エレキギターと真空管ギターアンプの等価回路

2016年12月13日初稿


amazon ギター
ギター
アンプ
アンプ
DIY・工具
DIY・工具
オーディオ
オーディオ

お勧めの名盤,高音質盤「よく効く音楽」はこちら・・・
参考文献「自作に役立つ書籍」はこちら・・・


等価回路

都市伝説的によく言われることですが,,,
「シールド・ケーブルでトーンが変わる。シールド・ケーブルの長さでもトーンが変わる。」
「エフェクタを接続するだけで音が変わる。トゥルー・バイパスなのにトーンが変化する。」
「ライン録音はラインくさい音がする。バッファを入れると元気がなくなる。ワイアレスは音がかたい。」
「アンプ直が最高!」
といったことは気のせいなのでしょうか。。実はあまり認識されていないのですが,そこには確かな理由があるのです。

・ピックアップ

・シールド・ケーブル

・真空管アンプの入力回路

この三者はギターのトーンに対して大きな影響を持ちます。ひとつ替えると音が変わります。 電気的に説明できる違いが出てくるのです。この三角関係を解きほぐそうと思います。

Equivalent Circuit of the electric guitar and tube amplifiers
Fig:1:エレキギターと真空管アンプの等価回路

Fig:1にここで説明する等価回路を示しました。いきなり回路図を見せて出鼻をくじこうというわけです。

「等価回路」とは電気的に無視できないLCR成分(L:コイル,C:コンデンサ,R:抵抗)を抽出し,トランジスタや真空管などの増幅素子の挙動を単純化した回路のことを言います。

単純化することによって回路の挙動を数式化したり,直感的な理解を助けたりすることができます。 そして,等価回路を回路シミュレータで計算すると実際の振る舞いを等価的に再現することができます。

つまり,これ以上簡単に説明するのは難しいということです。ほんとすみません。

ピックアップの等価回路

Equivalent Circuit of an electric guitar pickup

まず,ピックアップの等価回路を説明します。

ピックアップは弦の振動を拾うために細いエナメル線をぐるぐると何千回も巻いた構造をしています。これはまさに「コイル」です。

ピックアップは沢山巻く,つまりターン数を多くすればするほど出力が高くなります。 出力の大きさがターン数と磁力の積で決まるからです。

等価回路において何が重要かというと,コイルが持つ「インダクタンス」という数値です。

インダクタンスと言う数値は「インピーダンス」一族の一員で,単位は[H]ヘンリーです。 周波数に比例して単調上昇するインピーダンスをインダクタンスと称しています。 つまり直流は通すけど,高い周波数を通しにくいという性質です。

インダクタンスは交流に対する電流の流れにくさ,噛み砕いて言うとコイルの強さを示す数字とでも言いましょうか。 コイルの巻き数が増えるほどインダクタンスが大きくなります。

そして沢山巻けば巻くほどインダクタンスも高くなります。 ちなみにギター用ピックアップのインダクタンスは2〜6[H](ヘンリー)を示します。

そのほかの要素としてピックアップは抵抗値を持ちます。 ピックアップは非常に細い銅線を巻いていますので,銅線のわずかな直流抵抗が抵抗値になります。 ピックアップの特性を示す代表的な数値なので,ここに来るような皆さんはピックアップの直流抵抗が5kΩ〜10kΩであることを知っているでしょう。

抵抗値も沢山巻けば巻くほど高くなっていきます。単純に長いワイアが必要になるからです。 そして長さが同じなら,細い銅線ならば抵抗値は高く,太い銅線ならば抵抗値は低くなります。

Fig:1L1がピックアップのインダクタンス,R4が直流抵抗です。 ここではストラト用のシングルコイル・ピックアップの代表的な値を当てはめてました。

ストラト用のピックアップでは直流抵抗は5k〜7[kΩ],インダクタンスは2〜3[H]が一般的です。

ギブソンのハムバッカーでは直流抵抗7〜8[kΩ],インダクタンスは4〜6[H]が一般的です。

ピックアップはターン数に比例して発電能力が向上しパワーが強くなります。 合わせてインダクタンス値と抵抗値が増えます。

等価回路では省略しましたがピックアップ自身の寄生容量(キャパシタンス)もあります。 つまりコンデンサーとしての成分ですが,単純化のために省きました。

シールド・ケーブルの静電容量

Equivalent Circuit of an electric guitar cable

次に重要な要素がギターとアンプを接続するシールド・ケーブルです。

なぜ重要かというと,シールド・ケーブルは静電容量(キャパシタンス)を持ちます。つまりケーブルは「コンデンサー」だということです。

キャパシタンスも「インピーダンス」一族の一員であり,周波数に反比例して周波数が高いほど数値が減少していきます。つまり高い周波数ほど電気を通しやすくなります。

Fig:1C1がシールドケーブルの静電容量を示します。 等価回路では省略しましたが,シールド・ケーブルはインダクタンスを持ちますし,直流抵抗もありますが,影響が少ないので単純化のために省きました。

