真空管ギターアンプの部品選定


コンデンサの選定(フィルム・その他)

コンデンサ(Capacitor)は電気を溜める働きがあります。 この働きを生かして高周波を落とすフィルターとして使われます。 逆に応用すると直流を阻止して交流(音声信号)だけ通すこともできます。


種類

ギターアンプでは,電解コンデンサー,フィルムコンデンサー,マイカコンデンサー,セラミックコンデンサー等を使用します。

どのコンデンサーにも言えることですが,リード線にストレスをかけると内部で接触不良をおこすなど故障につながります。 フォーミングの際にはリード線の根元にストレスが加わらないように気をつけることです。 また,落下させたり過度な衝撃を加えると特性が劣化することがありますので注意してください。


フィルムコンデンサーの種類

フィルムコンデンサーは誘電体と導体の関係から,メタライズド・フィルムとフォイル・フィルムの2種類に大別できます。

フォイル・フィルムは「箔巻き」と呼ばれていて,薄い金属箔と樹脂フィルムを交互に巻いたものです。 フォイルの薄さに限界があるので形状はどうしても大きくなってしまいます。

一方メタライズド・フィルムは樹脂フィルムに金属を蒸着させたものを巻いたコンデンサです。 金属膜を薄くできるので小型にできるのがメリットです。

フィルムコンデンサーに使用する樹脂を5つほど紹介します。

●ポリエステル(Polyester):
  一般的にはマイラーとも呼ばれています。もっとも一般的です。 ペットボトルに使われるPETもポリエステルの仲間のようです。
オレンジドロップの418P,Maroly 150's,SOZO,WIMA MKS・FKS,ERO KT・MKT,マスタード,トロピカルフィッシュなどなど幅広く使用されています。 特性的にはとても良いというわけではありません。 しかし,音質的な評価が高い品種もあります。

●ポリプロピレン(Polypropylene):
  電気的特性に優れます。バケツやタッパーの素材です。高耐圧のモノが多く,真空管アンプにはよく使われます。
オレンジドロップの715P・716P,ASC X363,SOLEN FAST,WIMA MKP・FKP,ERO KP・MKPなどがポリプロピレンです。 音質のイメージはカチッとした質感です。

●ポリカーボネード(Polycarbonate):
  高温に強く温特がよいようです。CDやDVDの素材です。 最近はあまり一般的ではありません。古いコンデンサーに見受けられます。
WIMA MKC・FKC,ERO KC・MKCがポリカだそうです。 国内では金田式アンプ御用達,双信のV2Aがポリカーボネードでした。

●ポリスチレン(Polystyrene):
  スチロールコンデンサ,略してスチコンと呼ばれます。電気的特性は良いです。発泡スチロールやCDケースの素材です。 耐熱性が悪いのと薬品や溶剤に弱いので使用する際は注意が必要です。
秋葉原の部品屋さんではいまだに銅箔巻きのスチコンが売っています。根強い人気があるようです。 高精度のものが多く,フォノEQでよく使われます。 大容量のものと高耐圧のものが入手難で真空管ギターアンプには使いにくいです。

●紙(Paper):
  絶縁紙にオイルを含侵させるとオイルコンデンサーになります。イメージはアブラ取り紙です。
また,メタライズド・ペーパー(MPコン)としても古いコンデンサーに使われていました。 湿気を吸うと絶縁耐圧が劣化しますので,漏れ電流を測る環境がない場合は使用しないほうが無難です。 紙という素材からして楽器と親和性が高そうですが,いろいろ種類がありすぎて使う気になりません。 ぜひともこれというものを見つけて買い占めてください!そしてこっそり教えてください(笑)

その他にはPPSを使用したコンデンサが増えてきました。 また,テフロンを使用したコンデンサーもありますが,特殊な用途向けです。

最新の製品動向としてはフィルム・コンデンサーも高容量・高密度に走っており,低耐圧化が進んでいます。 国内では箔巻きコンデンサーが次々に製造中止になっています。 ギター,オーディオに関わらず真空管アンプに向くコンデンサーがどんどん減っています。

コンデンサーの電極に使用する金属は,最も一般的なアルミニウム,そして,亜鉛,錫,銅,銀が挙げられます。 単純に値段も変わりますが,なんとなく錫より銅,銅より銀が良いように思ってしまうのが人間の悲しい性でしょうか。。

