チョイラボその9

ソルダーレス・ギターアンプ


半田ごてを使わないギターアンプ作り

2児の親にもなると休日に半田ごてを握る機会さえも奪われる。 もう,自分がどんな部品をどこに保存してあるのか覚えていない。完全に中年の憂鬱だ。 いざ,自分がこのような状況に置かれると,なすすべもなく日常が流れて行ってしまうというのがよくわかった。

この不幸な状況に何か打開策は無いだろうか。 そこでちょっとやってみたのが今回のチョイラボ企画。もしかするとレギュラー・コンテンツに成長する可能性も秘めている。

スパイスを使ったギターアンプ作り

スパイス(SPICE)とは電子回路シミュレーターの名称だ。 かなり古い歴史を持っていると思う。よく知らないけど。 基本的にはテキストベースの言語で,かなり奥が深い・・・というか意味不明。 大規模なICの設計にも使えるし,真空管アンプの設計にも使える。 本来はIC向けの開発ツールだと思う。

ただし,昨今ではGUIを整備したアプリが色々手に入る。 その中でも今回注目したのは「LT SPICE」というソフトウエアだ。

「LT SPICE」はリニアテクノロジーが公開しているソフトで,無償だ。 あんまり横道にそれるのは不本意なのでこの程度にしておこう。

今までもスパイスをギターアンプ設計に応用してきた。 しかし,部分的な検証に過ぎず,正弦波を入れたりF特をみたりとかその程度しか使わなかった。

ちょっと調べてみると,WAVファイルをスパイスに食わせることができるということが分かった。 ラッキーなことに「LT SPICE」でもできる。

オーディオアンプならばスパイスにWAVファイルを食わせたところで吐き出すのは元ファイルと変わらないだろう。 歪み率を低くして,F特を伸ばして,要するに理想的な増幅器を作りたいわけだから,意味がない。

しかし,ギターアンプではイコライザーをダイナミックに使ったり,飽和による歪を積極的に音色づくりに利用している。

ということは,ギターをラインで録音してギターアンプ回路をシミュレーションしたスパイスに通すと,,, あら不思議,アンプの音色をシミュレーションできてしまうではないか!

なんてことまでは考えていない。やってもいいけど,真空管の飽和に係わる動作はなかなか難しく,デバイスモデルの検証から入らないといけない。とかあるので,あまり現実的ではない。

初回のおかずはスピーカー・エミュレータ―

ラインで録音したギターの音を音作りするソフトは色々とある。いまどき。 アンプ部分のエミュレーション,スピーカーのエミュレーションもできる。 でも,アナログのスピーカー・エミュレーターはあんまりない。で,作りたい。

壮大な夢を語るよりも結果を求められるこの時代。早速初回の結果をここに公表して締めくくろう。

スパイスによるスピーカーの音色シミュレーション

まず,ライン録音のサンプル(16bit 44.1kHz)のWAVEファイル。
sample.wav

自分のギターアンプの音をラインで聴くのは初めてなのだが,なんとも酷い音だ。 クラプトンがクリーム時代にラインで録音しという話を聞いたことがあるが,そんな音だ。

DTMやってる人は聞きなれてるんだろうか・・・

続いてテスト。4kHzの1次のLPFを通した演算結果。
test1.wav

ハイの痛いところが減って,聞きやすくなった。まあ,この程度の補正ならミキサーのイコライザでもどうにでもなる。

続いて本番。3種類のフィルタでスピーカーのF特をシミュレーションした演算結果。
test2.wav

へ〜 へ〜 へ〜 ってか。マイク録音と聴き分けられないかも。 マイクを通すってこと自体がものすごくアナログな行為なので,嫌いではないんだけどね。 でも,もしかしてマイクって必要ないかも。。。

フェイルターは最低域を切りつつおいしい低域をちょっと持ち上げることと,2kHz〜4kHzあたりにピークをがあって1kHzあたりをへこませる特性を作ってある。 イメージはセレッションのスピーカーで元気でラウドな音。

ダイナミックス系の処理は入れていないので,低音の飽和によるコンプレッション,ブレイク・アップなんかは再現できていない。


録音環境
・ODS+S 60S のラインアウト
・PCM-D50のラインイン
・ちょっとレベルが小さいけど勘弁を・・・ダイナミック関係は未処理

案外これって面白いぜ〜この回路作ってみたくなってきた・・・


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