ギターアンプ用の配線材の音質を比較してみる


趣旨

どんな配線材を使うのかという悩みがなぜか尽きない。

最初に作ったアンプはLC-OFCを使った。
次に作ったアンプはBELDENのテフロン被覆線を使った。
その次に使ったアンプはIV単線とビーメックスを使った。
その次に作ったアンプはLANケーブルの中身を使った。
その次に作ったアンプはフェンダーで使われていたという綿巻線を使った。
その次に作ったアンプはMOGAMIの2514を使った。

線材で音が変わるのかどうか確かめたことは無く,なんとなくよさ気な線材をそのつど選んで使ってきた。

「比較してみましょう」というのが今回の趣旨です。

20120507:2種追加しました。


環境

古今東西6種類の線材を用意した。

用意したそれぞれの配線材にスイッチクラフトのフォーンプラグを取り付ける。
配線材はGND,HOTにそれぞれ1本ずつ使用する。長さは2メートル。2本はかるく撚り合わせてツイストペア状態にする。
エレキギターとアンプ間をシールド無しのツイストペアケーブルで接続する。

アンプは自作「Over Drive Special +Singer 60s」真空管はいつもの組み合わせ。設定もいつもの設定。(PRS12時)
主にストラトのリアピックアップ(トーンコントロールは効く状態に改造している)。ピックアップはFENDER TEXAS SPECIALを搭載。
負荷容量は配線容量+150pF(音色を安定化させるためにギターのボリュームポットに銅箔スチコンを入れている)。

シールド無しなので,エアコンを入れるとノイズが乗るが,エアコンを切れば気にならない。
秋口で涼しくなってきたので快適に比較作業ができた。

pF単位で計測できるハンディマルチメータでGND-HOT間の静電容量を測定。


評価項目

漠然と感想を述べてもよくわからないので項目を挙げて比較する。まあ適当ですが。

キレイ繊細さふとさガッツイタさ
コードの分離感
中域の見通し
ピッキングニュアンス
タッチレスポンス
ミドルの太さ
単音の存在感
巻き弦の反応
パンチ
高域の抜け
耳に痛い成分

結果

20130203容量を測定しなおした。
クロスレプリカの容量がずいぶん少なくなったな・・・おかしい・・・こんなつもりじゃ・・・

ワイアGAUGE静電容量
pF/m
キレイ繊細さふとさガッツイタさComment
WE Enamel Solid
Black/Red
20AWG146pF 53.3pF/mギラギラしている
WE Enamel Solid
Yellow/Green
20AWG105pF 47.1pF/mまとまりがよい
GAVITT Stranded22AWG
7x30AWG
122pF 49.9pF/m巻き弦のガツンがいい
MOGAMI 2514≒20AWG
19x0.18mm
102pF 48.3pF/m全帯域にストレスが無い,見通しが良い
BELDEN 850322AWG
7x30AWG
142pF 60pF/m曇った感じ,バランスが良い
Cloth Covered Wire22AWG
7x30AWG
208pF 52.9pF/m曇った感じ,太く,柔らかい
20120507追加分
LAN Cable CAT5
Star Quad
2x24AWG
7x32AWG
300pF 140pF/mジャキっとしてブライト
TEFLON Stranded
Twisted Pair
24AWG
19x38AWG
110pF 48.6pF/m意外とふつう,やや柔らかい

△:がんばろう,よわい
○:ふつう,中庸
◎:よい,強い


左から,CLOTH WIRE,BELDEN,MOGAMI,GAVITT,WE黄,WE黒


総評

ウエスタン(WE)はどちらも単線だけに抜けがよい。
黒色被覆はよりギラギラしているのにくらべ黄色被覆はコンプをかけたようなまとまりがある。
どちらもいわゆる「ブラックエナメル」であるが,コレだけ違うと別物といってよかろう。

