チョイラボその3

いわゆる”スムーステーパーボリューム”について


スムーステーパーとは?

スムーステーパーボリュームとはヒューマンギアの商品名でしょう。 テクニックとしては一般的で今どきはどんなギターにも搭載されていると思うのだが。 ボリュームを絞ってもトーンが変化しないというのが売り文句だ。

ポイントはシールド・ケーブルの容量とピック・アップのインダクタンス。コレが共振してエレキギターらしい音色を作ってます。

そういう意味ではケーブル・コンペンセイト・ボリュームという名前がいいんじゃないかと思ったりして。 いやいやそれはただの名前の問題。

コンデンサーは500p〜1000pFくらい。要するに普段使っているシールド・ケーブルの静電容量に合わせればいい。 一般的なシールド・ケーブルの静電容量は大体ざっくり150pF/mくらいで,3mなら450pF,5mなら750pFなので,トータルで500pF〜1000pFくらいです。 わたしは1000pFにしてみました。

補正用に取り付ける抵抗はシングルコイルは220kくらいです。 ハムバッカの場合はまた少し事情が違うようです。後述します。


スムーステーパーボリュームのシミュレーション回路

シミュレーションに使った回路です。

・ピックアップのL分は4H(仮)Rは10k(仮)Rはちょっと大きいめふつうは6k〜8kかな。
・POTは250k(自分のギターはストラトなので)
・ピックアップ自身の浮遊容量は無視
・ギター内の配線抵抗・容量は無視
・接続機器の入力インピーダンスは1MegΩ,入力容量は無視
・シールドケーブルの浮遊容量は1000pを基本とする・L分とR分は無視
・トーンコントロール回路は影響がないわけじゃないけどあんまり関係ないので無視

ボリュームの位置を変化させて各ポジションで周波数応答を見てみました。


スムーステーパーボリューム無しのF特

まず,補正無しの場合。

一番の上の線。これがボリューム全開の時。 ピックアップのインダクタンスとシールドの容量で共振が発生し,ピークが発生している。 このピークがエレキギターらしい音を演出しているが。

補正なしの場合,VOLUMEを絞るとピークが消えてなくなり,すぐに高域が減衰する。 こりゃあダメだ使い物にならない。


スムーステーパーボリューム有りのF特


補正用のコンデンサーを1000pF,補正抵抗を250kΩとした場合。 Peakが一瞬高いほうへ振られるが絞った状態でも見事に同じ位置にPeakが来る。 すばらしい!できる!ということで早速自分のストラトを改造。 なんだか新しいギターに生まれ変わったみたいだ。最新のギターは全部コレが入ってるんだろうな〜


補正用の抵抗値を大きくするとPeakが高くなる。小さくするとPeakが低くなる。ボリュームカーブも変わります。抵抗値が小さい方がカーブが緩やかになります。 コンデンサーの容量はPeakの位置を決めるので,普段使っているシールドの容量に合わせると違和感が少ないと思います。

ちなみにストラトのPUのインダクタンスは2.3Hくらいだそうです(ビル・ローレンスのサイトより)。 手持ちのテキサススペシャルは3Hくらいでした。テレからP-90までみると2〜6Hくらいの範囲になりそう。


今回わかったこと,シールドもエレキギターの音を決める一部ということです。 キラキラ,パキパキしすぎるときは容量の大きいケーブルを使えば落ち着いてくる。 逆に10mとか引き回す場合は低容量のケーブルにしないとハイ落ちするし,ピークの周波数が落ちてくる。

あと,トーンコンデンサーを2000pFとか4700pFに交換するとMID BOOST的に使えると思われる。 パッシブのMID BOOSTというものが世の中に存在するらしいが,そんな仕掛けなんだろう。 古いコンデンサーはトーンを絞ったときにミッドが膨らむなんていうことがあるらしいが,それは容量抜けを起こしたコンデンサーを使っているからということもできるだろう。

以前,トーンコンデンサーを色々と試してみたときの結論は「トーンの変化は容量で決まる」だった。 納得。

以上


補足:シングルの場合は250kとしたが,アンプの入力インピーダンス1Megがあるので,これを考慮すべき。 具体的にはシングルは150k〜220kがよいような気がする。

現状ストラトは220kでやっているが確かにちょっと効きすぎている気がする。コンデンサの容量を減らすか,補正抵抗値を減らすがよかろう。耳で合わせよう。

ハムバッカーの場合は補正抵抗は470kかもしくは抵抗無し。そしてコンデンサーも小さめで(100pF〜330pF)とかでよさそう。 コンデンサの容量を大きくする場合は補正抵抗を小さめにした方がベター。


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