さて,シールドケーブルの静電容量はケーブルメーカーが公表しています。3メートルで考えると200pF〜500pF位になります。長さに比例して静電容量は増えていきます。

ここで代表的なシールドケーブルの静電容量をまとめてみました。 静電容量は1メートルあたりの静電容量[pF]で示されることが多いですが,海外では1フィート(0.3048m)当たりの静電容量で示されることもあります。 ついでに抵抗値も記載しておきました。

BrandNameCapacitanceCond. DCR
ohm/km
Shield DCR
ohm/km
CANAREGS-6160pF/m1825
BELDEN9395180pF/m2137
BELDEN9778148pF/m3338
MOGAMI2524130pF/m3313
MOGAMI336870pF/m3324

中学生の時に初めて買ったカナレのシールドは標準的な特性と言えるでしょうか。いや時代遅れかな。

目安として100pF/mを下回ると低容量シールドケーブルといえます。50pF/mを切るケーブルも市販されています。

重要な点としてケーブルの静電容量は長さに比例することを忘れないでください。

この表でいうと,5メートルのモガミ2524は650pFの静電容量を持ちます。 10メートルのモガミ3368は700pFの静電容量を持ちます。 両者の差はたった50pFなので”等価回路的には”同様のトーンになります。

LC共振という現象

さて,前置きが長くなりました。 いよいよエレキギターのトーンの核心にせまります。

「コイル」と「コンデンサ」つまり「インダクタンス」と「キャパシタンス」が出会うところには必ず共振という現象が生じます。電気的な共振です。

Fig:1ではピックアップはインダクタンスをもつコイルであり,シールド・ケーブルはキャパシタンスを持つコンデンサです。 この二つは共振を起して周波数特性にピークを生じさせます。

直流ではコイルの直流抵抗だけですが,周波数が高くなるにつれてインダクタンスの影響で上り坂になります。 そして頂上を過ぎるとキャパシタンスの影響で下り坂になります。

共振峰(ピーク)の周波数(Hz)=1/(2π√L*C)で計算できます。

もちろん,共振周波数が変わればトーンが変化します。 後程グラフで視覚的に示しますが,ピックアップとシールド・ケーブル組み合わせによっての1kHz〜5kHzの周波数帯域に大きなピーク(盛り上がり)を生じます。 この周波数帯域は人間の耳が最も敏感に反応する周波数帯域ですので,トーンの違いとして敏感に感じるのです。

前提として,ピックアップのインダクタンスは不変と考えましょう。

一方,静電容量はケーブルの品種や長さで変化します。 つまりケーブルの長さが変わると共振周波数(トーンの美味しい部分)が変化するし,同じ長さでもケーブルによって静電容量が異なるのでトーンが変化してしまうのです。

ピックアップの負荷容量(Load Capacitance)を無視してトーンを語るのは危険です。


真空管アンプの入力段

さてここまでの話題(シールド・ケーブルの静電容量)は基本的なことですので,多くのギタリストが認識しています。

次に真空管アンプの入力段の影響を考えてみます。ここからが本題です。

Equivalent Circuit of an electric guitar amp

重要な抵抗値はR2R3です。

R3は入力シャント抵抗です。単に入力抵抗と呼んでもいいと思います。1MΩが標準です。 これを小さくするとゲインロスが発生するとともに高域が落ちて丸い音になっていきます。逆に1MΩ以上にしてもあまり効果はありません。

どんなギターアンプでもほぼ間違いなく1MΩを使っています。 どんなギターでも基本的には1MΩの負荷を想定しているといっても過言ではないでしょう。 つまり1MΩが歴史的なコモンセンスであり標準トーンなのです。

R2は入力シリーズ抵抗です。グリッド抵抗とも呼ばれます。 標準値と思われる数値はありません。ブラックフェース期〜シルバーフェース期のフェンダーアンプを標準とするならば68kΩ2本が並列になっているので34kΩです。 ただし,最近のフェンダーはまちまちで10kΩを使っているアンプもありますし,33kΩを使っているアンプもあります。 他の例ではマーシャルの一部の機種では68kΩだったり,フェンダー・ツイードの初期はこの抵抗を省いているアンプもあります。 ランドール・スミス(メサ・ブギー)やケン・フィッシャー(トレイン・レック)もこの抵抗を省いています。一方,ダンブル(クローン)系は22kΩが標準ともいえます。