撚り線はMOGAMIを除き少しもやっとした感触。
GAVITTEとBELDENは非常に質感が近い。
あえて差を指摘すると,GAVITTEは巻き弦のガツっとした感じがよくでる。そしてBELDENの方がやや曇る。

クロスワイアは最も太く,ディテールを省略したダンゴ的な表現となる。その代わりミドルが厚くまとまりはよい。

MOGAMIは全帯域にハリがあり,見通しがよい。解像度がよいと感じた。

20120507:2種追加

LAN Cable CAT5 Star QuadはMOGAMIをジャキっとし感じで,明るさが足される。
案外容量が多いが,スターカッド撚りにしているせいだと思う。たぶん単純なツイストペアの2倍くらいになっている。
ここまで容量が多いと,ケーブルの容量とピックアップの共振によって生じるピークの変化が大きくなってしまうので,音が違うと感じるのは当然かもしれない。

TEFLON Strandedは意外とふつう。MOGAMIと比べるとやや柔らかい感触だが,濁る感じではない。
細い銀メッキ線の撚り線なのでビビッドな音を期待していたのだがやや肩透かしを食らった感が否めない。


配線材を交換したときの音色の変化は抵抗器を交換したときと同じくらいで大きくは無いが,全帯域に対して支配的に効いてくるように感じた。

ただし,使う場所に応じて音色の変化が異なるとも考えられる。
スピーカーケーブルに適している線材,高圧配線に適している線材,ハイインピーダンス配線に適している線材。
それぞれ求められる性能が異なるように思える。

つまり,今回はギターとアンプを接続するシールド線の置き換えとして比較したが,別の用途で比較すれば別の評価が出てくると考えている。

ギターアンプにおける音色に対する各要素の影響度をイメージするとこんな感じ。

回路設計 >> 回路定数 >> 真空管(管種) > 真空管(メーカー)= トランス > コンデンサ > 線材 = 抵抗器

音色比較以前に一番大切なのは,正しく動作していて音圧があり,ノイズが少ないこと。


背景

線材による差はあまり感じたことはないのだが,情報を集めていくうちに傾向が分かってきたような気がした。

単線のほうがベクトルが明確で立ち上がり速く元気な音だが音調は単調な傾向。
撚り線はもっさり感が特徴で曇った感じになるが,音調は複雑になる傾向。

メッキがあると高域に癖が出る。
裸銅のほうが自然になる。

というような傾向から,ここ5年くらいは裸銅の7芯撚り線が良いと考えていた。身近なモノとしてはLANケーブルの中身が該当する。 著名なメーカーが特性を保障して作っているだけあって,品質は十分で皮膜との導体の密着度などはしっかりしている。 しかし,やや細いこと,熱に弱いこと,そして最近のより広帯域な「カテゴリー何とか」は単線であることが残念だった。

7芯は同心撚りと呼ばれており,幾何学的にバランスが取れていて無駄な遊びの余地がない。 単線の特徴と撚り線の特徴を兼ね揃えていると考えている。

MOGAMIの2514は19芯だが,19芯は7芯と同様に同心撚りである。 7芯撚りは6角形だがその周りに12本の線材が配置され追加され幾何学的にキレイに収まる。

といった「知識?」「愚かな推測?」を元に配線材の選択を行ってきたが,やはり実際の違いが気になる。 ということで,今回代表的な線材を集めて比較してみた。



線材6種の紹介+2種追加(20120507)

ビンテージ線材は3種類調達した。

■WEのAWG20,エナメル単線
有名ないわゆる「ブラックエナメル」と呼ばれるもの。
「WE」とは「Western Electric」の略だ。「神」である(^^)。何人たりとも冒涜することは許されない。
つまりは古き良きアメリカの最先端企業なのだ。優秀な人材と豊富な資金をつぎ込んで電話,通信,映画,軍用などの機器を作っていた。

