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真空管アンプの安全設計:対策

6:配線・実装技法


6-1:絶縁距離と基板設計

絶縁距離

いわゆるポイント・トゥ・ポイント配線では使用する端子板やラグ端子の絶縁がしっかりしていれば問題ありません。

しかし,基板を自分で設計する場合は「絶縁距離」を常に意識する必要があります。 プリント基板ならば絶縁距離はパターン間の距離を意味します。 ハト目を打ってアイレットボードを作るならば,絶縁距離は穴と穴の間の隙間を意味します。

高電圧が印加される端子同士は距離を離した方が安心だということは感覚的に理解できると思います。

ポイント・トゥ・ポイントではあまり気にならないのですが,プリント基板上では配線同士の距離を0.1mmといったオーダーまでつめることができます。

例えば100Vの電位差をもつ二つの配線はどの程度の距離を保っておけば安全でしょうか。

「このくらいの距離」を離しておけばまず事故は起きません,安全ですという距離が「絶縁距離」です。 IECなどの規格によって厳密に定義されています。

絶縁距離を適切に確保することによって,放電や絶縁破壊による過熱を防ぎ,火災や感電を防ぐことができます。

HRL流の絶縁距離は 1.0mm / 100V(+加工精度悪化分)

IECなどの規格はとても煩雑で難しいので,なかなか身に付きません。 あくまでも,自作屋が自己責任の範囲で使うという前提ですが,覚えやすくまとめてみました。

*私個人が勝手に定義しているだけですので,事故が発生しても自己責任でお願いします(笑)。。

絶縁距離は電位差100Vにつき1.0mmとします。交流の場合はピーク電圧とします。 あくまでも自作品という範疇で,覚えやすさ優先で定義してみました。

「絶縁距離」には「空間距離」と「沿面距離」があります。 ややこしい説明は省きますが,上記の数字は「沿面距離」を想定しています。

また汚染度という考え方があります。機器の使用環境としては以下のように想定します。

「結露は発生する可能性があるが非導電性の汚染しか発生しない屋内環境」

つまり風雨にさらされる屋外に設置する機器には適用できません。 また,飲み物をこぼすなどの汚染が発生すると故障の可能性があります。

単純化すると宣言した割にはいくつか条件があります。

絶縁距離の緩和条件

絶縁材料を使用している部分は距離を半分にしてもよい(注1)
空間距離として運用する場合は距離を半分にしてもよい(注2)

注1:絶縁材料とは:
ステアタイト(磁器:セラミック),テフロン,エポキシ樹脂等の絶縁性に優れる素材
フェノール(ベーク)はメーカーや等級によって耐久性が異なるらしい
これらの素材は,基板・配線板・端子台・ソケット・ホルダーなど絶縁性が要求される部分に使われている
注2:空間距離の実力:
空気絶縁は絶縁材料よりも絶縁性に優れるが覚えやすくするために同等として扱っている
実際に放電が発生する空間距離は1000V/1mm〜3000V/1mmといわれている

絶縁距離の強化条件

・交流電源の1次側の異極間はピーク電圧の4倍(実効値の5.6倍)として見積もる(AC100VならDC560V)
・交流電源の1次側と2次側間はピーク電圧の4倍として見積もる(AC100VならDC560V)
・交流電源の1次側と筐体などのアース間はピーク電圧の4倍として見積もる(AC100VならDC560V)

加工精度の考慮+1.0mm

「1.0mm/100V」という数字は加工誤差を含んでいません。加工精度の最悪値で見積もる必要があります。

素人の工作では1.0mm程度の誤差は普通に発生します。 つまり電圧が100V以下でも2.0mm程度の隙間は確保できる設計として図面を描くべきと思います。

真空管アンプにおける絶縁距離の実例

真空管ギターアンプでは最大で500V程度を扱います。先の指針に従えば最低でも5.0mmの絶縁距離を確保すればよいことになります。

さらに絶縁材料を使用した基板では半分の2.5mmでも大丈夫ということになります。 ただし,前述のように加工精度を考えてプラス1mm程度の余裕が必要なので3.5mmあれば安心と考えます。

◆DC500Vの配線
1:基本の絶縁距離:500V / 100 = 5.0mm
2:絶縁材料を使う場合は緩和:5.0mm / 2 = 2.5mm
3:加工精度を考慮:2.5 + 1.0 = 3.5mm ←これが絶縁距離

電源トランスの1次側(コンセントにつながる配線)は落雷や事故の可能性を考慮して4倍の余裕を見ます。

AC100Vではピークが140Vなので4倍して560Vになりますので,5.6mm以上の確保が基本になります。

しかし,通常1次側配線には絶縁材料を使って配線するので半分に緩和して2.8mmとなります。 加工精度+1.0mmを考慮すると3.8mmとなります。

◆AC100V電源の配線
1:基本の絶縁距離:100V * 1.4 / 100 * 4 = 5.6mm
2:絶縁材料を使う場合は緩和:5.6mm / 2 = 2.8mm
3:加工精度を考慮:2.8 + 1.0 = 3.8mm ←これが絶縁距離

AC120Vの場合も同じ数字で問題ありません。 AC240V(英国など)の場合は異極間は100Vと同じ数字でも大丈夫なようですが, 1次・2次間は6.0mm程度確保した方がいいようです。

いずれにせよ,今回の定義はあくまでも自作屋が自分自身の安全を担保するための数字です。 安規がどうのとか高度なレベルではありません。

ざっくり3.0mmでよろしく

あれこれ考えてよく分からなくなった。真空管アンプではざっくり3.0mmあれば問題ないでしょう。

ただし,穴の中心点同士の距離ではないことに注意です。 直径が5mmハト目を使ってアイレットボードを作るならば, 3mmの絶縁距離を確保するためには穴の中心点同士を8mm離す必要があります。 プリント基板の場合も同様で,パターンの中心同士の距離ではなく,パターンとパターンの隙間の距離になります。

ソケットや端子台など,メーカーが作っている部品ならば耐電圧についての仕様がありますのでその数字を尊守します。

部品における実例

L-3552
引用:サトーパーツ

■メーカー仕様
■耐電圧 : AC300V (1分間)
■絶縁抵抗 : DC100V、30MΩ以上

真空管アンプの工作で一般的に使われるラグ端子の図面を拝借してきました。

電極の幅が図示されていませんが4.0mm程度ですので電極間の間隔は図面上では3.5mmと読み取れます。 ただし,公差を考えていませんので最悪3.0mm程度になることが考えらえれます。

100V/1mmという考え方によると300Vまで使えます。フェノールの絶縁性が十分ならば2倍の緩和を行い600Vまで使えることになります。

とはいうものの,メーカーの保証値はAC300Vです。 AC300Vはピークでは424VとなりますのでDCで使用する場合の目安となります。


絶縁距離は奥が深い,深すぎる

絶縁階級という言葉があります。A種絶縁,E種絶縁,B種絶縁などと言います。 トランスでよく使われる規格のようです。 100℃などといった規定温度で20年間の絶縁力を維持できるということのようです。

また,空間距離については海抜2000mまでとそれ以上では規格が違うらしいです。 気圧がさがると放電しやすくなるようです。

とにかく条件付けが非常に細かく,理解に苦しみます。苦しくて放棄しました。

1次資料のキーワードとしてはこんな感じかな。
IEC60065,IEC60083,IEC60085,IEC60664,IEC60950,IEC61984


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