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真空管アンプの安全設計:対策

7:安全面から見た部品選定


7-3:その他部品

整流ダイオード

シリコン整流ダイオードはショートモードで故障することがあります。 部品としては壊れやすい部類に入りますので余裕を持たせた方がよいでしょう。

また,ダイオードが故障すると1次側ヒューズが溶断しない程度の中途半端な電流がだらだらと流れ続けて電源トランスが過熱することがあります。

基本的には耐圧と許容電流を考慮して決めれば良いのですが,そこに落とし穴があります。

整流ダイオードの耐電圧

耐圧はトランスのタップ電圧にマージンを加えて考えます。

理論的にはブリッジ整流ではタップ電圧に示される実効値の1.4倍のピーク電圧がかかります。

同様に両波整流ではタップ電圧(片側)に示される実効値の2.8倍のピーク電圧がかかります。

スタンバイ状態ではタップ電圧が10%以上高く上昇しますので1.5倍以上(両波は3倍)のピーク電圧がかかると考えます。

さらに余裕を見て2倍(両波なら4倍)程度を選ぶのが良心的な設計であるように思います。

ところが,見過ごされがちな落とし穴がまだあるのです。

電源トランスはインダクタンスを持ちますので急激な電流変動に対してキックバックを発生します。 ギターアンプではスタンバイスイッチを持つことが多いのですが,スタンバイスイッチを切ると電流が急激に減少します。 この電流の急激な現象によってトランスの2次側タップに予想外の高電圧が発生することがあります。

このキックバック電圧が整流用のダイオードにもろにかかってきます。

このような稀にしか発生しない過渡的な電圧の場合,1発でダイオードを破壊するには至りません。 何度も繰り返すうちに少しずつストレスが蓄積されてやがて確実に故障します。

したがって,整流ダイオードはブリッジ整流の場合はタップ表示電圧の4倍(両波整流ならば6倍)以上の耐圧があるモノを選ぶと安心です。

タップ表示電圧が320Vであれば,1280V以上(両波なら1920V以上)となります。

よくつかわれる1N4007は耐圧が1000Vですので,ちょっと心もとないです。 ただし,多くのアンプメーカーが採用していますので実績はあります。 不安であれば2本直列にするという対策があります。

整流ダイオードの許容電流

許容電流は最大出力時の電流と電源投入時のラッシュカレントを考えます。

最大出力時の電流は+B電源の消費電流です。1Aあればおつりが来ます。

電源投入時のラッシュカレントは計算で求めます。

電源投入時はコンデンサーの電荷はゼロですからショート状態と同じです。 ですから,ラッシュカレントは+B電源がショートした時の電流を計算します。

+B電源が450Vであればその電圧をトランスの2次側巻き線の抵抗値(数十Ω)で割ってやります。

1次側の巻き線抵抗と電源ラインの抵抗も多少効くと思いますので,厳密には2次側の抵抗値に換算して足してやります。 しかし,加算すると条件的には楽になる方向ですので,まずは1次側を無視して計算してOKならば余裕分とみます。

+B電源が450V,トランスの巻き線抵抗が45ohmならば10Aになります。

思った以上に大きい数字が出てきますが,普通の真空管アンプであればサージ電流は10msec以下で収束します。

整流用のダイオードは10msec程度のサージ電流ならば定格電流の数十倍の電流に耐えられます。 サージ耐量はダイオードによって異なりますので仕様書で確認します。

ちなみによくつかわれる1N4007は平均1A,ピークで30Aとなっていますので問題ありません。


電源スイッチ

MILなどの規格を満たした電源専用のスイッチを使うと安心です。

端子部分が小さくて隙間の少ない小型のトグルスイッチなどはもってのほかです。

電源用のスイッチは端子部分が大きくがっちりしていて,絶縁距離が十分に確保されています。

ロッカースイッチなどでもとにかくAC250V以上で使える電源用のものを使用します。

電流容量も5A以上は必要で,10A以上でもかまいません。

火花消し(スパークキラー,スナバ)は電源用のもの(AC125V〜AC250V)を使います。


スタンバイスイッチ

高電圧を切り替えますので慎重に選定します。 実績のあるスイッチを使えば安心です。

高電圧直流の遮断はアーク(放電)が発生しますので専用スイッチが必要になります。 最近は太陽電池やハイブリッドカーの普及で大容量の高圧直流遮断器が見直されています。

しかし,スタンバイスイッチに要求されるDC500V-1A程度の定格のスイッチはなかなか見つかりません。

仕方なく交流用の電源スイッチを流用するのですが,安全性や信頼性の確認が難しいところです。

電源用のスイッチは交流の遮断を考えて作ってありますので,直流を遮断する場合には定格が下がります。 例えば,AC250Vを切り替えられるスイッチでもDCでは30Vまでという例もあります。

一説によると直流の場合は電流定格か電圧定格のどちらかを1/10に低減すれば使えるらしいです。 つまり,3A-250Vの交流用スイッチならば,0.3A-250Vか,3A-25Vの直流で使えるということです。 厳密ではありませんが,目安としてはよいかもしれません。

他の方法として2回路入りの電源用のスイッチを使い,の二つの接点を直列にして耐圧を稼ぐこともできます。

スタンバイスイッチは直流を遮断するのでスパークキラー(スナバ)は重要です。 AC電源用の火花消し(スパークキラー,スナバ)では耐圧が不足する可能性があります。 大容量の抵抗と耐圧が十分に有るコンデンサを直列にした回路をスイッチの直近に取り付けます。

