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真空管アンプの安全設計:対策

7:安全面から見た部品選定


7-4:安全な部品を選ぶ目

設計上もっとも基本的な指針は「定格を守る」ということです。

自作だとどうしても「なんとかなるだろう」という甘い誘惑に駆られて定格オーバーで使用してしまうことがあります。

部品は正直ですので定格オーバーで長期間使っていると必ず壊れます。

規格書を入手して耐圧や耐電流,許容電流量,動作条件(温度等)などを確認します。インターネットの時代なので助かります。

抵抗器であれば,定格電力と使用電圧に注意をします。もっとも基本的な設計事項です。

コンデンサーは耐圧を必ず守ります。 通常コンデンサーは発熱しませんが,耐圧を超えると漏れ電流が流れ発熱します。 漏れ電流はノイズ源になりますし,最悪の場合,破裂する可能性もあります。

整流フィルタのように日常的にリップル電流が流れるコンデンサは定格リップル電流を守らないと発熱過多で故障します。

真空管にも半導体にもトランスにも,定格電圧と定格電流,定格電力があります。 特に半導体は一瞬で破壊しますので,データーシートをよく読んで一瞬たりとも定格を超えないように設計していきます。

データシートに記載されている「設計最大定格」は設計センター値として許容できる定格です。 一方「絶対最大定格」は様々な条件が全て最悪になった場合でも超えてはならない定格です。

「絶対最大定格」を超えるとデバイスは瞬時に破壊するか,不可逆なダメージを受けてやがて故障します。

部品を組み立てる時に無理な力を加えたり,落として衝撃を加えたり,半田ゴテで過熱しすぎたりすると故障を誘発することがあります。

真空管アンプの自作では色々考えるとキリがありません。 ですから形状が大きくてリード線が太い部品を選ぶというのが安全性と信頼性につながっていきます。

信頼性の高い専用部品を使う

定格をよくよく守って使用していても偶発的な部品不良は発生します。

偶発的な部品不良に対してはまず信頼性の高い部品を選択することが対策になります。

例えば,スイッチやヒューズホルダーはMIL規格や防衛庁規格などのものが手に入ります。 軍用規格は普段使いの装置にとってはかなりのオーバースペックですが,安心して使うことができます。

専用部品を使うという意味では電源スイッチは電源用のスイッチを使います。 当たり前のことのようですが,自作屋はついつい手持ちの部品で代用してしまったりします。

他にも電源の1次側に入れるコンデンサーは「Xクラス」という専用の部品があります。

市販されている製品は安全規格によって認定された専用部品を使っています。 安全規格に違反すると製品を販売することができません。

いい香りのするビンテージな部品やジャンクで購入した怪しい部品ではなくフレッシュな日本製の部品が安心と思います。

no more vintage

部品の故障モードを知る

部品が壊れるときにどのような壊れ方をするのか知っていると対策をとれます。 部品の壊れ方を「故障モード」と言ったりします。

2端子の部品で故障モードを説明します。 2端子間がショート状態で故障すると「ショートモードで故障」と言います。 2端子間がオープン状態で故障すると「オープンモードで故障」と言います。

抵抗はオープンモードでの故障が多く,ダイオードやコンデンサーはショートモードで故障するものもあります。 半ショートや半オープンというタチの悪い状態も考えられます。

故障モードを知っていると対策が取れます。

代表的な例では,VR(可変抵抗器)は2番端子がオープンになる故障が想定できます。 パワーアンプのバイアス電圧調整用のVRは2番端子がオープンになった時に電流が少なくなるように回路設計しておきます。

故障モードの想定は異常試験の試験条件につながっていきますので重要な設計事項です。 故障モードが特定できない部品は自分で壊してみると安心できます。

寿命を延ばす使いこなし

アンプ内部に使用する素材の組み合わせや,メンテナンス,保管方法などで寿命が変わってきます。

樹脂の劣化は温度が高いと加速されますので使用時に温度が上昇しないような工夫が必要です。

接点復活材や潤滑剤,クリーナーなど樹脂部品を侵す有機溶剤の使用にも注意が必要です。

人間の皮脂や汗も樹脂や金属を劣化させます。ハンドクリームを使用している人や,汗っかきの人は要注意です。

湿度や紫外線も樹脂の劣化を加速させますので,保管時の環境にも注意が必要です。

段ボールからは様々な物質が放出されることがあります。金属を錆びさせたりすることがあるようです。

黄銅(真鍮)はアンモニアガスによって劣化することがあるらしいです。

このような物質の物性はボディブローのように徐々に効いてきます。 完成したばかりの真空管アンプが安全だというのは大いに自信を持って主張できても,10年後も安全かどうかはなかなか胸を張って主張しづらいものです。

温度と寿命

劣化につながる色々な要素を列挙しましたが,まず第一の心がけとして,できるだけ低い温度で使うことが挙げられます。

一般に10℃温度を下げると寿命は2倍になるといわれています。これはアレニウスの定理と呼ばれています。

部品の温度上昇と定格電力のディレーティング

部品自体の温度は部品自体の仕様(電力容量や温度ディレーティング)によって制限されます。

温度が上昇しやすい部品は「真空管」「トランス」「抵抗」「電解コンデンサ」です。 電力容量を守ること,電解コンデンサはリップル電流に注意すること,温度ディレーティングを考慮することが必要です。

温度ディレーティングとは,部品の使用温度が高い場合に許容電力量や電圧を低減する(制限する)規則です。

Fig:2は抵抗器の温度ディレーティングカーブの例です。

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Fig:2 BR>引用:タクマン電子

この場合,周囲温度70℃までは定格いっぱいで使えますが,110℃では定格の半分までしか電力消費させてはいけません。

もう少し深読みしてみましょう。

最高使用温度は155℃ですから,70℃で定格いっぱい使用した場合,発熱によって155℃に達することが考えられます。 つまり,定格いっぱいで使用すると85℃の温度上昇が発生すると考えられます。

一方,ディレイティングカーブの傾きから定格の30%で使った場合,温度上昇は20℃程度になることが期待できます。

装置内の温度が75℃になったとすると定格の30%で使用している抵抗器の温度は95℃になります。

ちなみに100℃を超えると配線材の被覆が溶けてきますので,抵抗器と配線材が触れていると危険です。

一般的に言われている消費電力は定格電力の30%が目安という数字はこのあたりから出てきます。

抵抗器の種類によってディレーティングカーブも変化しますし,最高使用温度も変わります。 空冷が前提のホウロウ抵抗は表面温度が200℃に達することもありますので,ディレイティングはより厳しく見ます。


いかがでしょうか。

わたしの経験談ですが,アンプの設計は回路の設計だと思っています。

初めて作ったトランジスタアンプは熱暴走して5分で壊れました。 半導体アンプでは出力段の熱設計が重要だということは後から知りました。

真空管アンプはそれほど重要ではないですね。 なぜなら物理的に大きく風通しもよく,そもそも真空管は過熱して機能を発揮しますから高熱に耐えられるようにできています。

実はアンプの設計で難しいのは部品配置や組立方法だったり,安全性の担保だったりします。 これは最近気付いたことです。


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