さてC2の説明をしなければなりません。 抵抗以外にも回路図には表れない静電容量(ストレイ容量とか寄生容量とか言う)があり,この影響が随分と大きいのです。

ここでは初段管を12AX7とします。グリッド電極はプレート電極に対して1.7pFの静電容量を持ちます。 これはデータ・シートに書いてある数字です。真空管内部の電極構造からくる避けようのない寄生容量です。

蛇足ですがカソード電極も1.7pFの静電容量を持ちますが,こちらは無視できます。

さて,プレートに対する静電容量とカソードに対する静電容量は同じなのに,なぜプレートの静電容量は無視できないのでしょうか。

実はここにからくりがあります。

ミラー効果(静電容量がゲイン倍!ムクムク増殖)

初段の12AX7は50倍くらいのゲイン(増幅度)がありますので,プレート電極はグリッド電極の50倍の電圧でスイングします。しかも位相は反転しています。 結果的にプレート電極では「ミラー効果」という現象が発生ます。

Equivalent Circuit of an electric guitar tone control

ミラー効果(Miller Effect)は「John Milton Miller」さんが由来だそうで,鏡(Mirror)ではないそうです。知らんかった・・・

ミラー効果は理解が難しいところですが,テコの原理と同じです。 グリッドに対してプレートは50倍の腕の長さをもつテコでバランスを取っていると考えます。 グリッド側のテコが1だけ動くとプレート側のテコは50倍も動きます。寄生容量を通じて50倍の力でグリッドを引っ張りますので,奪われる電荷も50倍になるのです。 電荷を50倍奪うのですから静電容量が50倍になったことと等価です。

つまり,ミラー効果により寄生容量がゲイン倍されます。つまり,1.7pF×50 = 85pFが等価的な静電容量になります。シールドケーブルでいうと50cm〜1mに相当します。

Fig:1C2がグリッド・プレート間寄生容量を示します。込み入った話になりますが12AX7のシミュレーション・モデルには1.7pFが既に含まれていますので,等価回路として本来はC2が不要です。 ところが,フェンダー・アンプの配線図を見てみますと,グリッド配線とプレート配線は必ずしも分離されておらず,平行に走っています。 つまり,12AX7単体の静電容量に加えて配線の引き回しによる静電容量が発生しているのです。

そこで,配線容量としてC2を5pF〜10pFとした場合の試行を後程行ってみます。 5pFはとても微小な静電容量ですが,これが50倍されてしまうのです。結果的にはもはやエフェクターともいえる影響が出てきます。

なお,ダンブル(クローン)系のアンプではR2をソケットに直付けしていますので寄生容量は小さくなります。 プレート配線の引き回しも寄生容量が少ない引き回しになっています。

余談:エレキギターのコントロール類

Equivalent Circuit of an electric guitar tone control

今回の話の中ではあまり重要ではありませんが,ギター側の等価回路として必要なものに,ボリューム・コントロール用のPOT(ポテンションメーター)とトーン・コントロール用のPOTがあります。

例えばストラトは250kΩのPOTを使います。ギブソンのレスポールなどは500kΩが標準です。 余談ですが違う抵抗値のPOTを使うとトーンに変化が出てきます。例えばストラトに500kΩのPOTを使うとギンギンギラギラになります。蛇足なのでここまでにしておきます。

Fig:1R1がボリュームPOT,R8がトーンPOTです。 ボリュームもトーンも全開の状態を模していますので,等価回路上は単なる抵抗器と示されます。 全開にすると抵抗が切り離される「ノーロード」と呼ばれるPOTもあります。さらにギンギンギラギラになります。



SIM1:シールドケーブルの静電容量の影響

やっとこ最初の試行です。等価回路Fig:1の周波数特性のシミュレーション結果を示していきます。 ピックアップが発生した電圧がどのように伝わって真空管アンプの内部に入っていくのかという特性を示します。


Fig:2:C1を変化させた場合(ケーブル容量の影響)

Fig:2C1のシールドケーブルの容量を250pF,500pF,1000pFとした場合の周波数応答を示しています。(C2=5pF,R2=34kΩ)