スナバの抵抗値は100Ω〜470Ω,コンデンサの容量は0.01uF〜0.1uFが一般的なようです。 スナバーの目安は1Aにつき0.1uF,100Vにつき100Ωと言われていますが,上記の範囲でいくつが最適なのかは実測するしかありません。

立ち上がりの早いパルスを扱うので,抵抗器には誘導成分のある巻き線抵抗を使ってはいけません。 また,抵抗の最高使用電圧に注意が必要です。 端子間のスパークを避けるため,できるだけ長さのある抵抗が好ましいです。 専用部品にはサージ耐圧の高いカーボン・ソリッド抵抗がつかわれるようですが,2W〜5Wくらいの酸化金属抵抗でもよいと思います。

コンデンサの耐圧はインダクタンスによるキックバックを考えると電源電圧の2倍以上の耐圧が必要と思います。

最近増えてきた直流専用スイッチには有極性のモノがあります。 極性を持つ理由には二つの理由があります。

ひとつは磁力を使ったアーク対策をしている場合,もうひとつは接点の熱容量の大小です。

真空管のプレートとカソードの関係を思い出せばわかりやすいですが,アークが発生しているときは電子が飛び込んでくる陽極の方が熱の発生量が大きくなります。 つまり,陽極に熱容量の大きい接点を持ってきた方が接点の温度を下げることができます。

この関係はリレーなどの他の接点についても言えます。 陽極側に熱容量の大きな接点(通常は固定接点)を接続することで延命効果があります。


ノイズ・サージ対策部品(C1,Z1)

コンデンサーは電源に乗ってくるノイズを吸収するために入れています。 容量は大きい方がノイズ吸収効果が高いですが,無効電流が増えますので程々にしておきます。

コンデンサーはX1クラス,X2クラスのものを使用する必要があります。 容量は0.1uF〜0.47uF程度のものが入手容易です。

バリスタ(Z1)は電源に乗ってくるサージノイズを吸収するために入れています。 真空管やトランスを保護する役割があるそうです。

100VのAC電源には240V〜270Vのものを使います。 バリスタ電圧は高すぎると効果が薄く,電圧が低いモノを使うと早期に故障します。

しかも,バリスタはショートモードで故障するそうです。 耐量が小さいものは故障時の短絡電流が小さく,ヒューズで保護できず,発煙・発火や破裂することがあるそうです。 耐量が大きめのもの(2msec 30J 以上)を使っておくと故障時の短絡電流でヒューズが飛ぶので安心です。


ACインレット

ヒューズより手前にあるためヒューズでは保護できません。 そのため高い安全性が要求されます。

耐トラッキング性能が重要になりそうです。 端子の発熱量,つまり接触信頼性が高く,接触抵抗が低いこと,温度が高い状態での物理的強度,難燃性等が重要になりそうです。

例えば,端子に半田付けをする際に樹脂が溶け出して端子が動いてしまうようなモノは使い物になりません。

樹脂モノは日本製がいいような気がします。

ヒューズホルダーと電源スイッチ,ノイズフィルターをACインレットに一体化したモノもがあり,使い方によっては便利です。


フィルターコンデンサ(C2,C3)

耐圧が十分に高いものを選定します。

トランスタップ電圧の1.5倍以上,2倍見ておけば安心です。 例えば320Vのタップは整流すると理想的には√2倍で452Vになります。 (実際はロスがありますのでやや低くなります)

しかし,無負荷時(スタンバイ状態,もしくは真空管をすべて抜いた状態)は電圧はさらに数十ボルト上昇します。 450V耐圧のコンデンサではやや心もとなくなります。 整流管を使用している場合はタップ電圧がさらに高くなりますので,450V耐圧のコンデンサでは間に合いません。

そこでコンデンサを直列にして耐圧を稼ぎます。 電解コンデンサを直列にする場合は漏れ電流による印加電圧のアンバランス化が懸念されるため並列に抵抗を入れてやります。 抵抗値は大きすぎるとアンバランス化を防ぐことができませんが,小さいと発熱が大きくなります。 漏れ電流の最悪値を見積もって,それぞれのコンデンサの耐圧を超えないように抵抗値を設定するのが正しい設計方法です。

電解コンデンサーは寿命があります。10℃温度が高くなると寿命が半分になるといわれています。 近くに熱源を置かないこと,通気のよい場所に設置することを考えます。 特に整流器に一番近いコンデンサーはリップル電流がたくさん流れますので発熱が大きくなります。

電解コンデンサは寿命がありますのでやがて交換するこを前提として取付方法を考えるべきと思います。

ちなみに電解コンデンサーが寿命に近づくと電解液が減ってきますので容量が減ります。「容量が抜けた」状態となり実際に重さも軽くなります。

最近はメタライズドフィルムで高耐圧大容量のものが出てきていますのでそれを利用するのもよいと思います。

コンデンサーには許容リップル電流という規格もあります。 交流信号を流すとESR(抵抗)分が発熱するのでコンデンサーが熱くなります。 整流器に一番近いコンデンサーには低ESR品を選ぶと発熱が少なくなります。 このコンデンサーは要注意ですので,完成後に発熱の状態を確かめたほうが良いと思います。


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