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真空管アンプの安全設計:傾向

2:火災


電気火災

電気が原因の火災は減っているようですが,まだまだ火災原因の一端を担っているようです。

身近な火災原因のうち電気に関連があるのは下記3つと思われます。

■コンセントのトラッキング現象
■電源コードや屋内配線からの出火
■古い電気製品の発火

詳細を考えてみましょう。

■コンセントのトラッキング現象

最近の電気製品のコンセントのプラグ側を見ると金属部分の根元にカバーがついてます。

トラッキング防止カバー
引用:BUFFALO

コンセントに埃がたまり,湿気とともに年月が経つと電気を通ずる状態になり火災の原因になります。 「トラッキング現象」と言います。

まあ,この件はアンプに限りませんのであまり調べていません。

■電源コードや屋内配線からの出火

電源コードの問題は古くて新しい厄介な問題です。

電源コードを扉に挟んだり家具などで踏みつぶすとストレスが加わります。

・断線寸前になり抵抗値が上昇し,発熱して発火に至る
・絶縁が破れ漏電・ショートして大電流が流れ発火に至る

壁の内側を通っている屋内配線も同様の問題があります。 古い家屋の屋内配線は突然発火して火災を起こします。

これらの問題はアンプ本体にはあまり関係ありません。 古くて細い電源コードは使わずに,新しくてごっつい電源コードを使えばいいわけです。

■古い電気製品の発火

扇風機が有名でしょうか。

部品の劣化が原因となる火災です。 コンデンサや基板などの絶縁不良が主な原因です。

絶縁不良によって異常な電流が流れた場合,ヒューズによって保護されるのが正しい設計です。

しかし,想定外の部分に故障が発生するとヒューズでは保護できません。 また,ヒューズが働かない程度の弱い電流が長時間流れて発火する例もあります。

ヒューズによって保護できない部分が発火した場合,炎が上がっているにもかかわらず電気は遮断されないので,ますます状況を悪化させてしまいます。

あなたの部屋のビンテージアンプ大丈夫ですか?ビンテージギターと共に燃えちゃうかもしれませんよ・・・

最も確実な方法,使わないときはコンセントからプラグを抜いておきましょう。

絶縁不良が火災原因

いずれの原因も「絶縁不良」か「接触不良」が発生しています。

接触不良は多くの場合,オープン・モードの故障となり,電流は減少する方向です。 一方,絶縁不良は多くの場合,ショート・モードの故障となり,電流は増えます。 つまり「絶縁不良」は発熱・発火の危険性があります。


絶縁不良の発生原因

絶縁不良は火災を発生させます。 では絶縁不良はなぜ起こるのか考えて見ましょう。

電気を安全に絶縁するために電気機器は「絶縁材料」を使って作られています。

代表的な絶縁材料は磁器,樹脂,ゴム,木材,紙,各種繊維等が考えられます。

中でも樹脂(プラスチック・ゴム)は安価で使いやすい絶縁材として最もよく使われています。

しかし,樹脂は古くなると絶縁抵抗が落ちてきます。 物理的な強度も低下しますので変形したり破損したりします。 結果として絶縁が破壊され熱を発し,火災へとつながります。

樹脂の劣化

樹脂部品は湿気を吸収して加水分解により劣化してきます。 脆くなりひび割れが発生したり,物性が変化し絶縁抵抗が下がってきます。

湿度以外でも,紫外線や太陽光を多量に照射したり,高い温度にさらされると劣化が加速します。シンナーなどの可塑剤や浸透力のつよいオイルは樹脂を侵し劣化させます。 アンモニアなどのガス,塩分を含む液体,金属との接触によっても樹脂は劣化すると言われています。

劣化を防ぐためには高温と光を避ければよいです。ハンド・クリームなどでも劣化する可能性を考えると素手で触れるべきではありません。 まあアンプやギターは絵画のような美術品ではないのでそこまで気を使わなくてもよいですが。

最近はエンジニアリング・プラスチックと呼ばれる機械的特性に優れた様々な樹脂があります。 使用可能な温度や強度,熱可塑性か熱硬化性かなど,特徴も様々ですので,それぞれの樹脂の特徴を知って使いこなす必要があります。

