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真空管アンプの安全設計:傾向
1:AC電源(コンセントの電源)
安全対策は電源から
電気機器の安全を考えるとき「電源」がもっとも重要なポイントになります。
アンプの「電源」は「商用電源」であり,コンセントから供給される「交流(AC)電源」です。 日本の家庭は「AC100V」で供給されています。
アンプ製作の上で欠かせないもっとも基本的な知識は「AC電源の極性」と接続です。 交流ですから極性は無いのですが,実際は接続の仕方があります。
AC電源の極性:日本は「単相三線式」
Fig:1に示すように日本の一般家庭は「単相三線式」で給電されています。
Fig:1
あなたの家の近くにもきっと「電柱」があると思います。 電柱にはグレーのゴミバケツのような形状をしたモノ「柱上トランス」が設置されています。 我々が家庭で消費する電気はここからやってきます。
「柱上トランス」の役割は高電圧6600Vを家庭で使用する100V(200V)に降圧することです。
「柱上トランス」から送られる電気は3本の電線を通じて供給されます。 電気はプラス・マイナス2本あれば給電できるはずですね。なぜ3本なのでしょうか。
3本の電線は色分けされています。ここでは一般的と思われる「赤・白・黒」で話を進めます。
家庭内に引き込まれている「赤・白」間は100ボルト,「黒・白」間も100ボルトです。 そして,「赤」と「黒」の位相は180度逆転しており「赤・黒」間からは200ボルトが取れます。
これが「単相三線式」です。 基本的には100Vを使用しますが,エアコンやIH調理器具のように大電力を必要とする機器に対して200Vを供給できます。
「赤・黒」は「活線」と呼ばれます。 活きている,つまり「LIVE」です。
一方「白」は「中性線」と呼ばれます。 中性,つまり「NEUTRAL」です。 中性線「白」は電柱の上に設置されている柱上トランスで接地(アース)されているそうです。
壁に設置されたコンセント,通称「壁コン」には「赤・白」もしくは「黒・白」の片側のいずれかを取った100Vがきています。 コンセントへの配線色は特に決められていないようですが「白・黒」が多いみたいです。
一見極性のないACコンセントですが,「活線」と「中性線」の区別があり,極性があるのです。
アース(大地)の接続
赤 | 活線(LIVE) | 触れると感電の危険あり |
黒 | 活線(LIVE) | 触れると感電の危険あり |
白 | 中性線(NEUTRAL) | 大地アースされている |
「赤・黒」は「活線」ですが「白」は「中性線」として柱上トランスで接地(アース)されています。
一方「アース線」は需給者側にも用意されます。感電の危険がある電気機器は筐体にアースを接続します。
欧米では「中性線(白)」と需給側の「アース(緑)」を接続します。「TN接地」と言います。
日本ではFig:1の通り「中性線(白)」と需給側の「アース(緑)」は接続しません。「TT接地」と言います。 電柱のアースと需給側のアースは「大地」を介して接続されている状態になります。
「白」は「中性線」として接地されていますので「緑」の「アース」と同電位となります。 つまり,中性線(白)に触れても感電しません。しかし,人体がアースに接触している状態で活線(赤・黒)にも触れると100Vに感電します。 人体がアースに接触している状態とは,湿った地面に立っている,水道管やガス管に触れている,鉄骨や鉄筋に触れている状態が考えられます。
15:05 2023/04/16:だいぶ長い間「TT」接地と「TN」接地を逆に記載していました。すみません。
昔のコンセントは2Pプラグ用,今は3Pプラグ
昔はアースが普及していませんでしたので日本の電気製品は2本のプラグで動く製品が多いです。
今ではアースつきの3本のプラグもだいぶ普及してきました。
3Pプラグを使うには3Pコンセントが必要になります。オフィスを中心に大分普及してきました。
「アース」の重要な役割は感電防止です。 欧米ではアース付きコンセントが義務付けられていますが,日本の一般家庭ではすべての電気機器に義務付けられているわけではありません。
水周りに設置する洗濯機,冷蔵庫,食洗器,大電力を消費するエアコン,電子レンジにはアースが必ずついています。 これは「内線規定」で義務化されているらしいです。
義務化されているとは言うものの,そもそもの接地方式が欧米とは異なりますので安全性は劣ります。
エレキギターは感電のリスクがある
ギターアンプについては演奏者が金属製の「弦」に常に触れているので,感電の危険がありますが, 「アース」を正しく接続すれば感電を防ぐことができます。
アンプ内部で絶縁破壊などの故障が発生するとギターに触れた瞬間,100Vに感電します。 ギターアンプを製作していると高電圧になれてしまい,たかが100Vと甘く見てしまいがちです。 しかし,100Vでも感電死しますのでAC電源の扱いには十分な注意が必要です。 市販アンプはユーザーが感電しないように製造されていますが,自作アンプは製作者が感電のリスクを十分に理解した上で絶縁破壊しないように考慮しながら作る必要があります。
まとめ
日本では「単相三線式」で電気が供給されています。交流電源にも極性があります。
「中性線」に触れた場合は感電しませんが,「活線」に触れた場合は感電します。 コンセントの極性を調べる「検電ドライバー」はこの原理を応用しています。 また,テスターがあれば簡単に確認できます。
感電を防止するためにはアースを正しく接続しなければなりません。
コンセントの極性を知る理由はもう一つあります。 コンセントの極性を適切に管理していないと「シャーシ電位」の影響によりノイズを発することがあるのです。 この話はいわゆる「コンセントの極性合せ」につながっていきます。 シャーシ電位については別項で説明しています。
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