真空管ギターアンプの回路設計


ギターアンプとスピーカーの関係について

おまけでスピーカの解説です。

エレキギター用のスピーカーは電力を音響出力へ変換する能率が100dB/W以上と大変高くなっています。 通常のオーディオ向けスピーカーでは90dB/W前後のものがトレンドです。

同じ出力のアンプで鳴らすとエレキギター用のスピーカは10倍以上の音響出力が得られます。 (耳で感じる音量は10倍にはならず,2倍から3倍くらいになると言われています)

この感度のよさがエレキギター特有の明るくメリハリのある音色へとつながっています。

オーディオ用のスピーカーにギターアンプを接続してもドンシャリでモコモコ・ザラザラゆって前に出てこない音になってしまいます。

最近は各メーカーのギター用スピーカーが入手できますので,ギターアンプは黙ってギター用のスピーカで鳴らすのがよいと思います。。

主なメーカー

セレッション(CELESTION)」は元はイギリスの老舗メーカーです。 マーシャル,VOXなどのイギリスのアンプを始め幅広く採用されています。 メサ・ブギー,マッチレスなどのOEMも手がけているようです。

エミネンス(EMINENCE)」はアメリカのメーカーで現在も様々な楽器用スピーカを生産しており,フェンダーを筆頭に幅広く採用されています。 元々OEM専門のスピーカメーカーですが,近年はオリジナルブランドも展開しており,現在もとても幅広いラインアップを誇っています。

ジェンセン(JENSEN)」は古くはアメリカのメーカーです。 劇場用・家庭用を含めて様々なスピーカーを製造販売していたメーカーです。 初期のフェンダーに採用されていており,明るくメリハリのあるトーンを持っていたということです。 最近のジェンセンブランドのスピーカーはイタリアで設計・製造しています。

その他,著名な現行メーカーは「フェーン(FANE)」,「ウェーバー(Weber)」,「ピービー(PEAVEY)」,「EV(ElectroVoice)」などなどが挙げられます。

現行メーカーですが楽器用スピーカーの製造をやめてしまったメーカは「JBL」,,,だけですね。

死滅したメーカとしては「オックスフォード(Oxfoad)」,「ユタ(Utah)」,「CTS」,「アルテック(ALTEC)」,「ガウス(GAUSS)」などが挙げられます。

国内メーカーでは「ヤマハ」や「ローランド」,「フォステクス」,「TOA」が楽器用スピーカを作っていたことがあります。

コーン紙が軽くて能率が高い8"〜15"のスピーカであれば使えるとは思いますが,ヤワナ構造ではすぐに壊れてしまうかもしれません。


磁石の種類

スピーカーを語るのに一番ホットな話題が磁石の種類です。

アルニコとフェライト

スピーカに使われる磁石は大きく分けてアルニコ磁石とフェライト磁石の2種類あります。 アルニコ・マグネットはアルミ,ニッケル,コバルトを主成分とするマグネットで銀色の金属色です。 フェライト・マグネットは鉄を主成分とするマグネットで艶消しの黒色です。

アルニコ磁石とフェライト磁石では磁石としての性質が大きく異なります。

アルニコ・マグネットの方が磁束密度は高いのですが保磁力が弱いため強力な磁力を保つためには長細い磁石が必要になります。

一方,フェライト・マグネットは磁束密度が低いので強力な磁力を得るためには大きな面積の磁石が必要になります。

このような物性の違いのために磁力をコントロールする磁気回路の構成が大きく異なります。

内磁型と外磁型

アルニコは内磁型と呼ばれる形式です。ボイスコイルの内側に縦長の磁石を組み込んでいます。 フェライトは外磁型と呼ばれる形式です。面積を稼ぐためにボイスコイルの外側に大口径の磁石を配置しています。

違いは?

アルニコとフェライトでは傾向的な音の差はあるようですが,磁気回路の工夫で似たような磁束分布も得られるようです。 磁石の違いよりもコーン紙やダンパー,エッジの差が支配的だと理解しています。

一概にアルニコがよいとは言えませんし,フェライト・スピーカを好むギタリストもいます。

アルニコは減磁しやすいという欠点もありますので,古いスピーカーには注意が必要です。 そういった意味でもスピーカは個体差が大きい製品だと思います。

ネオジムとはなんじゃ

最近はネオジム・マグネットを使用したスピーカーも出始めました。 ネオジムはアルニコよりもさらに磁束密度が高く,保磁力も高いので使用する磁石の量を少なく出来ます。

しかし,熱に弱いという欠点があり,長時間大電力を扱うスピーカーへの応用が避けられてきました。 最近では加工技術の進歩により様々な形状のネオジム・マグネットの製造が可能になってきたこと,接着方法や磁石表面を保護する保護膜の信頼性が向上したことなどによりスピーカにも応用されるようになりました。

ネオジム・マグネットを使用したスピーカーのバスケットが多くのヒダをもつアグレッシブな形状をしているのは放熱を考えてのことです。


スピーカーは生楽器

スピーカーはアコースティック楽器と同じですので,新品とエージング後では音が異なります。 きっと気温や湿度でも変わってくると思います。 そういった意味ではエレキギターはやはり生楽器なのだと思います。

古いスピーカーはへたっている可能性が高いです。 そのへたりが良かったりするのかもしれませんが・・・

トランスやコンデンサーと同様に寿命がある部品なのでできれば質の良い新品スピーカーが常に手に入るとうれしいです。

最後に,,,工業製品ですから,固体バラつきも当然あります。感度の高いスピーカーほど製造には高い技術が必要になります。 精密加工の技術はこの100年で格段に進歩しましたが,スピーカーに関する技術はこの100年でまったくと言っていいほど進歩がありません。 むしろ安価に製造するためのマージンとして組み立て方法や加工精度が犠牲になっているとも思えます。

ギターよりは工業製品に近いと思いますが,安定したトーンを維持するためには非常に大きな労力が必要と思います。 そういった意味で老舗ブランドが生き続けているのではないでしょうか。


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