電源にはフレッシュな部品を使おう

劣化した絶縁材は危険ですので,自作アンプでもコンセントの電力を直接受ける電源トランスと1次側回路にはできるだけフレッシュな部品を使うほうがよろしいでしょう。

該当する主な部品は以下です。
・電源トランス
・電源ケーブル
・ACインレット
・電源スイッチ
・ヒューズホルダ

もしどうしても古い部品を使いたければ絶縁抵抗を測って安全を確認すべきでしょう。 特に電源トランスは要注意です。

また,古い電線の被覆に使われている樹脂は可燃性かも知れません。 かつて電気ケーブルによる建物の火災が多発した時期があり,多くの犠牲者が出たため現在の電気ケーブルには難燃性・自己消火性の被覆が使用されています。

ビンテージな部品も魅力的ですが,安全性の面からは慎重にならざるを得ません。

no more vintage

火災の前兆「過熱」

火災ははっきり炎が上がりますのでヒジョ〜〜にやばい状況です。 製品が火災を起こすとリコールとなり,莫大な費用をかけて市場から回収されることになります。

火災に至らなくても,前兆現象として以下のような段階があります。
・部品が熱くなる
・焼けた臭いが発生する
・一筋の煙が短時間だけ上がる
・モクモクと連続して発煙する

まず火災を防ぐためには第一段階の「過熱した状態」を見つければよいです。 ですから,設計者はアンプのどの部品がどの程度過熱するのかを知らなければなりません。

最大出力で運転中にどの程度発熱するのか,異常時にはどの程度発熱するのかを把握し,火災につながるような異常な温度に達しないか確認が必要です。


火災や過熱につながるアンプの故障原因

自作アンプの製作で火災や過熱に直結する失敗について考えてみました。

■部品の電力容量が不足している
■発熱部品の放熱が考慮されていない
■部品同士が密集して配置されている
■想定外の大電流が流れている
■配線材の太さが不十分
■耐圧不足によって放電が発生してしまう

火災の具体例

私の経験談ですが,ヒーター配線の接地点を間違えテフロン被覆の線材が燃えました。

ヒーター配線は中点電圧タップで接地していました。 その後,ヒーターからパイロットランプの配線を引き出しました。 ランプのソケットをシャーシ取り付けたのですが,ソケットの金具はシャーシとランプの片側の電極両方に接続されていました。 結果としてトランスのヒーター電圧を取り出すタップの片側がショート状態となりました。

電源を入れたとたんにテフロン被覆の電線が真っ赤になり,煙が上がりました。。。

私が作った機材ではありませんが,トランスが発煙したこともあります。 モクモクと煙が上がっていました。原因はトランスの過負荷でした。

このようにすぐに気付くミスならばよいのですが,時間が経ってから起きる発火や,想定外の条件下で起きる発火が怖いです。

異常の想定と異常試験

メーカーが作る製品では部品の故障を想定した異常試験を行い,安全性を保障しています。

部品が故障するとどのような動作になってどこが過熱するのか,そして出火しないかを実物で確認します。

ワンオフの自作品ではなかなかできません。

ですから,異常事態の想定が非常に重要になってきます。想定外の事態は大事故を引き起こします。

ここをこうすると壊れる。こうすれば壊れないなどのノウハウがあります。一見無駄に見える部品が重要な安全対策だったりするわけです。

具体的な対策についてはこちらこちらで解説します。


まとめ:絶縁不良と過熱を防ぐ

絶縁不良が火災につながります。 過熱した部品は絶縁不良を起こします。

コンセントの電力を直接受ける電源トランスの1次側はもっとも気をつかう部分です。

樹脂部品は劣化しますので製造されたばかりの新しい部品を使った方が安心です。 ビンテージ部品を使うとカッコはつくのですが,火災発生のリスクは高くなります。

適切な部品を正しく使って火災や過熱を防止します。

異常の想定,そして「異常試験」が安全性のカギです。


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