主にメタライズド・フィルムに使われる方法ですが,電極の引き出しにメタリコンという溶けた金属を溶射する方法があります。 この部分は剥がれやすいのでリード線の根元にはストレスをかけないように注意が必要です。

その他コンデンサーの種類

コンデンサーの素材としてはその他にマイカとセラミックがあります。

マイカ・コンデンサは古くは天然のマイカ(雲母)を金属板の間に挟んで作られていました。

高周波特性が良いことから通信機でよく使われます。信頼性も高いですが,高価です。 音的には明るく明確な音です。

セラミックコンデンサは磁器で作られます。つまり焼き物です。 泥を練って高温で焼成して作ります。 日本にも著名なメーカが数社あり,海外製のビンテージ・アンプでも日本製のセラミックコンデンサが使われていることがあります。

小容量のモノは特性が良好です。音質のイメージは無機質な乾いた音です。


耐圧選定の例

増幅段の段間に入る結合コンデンサはフィルムコンデンサを多用しますが,耐圧は630Vがちょうどよいです。 プリアンプ部分に限っては400Vでも大丈夫だと思います。

耐圧の高いコンデンサーは誘電体が厚くできています。2重構造になっているものもあります。 誘電体が厚い分,大型になります。

小型のものは電気を通す導体が薄くなるので抵抗分(ESR)は上昇すると考えています。 大電流が流れる部分には大型のコンデンサーを使ったほうが良いです。

厳密にはフィルムコンにも許容リップル電流があります。 交流を印加する場合は周波数が高くなれば耐圧も減ります。 しかし,真空管アンプのような使い方では許容リップル電流はまず問題になりません。

むしろ許容リップル電流を公表しているコンデンサーは信頼性が高く,高電流が流れるスピーカー・ネットワークのような用途に適していると言うことができます。


アウトサイド・フォイルについて

フィルムコンデンサーには電解コンデンサーのような化学的な極性はありません。 しかし,接続方法を考えると考慮すべき点があります。そういう意味では極性があります。

もし,アウトサイド・フォイル(Outside Foil:巻き終わり)という言葉を聴いたことがあって,気を遣うならば,諸説ありますが, 「巻き終わりが低電圧側に来る」ように配線することを勧めます。

理由はコンデンサーマイクの原理と同じです。

コンデンサーにチャージされる電荷はQ = C * V(Q:電荷,C:静電容量,V:電圧)であらわされます。

コンデンサーのアウトサイド・フォイルはシャーシなどのGNDに対して浮遊容量を持ちます。 振動などによってコンデンサーが動くと浮遊容量が変化します。 浮遊容量Cが変化したときの電荷Qの変化量は,「Q = C・V」の法則から印加電圧Vに比例します。 コンデンサーに振動が加わって浮遊容量が変化する現象を考えた場合,印加電圧が高いほど電荷の変化量が大きくなります。 つまり,アウトサイド・フォイルを高電圧側に持ってきた場合のほうが影響が大きくなります。 結果的に機械的な振動が電気的なノイズに変化すると言うことになります。 このノイズの大きさはインピーダンスにも比例します。真空管回路は印加電圧が高く,インピーダンスも高いので影響が大きくなります。

簡単に計算してみました。2009-04-14加筆,2009-05-25修正(回路インピーダンスを1Mohm→100kohm)

<条件>

振動周波数          100[Hz] sin波 ω=2πf
浮遊容量             10[pF]
容量変化            0.5[pF]sinωt(容量変化率 = 10[%]p-p)
印加電圧            200[V]
回路インピーダンス 100k[ohm](Z1//Z2)

 -----+-------|C|-------+
 ↑   |        T        |
電圧  Z1     浮遊容量   Z2 回路インピーダンス
 ↓   |        |        |
///  ///      ///      ///

<計算>

Q = C・V より
儔 = 僂・V

儔 = 0.5・sinωt[pF] x 200[V] = 100・sinωt[pQ](電荷の変化量)

I = dQ/dT = 100E-12・ωcosωt[A]
I = dQ/dT = 100E-12・2πfcosωt[A] = 63E-9cosωt(発生する電流変化)

V = I・R = 63E-9 x 1E5[ohm] = 63E-4cosωt[V] = 12.6[mVp-p] (発生する電圧変化)