銅の単線に黒くザラっとしたエナメル塗装がされており,絹(シルク)巻きの上に綿(コットン)で編み上げている。
硬く張りがあるのが特徴かと思われる。被覆の綿巻きも非常に硬い。
綿巻きの仕上げには編み上げ(Braid)と横巻き(Spiral)があるようだ。
横巻きはほつれやすく処理が難しい。

今回は赤黒の2色組みと赤系黄系の4色組みの2種類を入手し比較した。
「黒」は銅の上に銀色のメッキがかけられ,その上にエナメルがかけられている。 エナメルの質感はザラっとしている。
「黄」は銅の上に直接エナメルがかけられている。エナメルの質感はつるっとしている。

■GAVITTのAWG22撚り線。布被覆
「GAVITT」はアメリカのメーカーらしい。ビンテージ線材としては結構名が通っている。名前がヘンだよね。
今回はAWG22の撚り線を調達した。7芯の導体はメッキされており,周囲を樹脂の被覆が覆い,その外側は綿で編み上げられている。
綿巻の表面はわりとつややか。ラッカーコーティングされているのかも知れない。撚り線なので全体にしなやか。

ビンテージ線材は素材の組成が違うとかエージングされているとかそんな噂があるが,真相はいかに。

さて,現行の線材としては・・・

■MOGAMIの2514
MOGAMIは日本のメーカー。特殊な電線を得意とするみたい。
オーディオ用でも他のメーカーのように値段だけ高いのではなく,常識的な価格で質実剛健な線材を作る。
「2514」は機器内配線,スピーカーの配線などに向けたもの。太さは大体AWG20に相当する。
導体は19本の裸銅で構成されている。被覆は見た目からポリエチレン系かと思われるが詳細は不明。
樹脂を着色する顔料が音を悪くするという「噂」があり,今回は無着色のものを調達。

■BELDENの8503
BELDENはアメリカの老舗電線屋。電源コードから光ファイバまでとても幅広ラインナップをもつ。
「8503」は真空管アンプやギター用の配線材として最も一般的な配線材として知られる。
AWG22の7芯同心撚りである。導体は錫メッキされているのが特徴であるが,コレは,耐久性を第一に考えるが故であるという。
裸銅は案外厄介で,中途半端な被覆と組み合わせて長期間使用すると銅が腐食してくる。
8503はPVC皮膜だが不思議と剥がしやすく,配線時の据わりも良い。

■クロスワイアー
フェンダーのギターの配線,ピックアップのリード線として使われているのが有名。
フェンダーに供給していたという謳い文句のワイアーを調達した。
AWG22の同心撚りだが,7本の導体がハンダで固められているのが特徴。
綿の被覆は2重になっていて,「プッシュバック」とよばれ,被覆を剥く必要がない。
表面はワックスがかかっておりしなやか。バラケにくくしなやかで配線しやすい。据わりも良い。

20120507:2種追加

■LAN Cable CAT5 Star Quad
CAT5のLANケーブルをばらして中身のツイステッド・ペア・ケーブルを取り出して使用する。
LANケーブルはツイスト・ペアが4対(4色)組み合わせれている。4対それぞれ撚りピッチが異なるので,微妙に音も違うかもしれない(笑)。今回は茶色を使用した。
導体は24AWG程度の太さがあり,7本の裸銅で構成されている。CAT6は単線になる。ギター用なのでわざわざ撚り線を選んでいる。
高周波を通すのでインピーダンス管理されており,100Ωになるように設計されている。また,線間容量も少ないと思われる。
今回はさらに4本により合わせてスター・カッド(Star Quad)接続とした。電磁波のキャンセル効果を期待している。
4本撚り合せると結構太くなるがアンプ内を引き回すにはちょうど良い太さ。
被覆はポリエチレンだと思うが,被覆が薄いこともあり熱に弱いので半田付け時には注意が必要。