つまり言い換えるならば166pF/mの静電容量を持つシールドケーブルを1.5m,3m,6mと長さを変化させた場合の特性になります。

・ 250pF = 長さ1.5m×166pF/m
・ 500pF = 長さ3.0m×166pF/m
・ 1000pF = 長さ6.0m×166pF/m

ご覧のように明らかなピークを持った周波数応答になっており,トーンに癖が出ているのがわかります。 そして,そのピークがシールドケーブルの長さによって変化します。

グラフの1000pFの時が最もピークが高く,250pFの時はピーク周波数が高くなるとともにピークが低くなっています。

演奏した感じでは1000pFは明るく元気な音に聞こえます。一方,250pFはレンジが広くなり固さが出てきて,暴れが少なく落ち着いたトーンに聞こえます。

都市伝説のひとつ,トゥルーバイパスのエフェクタなのに接続するとトーンが変わると言われますが,この現象はシールドの長さで説明できます。 エフェクタを接続するためにシールドをもう一本持ってきて2本使うと長さが2倍になり,ケーブルの静電容量も2倍になるのです。 静電容量が大きくなればピーク周波数は低くなり,結果的にエフェクタを繋いだだけでトーンが変わってしまったと感じるのです。

さて,これが基本で次は応用です。

SIM2:アンプ内の寄生容量の影響


Fig:3:C2を変化させた場合(アンプ内配線の影響)

Fig:3C2の配線による寄生容量を0pF,5pF,10pFと変化させた場合です。(C1=500pF,R2=34kΩ)

この5pF単位というとても小さな数字の変化ですが,シールドケーブルの容量を変化させた時と同様にピーク周波数の変化が見えます。 なぜならこの5pFの変化はミラー効果によりゲイン倍(50倍)されるので5p×50 = 250pFの変化に相当するからです。

なお,ピークの高さは次の試行で示す通りR2が制限しています。

この寄生容量は部品配置の工夫で減らすことができます。グリッド抵抗をソケットに直接半田付けすればほぼ0pFにできます。 しかし,入力ジャック付近にグリッド抵抗を置いて配線を引き回し,さらにこのグリッド配線とプレートの配線とを近づけると容量が増えていきます。 定量的にどのくらい増えるかはよくわかりませんので,5pF,10pFで比較してみました。

この試行からわかることはアンプ内の配線の引き回しでトーンに変化が出るということです。 初段のグリッドは配線は要注意です。

SIM3:グリッド抵抗の影響


Fig:4:R2を変化させた場合(シリーズ抵抗の影響)

Fig:4R2(シリーズ抵抗)を0Ω,34kΩ,68kΩと変えた場合です。(C1=500pF,C2=5pF)

グラフの通り抵抗値を大きくした方がピークが低くなります。これは落ち着いたトーンになることを意味します。 R2を大きくするとC2の影響が緩和されるのです。

先ほど上げた具体例ですと,メサ・ブギーやトレイン・レックはゼロΩですからピーキーで元気なトーンになるはずです。

SIM2,SIM3は真空管アンプ特有の現象です。入力段がオペアンプやトランジスタ・FETの場合はC2が極小のトーンになります。 ですからエフェクターやバッファを通すと真空管アンプに直結したトーンと比較すると固い音になるのです。

都市伝説のひとつ,アンプ直が最高,エフェクタと通すと元気がなくなるという現象を説明できます。


まとめ

ピックアップにぶら下がる静電容量(負荷容量:Load Capacitance)の影響はギターのトーンに対して支配的な影響力を持ちます。 そして,シールド・ケーブルだけでなく,アンプの入力段の静電容量も影響があります。これって大事なことなんです。

なぜ大事かというと,機材ごとの些細なトーンの差を議論したくても静電容量の違いがトーンの違いにつながります。これでは完全な比較はできません。

つまりあえて辛口に言うならば,静電容量を無視したシールド・ケーブルのレビューは無意味です。 シールド・ケーブルの違いを感じているのではなく,静電容量の違いを感じているからです。

表現を変えると,トーンの違いは静電容量の違い,極論すればジミヘンの音を再現するためには静電容量の大きなカール・コードがどうしても必要ということです。 しかも1本ではダメです。3本必要です。

同様の原理はトーン・コンデンサ―にも当てはまります。つまり容量を計測しないトーン・コンデンサの比較も無意味なのです。 コンデンサーには誤差や経時変化がありますので,同じ数字のコンデンサーだったしても実測した容量が異なればトーンに違いが出るのです。

逆にこの現象を積極的に利用することもできます。 トーン・コンデンサ―の容量を減らしてピークを美味しいところに持っていくとミッド・ブーストにもなるのです。 実際にこのトリックを使ったパッシブのミドル・ブースト装置があります。


エフェクターボードでの対策

これほど音がころころ変わってしまうのが困るという人は,エフェクターボードの先頭にバッファを準備して,ギターとバッファを接続するシールド・ケーブルを常に同じものを使えばよろしい。

