷が数ヶ月ないということであきらめかけていたのですが, 10uFは在庫がありました。昨日見た感じでは22uFも在庫がありました。やっとこ入荷したようです。 最近は中国他,東南アジアの部品がかなり流通しています。見たこともないブランドのコンデンサをよく見かけます。 しかしながら高耐圧のコンデンサーなどはちょっと遣う気になりません。パンクしたりしたらダメージが大きいです(精神的に)。('07,11/12)

インピーダンスの実測は後日改めて。ツイータのインピーダンスも動作環境(温度など)によって変動するようです。 まあ,でもクロスオーバー周波数の10kHzに対して共振周波数は1kHzなので問題になることはないでしょう。 Qを小さめにしたほうがよいのかもね。


スピーカーの終端について

 スピーカのボイスコイルはまさにコイルです。 インピーダンス特性を見ればわかるとおり,高周波になればなるほどインピーダンスが上昇するインダクタンス成分を持っています。 通常のスピーカのインピーダース特性は20kHz〜50kHzくらいまでしか表示されていません。 しかし,コイルである以上はある周波数(数MHzくらいか)で浮遊容量との共振点を持ち,それ以上高い周波数ではインピーダンスは低下してくると考えられます。 パワーアンプの高域特性が素直ならば何ら問題ありませんが,このようなインピーダンスが変動する負荷は駆動しにくいものです。 発振したり,リンギング発生したりすることが考えられます。 スピーカケーブルがアンテナになるというのは考えにくいですが,ありえないことではありません。 あるサイトでスピーカーとスピーカケーブルのインピーダンスを整合するべしという趣旨の内容がありました。 つまり,アンプからスピーカーまでの線路全体にわたってインピーダンスを整合すべきという意見です。 このサイトは10MHzくらいまでレスポンスがあるパワーアンプを作っている人のサイトです。

  わたしのスピーカーはバイワイアリングになっています。 ウーハーに使っているスピーカケーブルの特性インピーダンスは分かりません。 ツイータに使っているのはLANケーブルの中身なので特性インピーダンスは100Ωです。 とりあえず100Ωで終端してみることにしました。 この終端は高周波に対するものなのでスピーカユニットに近くないと意味がないそうです。 理想的にはユニットの端子に接続します。

 効果のほどは,すぐにわかりました。。 いままではなんとなくきつかった高域がまろやかになり,低域のダンピングも良くなったように思います。 解像度が高いので高域がきつく感じるのだろうと思っていたのは間違いで,一見まろやかですが,とても精細です。 今までの音はエッジを強調するような不自然な音であったことがわかりました。 また,音声帯域,人の声の帯域が一歩前に出て,リアリティが増しました。 低域のダンピングも良くなったのか,自然に量感がアップしたようで,バスドラなどの低音がビッシっと決まります。 よく言われる,音階の見える低音に近づいたと思います。

 大音量を出すとダンピング抵抗での消費電力が気になりますが,小音量ならばその心配はありません。 100W/8Ωクラスのアンプで全力運転することを考えると50Ωの抵抗は16Wの熱を消費します。 100W全力運転という状態はロックのライブをPAをしている状態と考えれば良いと思います。そんなイメージです。 可聴域外の高域も聴感上の雰囲気などに影響を及ぼすといわれますが,今回の小改造はもっと説得力がありました。 高周波でインピーダンスが上昇するのはあたりまえです。インピーダンスのねじれがあるところには不安定性が内在します。 こんな簡単ことでも音質が向上してしまうというのはある意味脅威と感じました。 それだけ高周波の影響はおおきいということでしょう。 (2008-01-19)


 ケーブルの特性インピーダンスは,ある周波数以上ではインピーダンスが一定の値に漸近していきます。 しかし,ある周波数以下では単調に上昇していきます。 この周波数はケーブルの構造によって変わるものと考えられます。 この周波数は100kHz近辺にあるようです。それ以上の周波数はもはや高周波と言ってもよいわけです。 他には,「表皮効果」「絶縁体の誘電率の周波数依存性」などが聴感上の違いにつながってくるといわれているようです。 つまり,より線,単線の違い,表面のメッキ,導体の配置,絶縁材に何を使用しているか,厚みはどの程度かといった要素で音が変わってくるということです。 可聴域の信号を高周波として考えるか,直流として考えるかなかなか難しい。(2008-01-25)


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