チョイラボその1

ダイオードのリカバリ特性


ショットキーバリアはどの程度速いか?

コンセントから供給されるのは交流です。これを直流に変換するのが整流回路です。整流回路の主役はダイオードです。 ダイオードという名称は昔から使われており,真空管の一種である整流管もダイオードと呼ばれることがあります。 機能としては,「行きはよいよい,帰りはとうりゃんせ」です。電流を流せる方向が決まっていて,逆には流れないという働きがあります。

さて,整流器にはどういった種類があるのでしょうか?
ギターアンプを考えると一般的には2種類に区別できます。
 ・2極真空管(整流管)
 ・シリコンダイオード

さらにシリコンダイオードは一般的な整流用ダイオードだけでなく以下のような種類があります。
 ・ファーストリカバリダイオード
 ・ローロスダイオード
 ・ショットキーバリアダイオード

ファーストリカバリは逆回復時間を短くしたものです。ローロスダイオードは順方向電圧が小さくて効率が良いものです。 ショットキーバリアダイオードはpn接合ではなく,金属とシリコンの接合を利用したダイオードで,順方向電圧が小さく,逆回復時間が存在しないという特徴があります。

最近,ショットキーバリアダイオード(SBD)は音が良いといわれています。 一方,真空管整流も音が良いといわれています。 共通点は何でしょうか?共通点はシリコンダイオードに存在する逆回復時間が存在しないということです。

逆回復時間とはpn接合を用いたシリコンダイオード特有の現象で,pn接合周辺に存在する電子を運ぶ役目であるキャリアが抜けるまでの時間のことを言います。 ダイオードがON状態で電流が流れている状態からOFF状態で電流が流れなくなる状態に遷移する際,キャリアが移動して抜けきるまでの間,通常流れないはずの逆方向の電流が一瞬流れます。 この一瞬流れる電流がスパイク状のノイズとなり,電源を汚してしまいます。

スパイク状のノイズは大変広い周波数スペクトルをもち,広帯域ノイズ源としてあちこちに伝播します。 このノイズが音質上好ましくないとするとシリコン整流は音が悪いという定説にもうなずけます。

SBDを真空管アンプにも使いたいのですが,SBDは耐圧が低いためそのままでは使えません。 また,SBDは逆バイアスを印加した時の漏れ電流が多いという問題があり,発熱に注意する必要があります。 真空管アンプ用のSBDも市販されていますが高い!!数千円します。 実は,今作ろうとしている真空管アンプにSBDを載せるべく検討しています。 ちょっとした工夫をするとSBDの恩恵にあずかれそうです。 そこでSBDを買い出しに行きました。買ったものは日本インター 31DQ10,STMicro 1N5821 の2種類です。 新電元のブリッヂダイオード S4VB60 も買ってきました。これは普通のシリコンダイオードです。

さて,SBDにはスペックとしてスイッチング時間を表示してあるものもありますが,ふつうは仕様書に記載されていません。 買ってきたSBDのスイッチング時間を測ってみようというのが今回の企画です。


 回路は超簡単。お気楽です。FGにダイオードを接続して50Ωで終端します。以上。 入力は5Vの方形波です。終端を解放にした場合,振幅は2倍になりますので0Vを基準にマイナス5V〜プラス5Vまでスイングします。 観測点は矢印の位置です。測定方法はいろいろあるようですが,単純に性能を比較したいだけなのでこれで十分と判断しました。



これが一般的な整流用ダイオードの特性です。パルスの立下りがマイナスへ突入しています。 この期間が逆回復時間です。このダイオードでは約8usec程度です。 ファーストリカバリダイオードでは1usec以下のものが多いのです。



これは日本インターの31DQ10の特性です。横軸は40nsec/divです。 約60nsecで静定しています。なべ底型の逆回復時間は見られません。



これはSTMicroの1N5821の特性です。横軸は40nsec/divです。 約90nsecで静定しています。リンギングが若干大きいようです。


この企画は唐突に終わります。以上です。


参考までに入力波形です。終端を解放しているので10Vp-pの振幅が出ています。また,解放なのでリンギングも見えています。


横軸は10usec/div
横軸は40nsec/div



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