しかしバッファーを入れたら音が変わることは説明した通りです。 ソリッドステートのバッファアンプと真空管回路では等価回路が異なるので真空管アンプに直結した音と同じにはなりません。 後で述べますが,これはバッファ入力にいくつか部品を付け加えることで等価的にごまかすことができます。

バッファ内蔵!!アクティブ・ピックアップの場合

もっとロバストにしたければ,ギター内にバッファーを入れてしまいます。 ただし,このままでは負荷容量が小さすぎてトーンがおかしくなります。

この場合はピックアップに負荷容量を与えて調節すればいいのです。ピックアップにぶら下がる負荷容量がケーブルだろうとコンデンサーだろうと等価的に違いはありません。 どうするかというとギター側のボリュームPOTに直接200pF〜1000pFのコンデンサをぶら下げます。 1番端子と3番端子の間にコンデンサを接続すればボリューム位置に関係なく負荷容量が一定になります。

ギター内部の配線を長くして余計な静電容量を付加するという方法もあります。 有名な具体例としてPRSが挙げられます。レスポールはピックアップ・セレクタが遠くにあるため,内部配線が非常に長いのです。 PRSはのあるモデルはレスポールのトーンに近づけるため内部配線を無駄に長くしています。

最終進化形はEMGのようなプリアンプ内臓のアクティブ・ピックアップです。ノイズにも強くなります。まあでも,ビンテージギターをこんな風に改造する人はまずいないでしょう。 バッテリー・キャビティを付けるなんて野蛮なことはしたくありません。

ワイアレスの音が固いと感じる

ん〜そういえば,ワイアレス用トランスミッタを接続するケーブルは短いです。 ワイアレスを使うかどうか以前の問題としてケーブルが短いことがトーンに変化を及ぼしています。 もし,ワイアレスを通すとそこそこヌケは良くても固くて元気がない音だと感じたら,原因はケーブルが短いことです。これがワイアレスが普及しない原因だと思うのですが・・・

どんなにオーディオ的に優れたワイアレスシステムでもここを無視したら楽器には使えません。 わたしならトランスミッターに負荷容量を入れちゃいますけどね。


ケーブル・エミュレーター回路

さて,バッファーやトランスミッタに入れる等価回路についてですが,単純なケーブルの容量だけでなく,真空管アンプの入力等価回路をも考慮すればより似たトーンに近づけることができます。 というか,最低限そこまでやって,そこからがスタート地点になります。何と言っても等価回路が異なるならばトーンは異なるのです。

これはまさにわたしが「LINE6 DL4 EXTREME MOD」の時に入力部に入れた各Emulatorのことでして,回路図はそっちにあります。

ミラー効果で容量が増大するといってもしょせんはコンデンサーですから,まずは増大した分のコンデンサーを追加する必要があります。 そして,シリーズ抵抗も入れることで等価回路としては完全になります。

ところで入力抵抗と負荷容量を切り替えられる機能をもつ製品は既にあります。ギター用プリアンプでもLPレコードのイコライザでもそんな機能を持った機材があります。 等価回路の違いに気付いている人もいるのです。


トーン・クエストの日々

ここではピックアップのインダクタンスとケーブルのキャパシタンスの関係からギターのトーンが決まると説明しました。 しかし,エレキギターは楽器ですからそれ以外にもトーンに変化を与える電気的な要素がまだあります。 残念なことに等価回路でどれだけ精密に再現しても同じトーンにはなりません。

いまは紹介にとどめますが,次に議論すべき犯人はマイクロフォニック・ノイズです。 マイクロフォニック・ノイズは機械系の振動と電気回路の結合なので機械系の挙動をつかめない限り等価回路に表すことはできません。

具体的な例をいくつかあげましょう。ピックアップに向かって叫ぶとアンプから声がでる(やったことありません)。 真空管を叩く。フォーンプラグを叩く。ワウを・ペダルを蹴飛ばす。シールドを床にたたきつける。とかするとアンプから音が出ます。これがトーンに影響を及ぼすのです。

ピックアップと負荷容量によるピーキングは,料理でいえば塩や砂糖のようなもので,加えれば加えただけの効果が表れます。 一方,マイクロフォニック・ノイズは料理でいえばスパイスに相当すると言えます。 つまりはコショウ少々という具合の加減であり,微妙な違いは好み次第といったところです。

クロスロードは遠く,トーン・クエストの日々は続く。日々の鍛錬を怠るべからず。


参考文献


Contact Info
Copyright(C) Since 1999 Y.Hosoya. All rights reserved.
inserted by FC2 system