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真空管アンプの安全設計:傾向
4:感電
感電の恐ろしさ
感電はしたくないものです。 左手から右手に抜ける,または手から足に抜ける感電は非常に危険です。 神経は電気を通しやすいですし,心臓は電気信号で動いています。
コンセントに来ている100Vに感電した人は案外多いのではないでしょうか。 100Vでは感電死しないと言い切りたいところですが,実際に死亡事故は起きています。 汗をかいたり,地面が湿っていたりすると特に危険です。
とにかく,感電してもよいことは何もないので感電しないに越したことはありません。
エレキギターと感電のリスク
エレキギターとギターアンプはギターの弦がアースにつながっているので常に感電の危険があります。 地面が湿っている場合や,他の機器(例えばマイク)に触れた場合は感電する危険があります。
ライブでマイクで感電する原因と対策はこちらに書いてあります。
しかしまあ,正しく(普通に)使用していれば,まず感電死はしません。
かといって放置するわけにもいきません。自作アンプを安心して使うためには充分考慮する必要があります。
自作アンプで感電しないために知恵を絞る
メーカー製のアンプはユーザーが感電しないためにしっかりと設計と試験を行っています。
一品モノの自作アンプは破壊するような試験は出来ません。試験設備も限られています。
ですから安全は設計によって保証しなければならないのです。
感電を伴うアンプの故障原因
感電につながる自作アンプの故障原因をいくつか考えてみました。
■アースやグランドが正しく接続されていない,もしくは外れている
■電源トランスの1次側配線の活線がシャーシに触れている
■より線の”ヒゲ”,リード線の切れ端,ハンダ屑によるショート発生
■配線や部品同士の絶縁距離が不十分でスパークが発生
■部品が過熱して絶縁性が低下した
■電源トランスがレア・ショート(Layer Short)した
■配線材の耐圧不足や劣化による絶縁破壊
故障の具体的な例
Fig:1
Fig:1に電源トランスの1次側とシャーシがショートを起こした場合を示しました。 この状態ではシャーシ電位「ec」がAC100Vとなります。この状態で人間が筐体に触れると感電を起こします。 ギターアンプでは,ギターの弦に触れると感電します。
特に最近はビンテージ線材が容易に手に入りますが, 布皮膜の配線材は湿気を吸うと絶縁不良を起こしかねません。 米国は乾燥した国ですが,日本は湿気の多い国です。 海外で実績のある線材がそっくりそのまま日本でも使えるわけではないのです。
こうした背景を考えても安全性を考慮するならば新しい線材をお勧めします。 特にトランスの1次側配線にビンテージ電線を使うのは危険です。
電源トランスが感電防止の砦
感電を防止するための重要な部品が電源トランスです。 危険かもしれないAC電源からアンプを絶縁する働きがあります。
電源トランスは我々を守ってくれるバリアーであり砦なのです。 電源トランスがあるおかげで極性の無い2Pコンセントでも安全性が確保され,簡単に感電しないのです。
昭和の時代に電源トランスの無い真空管ラジオが普及した時期がありますが,感電を防止するために筐体が樹脂でできています。 中学生の時,アンプが買えなくてラジカセをアンプ代わりにしてましたが,トランスレス・ラジオにエレキギターをつないではいけません。確率50%のロシアン・ルーレットで100Vに感電します。
電源トランスの1次側は他人のフンドシ
電源トランスの1次側は壁のコンセントにつながっています。
コンセントは電力会社からAC100Vで供給されています。 このAC100Vは雨が降ろうが槍が降ろうが自分の責任ではどうしようもありません。
送電線に雷が落ちてもコンセントの電気が安全か・・・我々の責任ではどうにもなりません。
コンセントの電気を「ある程度の範囲内」に入る状態に維持するのが電力会社の仕事です。 その「ある程度の範囲内」で安全を確保するのがアンプの設計者です。
ですから電気器具は電力会社からの電気を使って,他人のフンドシで相撲を取っているようなものです。 その「フンドシ」がどんな牙を隠し持っているのか,あるいは汚れているのかもしれません。 いずれにせよ甘く見ているとバチが当たります。
したがって電源トランスの1次側の配線は「他人のフンドシ」を扱う意気込みで配線します。
具体的な対策についてはこちらで解説します。
まとめ:安全対策はアースとグランド
万が一の場合を想定して安全なアースをアンプにしっかりと接続して,電源回路・グランドの配線は正しく行います。
1次側の配線が特に重要です。1次側の配線がギターアンプの安全性を左右します。
感電防止のためにもビンテージな部品は使わない方がよいです。
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