真空管ギターアンプの回路設計


フェーズインバータ(位相反転段)

フェーズインバータ(Phase Inverter)とはプッシュ・プル方式で必要になる回路です。 プッシュ・プル動作に必要な信号の極性が反転した差動信号を作り出し,出力管をドライブする役目があります。

ロングテール方式(Long Tail,ムラード型:Mullard,差動型:Differential)

2つの真空管のカソードを結合して共通のカソード抵抗としてGND(グランド)に接続する方式です。

2本の真空管のうち,片側のグリッドに信号を入力します。こちら側は通常のカソード接地動作となります。

反対側の真空管のグリッドはコンデンサで交流的にGNDへ落されカソードに信号が入力されるグリッド接地動作となります。

ロングテール方式は若干ゲインがあります。双3極管1本(2ユニット)が必要になります。

グリッド接地側の動作点を持ち上げてOPTの2次側からカソード接地側のカソードへNFBをかけることも出来ます。

フェンダーのほとんどのアンプが採用しています。マーシャルは全てこの形式です。 現在のギターアンプの標準的な方式といってよいと思います。

正相側と反転側で若干ゲインが異なるので,プレート抵抗に重みをつけてバランスをとる必要があります。 フェンダーのアンプではプレート抵抗に100kΩと82kΩがよく使われます。

ACバランスと称して100kΩと82kΩの抵抗値を微調整できるアンプもあります。 適正な調整が行えれば,より厳密なプッシュプル動作が期待できます。

カソード共通抵抗の変わりに定電流回路で引っ張るという方法もあり,差動型と呼ばれます。 共通抵抗のインピーダンスが大きければ正相側と逆相側のゲイン比も小さくなりバランスがよくなります。

P-K分割(カソダイン:Cathodine)

フェンダーアンプのツイード時代の一時期と小出力のアンプに採用されていました。 その後使われないことを考えると何か問題があったのかもしれません。

カソード抵抗とプレート抵抗を同じ値にして反転した信号を取り出す方式です。 ゲインはありませんが,双3極管の片側だけで反転動作が行なえます。

負荷インピーダンスが変化するような使い方をすると正相側と反転側でバランスが取れなくなってしまいます。 また,出力振幅を大きくとるのが難しく,設計には電圧配分の最適化が必要になります。

主に6V6やEL84など,小出力でバイアス電圧の小さいパワー管のドライブに向いています。

トランス反転

トランスを利用して反転信号を得る方式です。

ドライブ段のプレートにトランスの1次側を接続します。 2次側をグリッドに接続します。 センタータップ(CT)をGNDか負電圧に接続すれば出来上がりです。

回路が簡単になります。

トランスの2次巻き線のDCRは小さいので熱暴走の防止にもなります。

その他

オート・バランス方式や,グリッドチョークによる反転などの方式があります。 P-K分割と差動型を組み合わせたものや,前段と直結にしたP-K分割方式もあります。

オーディオでは色々な方式が模索されていますが,ギターアンプではフェンダーの採用した回路が単純かつギターの音色にあっていたためか,長らく使い続けられているようです。

まとめ

フェンダー,マーシャル,メサ・ブギーなど,さまざまなアンプがありますが,位相反転段の設計はほとんど同じです。

大きな違いがあるとすれば,12AX7を使用するか,12AT7を使用するかという違いくらいです。 12AT7の方がプレート内部抵抗が低いのでパワー管のドライブには向いています。 が,歪みやトーンはどうかというとまた別の問題で,12AX7の非力さがよい味になっている場合が多いように思います。


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