回路インピーダンスを100kohmに下げたけどまだ大きい。計算あってるかな・・・

ギターアンプの初段(12AX7の1段増幅)で考えると,入力が100[mVp-p],Gainが30倍として,出力電圧が3[V]になります。 これに対して12.6[mVp-p]なので,S/Nは-50dB程度と計算されます。これは影響があるでしょう。

アウトサイドフォイルを低電圧側に持ってくる理由としてもうひとつ,高電圧がかかっている部品は静電気で埃を吸い寄せるという嫌な現象もあるようです。 ブラウン管のテレビなんて最近は流行ではありませんが,すぐに真っ黒に汚れてしまいます。同じ理屈です。

ビンテージ・マーシャルのアンプ内部の写真などが手軽に見れるようになりましたが,よく見るとコンデンサーによって埃の付き方が異なります。 やはり,アウトサイド・フォイルが高圧側だと汚れてくるのです。そしてそう,必ずしもアウトサイド・フォイルを低圧側に持ってきているわけではありません。 厳密に管理されていたかというとかなり怪しいです。つまり,あまり気にしていなかったのでしょう。 クローンを作ろうと思うならちゃんとコピーしないと同じ音になりません(笑)。

フィルムコンデンサーの極性を議論するとき,プレート側をアウトサイド・フォイル(巻き終わり)にするか,グリッド側にするか見解が分かれます。 信号の入り口をアウトサイド・フォイルにするという説があります。 あまりにあいまいな説明のしかたです。根拠を説明できる人はいないでしょう。 オーディオ界は迷信ばかりです。惑わされないようにしましょう。

関連して低インピーダンス側をアウトサイド・フォイルにするという話もあります。 根拠としてはシールド効果が挙げられています。LPFを構成するようなコンデンサーにはこの説は有効です。

しかし,プレートに接続されるカップリング・コンデンサーのようにHPFを構成するコンデンサーにはあまり意味がありません。

周波数が高くなればコンデンサーのインピーダンスは下がってしまいます。 0.1uFのコンデンサーのインピーダンスは1kHzにおいて1.6kΩ程度です。 これは真空管回路のインピーダンスに対しては十分小さな値です(HPFとして使っているので当たり前のことなのですが・・・)。

私がここで提唱した「低電圧側をアウトサイド・フォイル」にすればいろいろな疑問を考えずにすみます。 根拠はスパイス・シミュレーションの結果,ノイズに強いという結論を得たからです。信じるかどうかはあなた次第です(笑)。


種類と供給

フィルムコンデンサは「スプラグ」の「オレンジ・ドロップ」を使っておけば無難と思います。 まあオレンジ・ドロップにも種類は色々あるのですが。。。

わたしは「SOZO」が好きでよく使います。 SOZOは俗にマスタードと言われる,マーシャルやVOXなどのギターアンプ,NEVEなどの音響機器に使われていたコンデンサーのレプリカと称しています。

他にも色々とあります。「WIMA」や「ERO」はヨーロッパ系のメーカーです。 ちなみに「ASC」は「アメリカ指月キャパシター」の略だそうです。「TRW」の製造設備を指月が買い取ったようです。

大容量品では「SOLEN」が有名でよく使われています。

国産では「指月」,「岡谷」,「松尾」,「双信」,「ニッセイ」,「ニチコン」などが挙げられます。 あと「パナソニック」を侮ってはいけません。

小容量のコンデンサではマイカやセラミックが活躍します。 高耐圧のセラミックは信頼性も高く,性能も良いのでセラミック嫌いの人でも一度使ってみることを勧めます。 EVHのマーシャルには村田のセラミックコンデンサが使われていたらしいです。

マイカはディップ・マイカやモールド・マイカがありますが,現行部品は限られます。 高耐圧のモールド・マイカは送信機などの高周波大電力用途に作られていますが,オーディオ用に転用する例も見かけます。

海外製のマイカは「コーネル・ダブラー(デュブラー)」が特に有名です。 日本では「双信電機」と「日通工」が有名でしたが,日通工のディップマイカは生産中止で手に入りません。 ということで最近は銅リードのディップマイカが入手難になってきています。

小容量はスチコンという選択肢もありますが,耐圧が低いものがほとんどで,高耐圧のものは入手難です。

その他,玉石混合でさまざまなコンデンサーが秋葉原やWEB通販で手に入ります。 抵抗器に比べて,色や形が個性豊かなのがコンデンサーの魅力ではないでしょうか。


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