■TEFLON Stranded
銀メッキの細い銅線が19本撚り合されている。通常の銀メッキテフロン線は7本の撚り合せが多いがこれは19本だ。
仕上がり径は24AWG程度なので銅線ひとつひとつは結構細い。
2本の線材がツイステッド・ペアになっており,ほつれないように被覆同士が接着(融着)されている。被覆の色は黄色と黒。
被覆はテフロンなので硬いが細い撚り線なので取り回しは難しくない。
現在同様の線材は入手難。


配線材の静電容量がギターの音色に与える影響

静電容量,つまりキャパシタンスで,コンデンサーということ。 2本の線材が平行に走っていると,その線材間に寄生容量が発生する。

静電容量は被覆の素材と厚さによって決まってくる。 あとは撚りピッチもやや影響がある。静電容量が大きいとハイ落ちの原因となる。

エレキギターのピックアップ出力を直接接続する場合,負荷容量の違いが音色に影響を及ぼす。 ピックアップのインダクタンスと負荷容量で起こる共振周波数が変化して,ハイのぎらついた部分のニュアンスが微妙に違ってくる。

クロスワイアーは容量が多いのでアンプ内,ギター内を問わずに多用する場合は注意が必要。

今回はギター内部に150pFのコンデンサを入れているためか配線容量の差による音色変化は少ないと感じた。


その他,音色に影響がありそうな要素を列挙(20120507改変)

■銅の純度
→体積低効率(DCR)が違ってくる(それだけ?)
→素材の製造方法の違い
→PCOCC(結晶状態も違う?)
→OFC
→6N,7N
→タフピッチ銅

■表皮効果
→高周波のロスの原因
→リッツ線
→ロープ撚り
→リボン導体

■線間容量
→高周波の減衰(LPF効果)
→アンプにとっての容量性負荷
→誘電率の周波数特性(低域の質感)
→低容量線
→高発泡絶縁体
→架橋ポリエチレン
→空気絶縁
→導体構成(2線間の距離が離れれば容量が減る)

■絶縁体
→誘電率(線間容量)
→テフロン
→ポリエチレン
→塩化ビニル(PVC)
→ゴム
→シリコン
→絹
→綿

■振動によるトライボ(Tribo)効果
→「トリボ」とは読まない
→ケーブルを曲げたり踏んだりすることによるノイズの発生(色づけ)
→摩擦起電力
→帯電系列
→半導体層,導電ビニール

■振動による容量変化
→静電容量の変化によるノイズの発生(色づけ)
→コンデンサーマイクの原理
→ピエゾ(圧電)効果もあるかもしれない

■撚りかた
→単線
→同心撚り,7芯,19芯
→集合撚り
→異径集合

■導体
→銅(広く普及)
→銀(体積抵抗が低い)
→金(腐食に強い)
→アルミ(軽い)
→鉄(丈夫)

■メッキ
→錫メッキ(広く普及)
→銀メッキ(半田付け性がよい)
→金メッキ(腐食に強い)
→亜鉛メッキ(腐食に強いとか?)
→ニッケルメッキ(丈夫,金メッキの下地)
→鉄メッキ(丈夫とか?)

■銅合金
→銅+錫:青銅
→銅+ニッケル:白銅
→銅+亜鉛:黄銅
→銅+ベリリウム:バネ
→銅+カドミウム:硬くなるらしいが有毒
→不純物,鉛,ビスマス,鉄,アルミ,ケイ素など
→Rohs規制
→みんなが大好きなビンテージ銅線の組成は?

■特性インピーダンス
→50Ω,75Ω,100Ω(ツイステッド・ペアの差動配線)
→同軸ケーブル
→ツイスト・ペア
→オーディオ帯域では高く(1kHzで600Ω程度)周波数が上がると徐々に下がり,100kHzを超えるあたりで一定になってくる

■導体構成
→平行
→ツイスト・ペア
→スター・クアッド(Star Quad,またの名をスターカッド,カッド撚り,スタッカード)
→撚りピッチ
→同軸

たかが配線材でも考えさせられることは多いのだ。


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