真空管ギタープリアンプの回路設計


プリアンプの話,まとめと要点

プリアンプの設計で気をつける点をまとめておきます。

必要以上にハイ・インピーダンスの回路にしない

真空管回路はハイ・インピーダンスになりやすいものですが,インピーダンスが高い部分はノイズに弱く,さらにハイ落ちしやすくなります。 目安としては1MegΩ以上のインピーダンスにならないように設計するのが適当と思います。 同様の理由からVRは最大でも1MegΩまでにしておくのが無難と思います。

ハイ落ちするとこもった抜けの悪い音になりますが,逆にあまりに広帯域にすると発振しやすくなったりノイズが出やすくなったりします。 ギターアンプの周波数帯域は100Hz〜10kHzで十分です。

リレーやスイッチで切り替えるコンデンサの端子が開放状態にならないようにする

リレーやスイッチで切り替える回路を作りこむ場合は,切り替えるコンデンサの端子が開放され電気的に完全に浮くことのないようにします。 コンデンサの両端子間に5.1Megなどの高抵抗を接続しておくか,スイッチで解放される側の端子を高抵抗でGNDに落としておきます。 コンデンサの足が浮いていると勝手に電荷がたまってしまい,浮いた端子が電位を持ってしまいます。 この状態でスイッチを切り替えるとスピーカーからバチっと音が出ます。

古いコンデンサに見られる漏れ電流によってもバチっと言うことがあります。 そんなときはグリッドの電位を確認してみましょう。案外DCが出ていたりします。

増幅回路各段の負荷を低くしすぎない

2ch構成にしたり,複雑な回路にすると回路の分岐点や合流点で負荷が重く(インピーダンスが小さく)なっていることがあります。 負荷として並列になっている回路のインピーダンスの合計が大体500kΩ以下になるようだとゲインが下がるなど,増幅回路の動作に影響が出てくる懸念が発生します。 かといってインピーダンスを高くするのもよくないので,負荷インピーダンスは500k〜1MegΩの範囲にしておくのがよさそうです。


以上,回路設計法というか,どんなことを考えて設計したかをつらつらと書いてみました。 お付き合いいただきありがとうございます。

様々なメーカの回路図を眺めていると,共通点や個性的なところ,ここはあぶねーだろ!ってところがあって面白いです。 この回路はこんな音がするんだろうな〜とか想像しながら眺めてます。 ポイントはトーン・コントロールと歪み発生回路の位置関係,つまり,プリ・イコライザーかポスト・イコライザーかです。 ぶっちゃければ,トーンと歪みの順番です。

回路図から読み取れる情報は少ないですが,なかなか巧妙な設計がしてあったりして面白かったりします。 例えば,ゲインをあげるとHPFのFcも上がる回路。これはかなり理にかなっています。ゲインを上げるとどうしても低音が濁りがちになります。 歪ませる前に低音をカットしておくと気持ちよく歪みます。 しかしそのままのFcでゲインを下げてクランチなどにすると低音がペラペラになってしまったりしますので,こういったFcが変化する回路は一挙両得です。

似たようなものにゲインを下げるとハイが強調される回路。 これはフェンダーのブライト・スイッチの原理と同じです。 ゲインを下げてクランチにするとどうも倍音がこもってしまい,退屈な音になりがちです。 高音域だけゲイン調整をバイパスして中低音だけゲインを下げることによって噛み付くような,叫ぶようなクランチが得られます。

プリアンプは比較的いじりやすく,理論どおりにことが運ぶことが多いです。 パワーアンプの設計はいろいろと考慮すべきことが多く,検証も難しいので奥が深いです。。


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