真空管ギターアンプの部品選定


電源トランスの選定

トランスは重く,大きく,価格も高いものです。失敗すると痛手は大きいです。 最近はギターアンプ用のトランスも手に入りますのでそのまま使うことをお勧めします。

注意点としては,輸入物は1次側の電圧が120Vになっている場合が多いです。 問題ないとする向きもありますが,真空管アンプの本来の力を発揮したいのであれば100V用のトランスを使うことをお勧めします。

オーディオ用のトランスはオーバースペックの場合が多く,重たくなりがちです。 だからといって小さいトランスを定格いっぱいで使用して異常加熱を引き起こしたり煙を吐かれても困ります。 一方,トランスの弱さがギターアンプらしさにつながっている面も否定できません。

しかしながら,例えば,電源のレギュレーションの悪さは電源へ抵抗を挿入することでも再現できます。 大きなトランスを使用した上で,レギュレーションをコントロールするという手法です。 このように部品自体にとらわれず原理的・本質的に音を捉えていくことも重要だと思います。


使用上の注意

ギターアンプの多くは真空管が花形だった時代に設計されたものがほとんどです。 真空管を消耗品と位置づけて出力の大きさを優先するあまりかなり無理な動作をしているアンプが多いです。 ギターアンプ用の真空管は手に入りやすいので現在でもそれほど問題ありませんが,頻繁に使用すると1年ほどで寿命が来ます。 毎年真空管を取り替えるのがいやならば電源電圧を低めに設計すればよいです。 もちろん高電圧をかけないと出ない音はあると思いますが。。

容量の小さな電源トランスを軽負荷で使用すると電圧が高めに出ますので注意が必要です。 ヒータ電圧が6.5Vになったりしてビックリします。 特に高電圧タップは定格電流を出力した場合の電圧で巻かれているので,無負荷時は数十Vくらいは電圧が上がります。

トランスの1次側には必ずトランスの全容量の2〜3倍程度のヒューズを入れてください。 100VAのトランスを使っているのならばヒューズは2A〜3Aのものを使用します。 電源投入時にはラッシュカレントが流れますので,通常の速断ヒューズでは切れてしまいます。 必ずスローブロー・ヒューズ(SLOW BLOW,遅延,タイムラグ)を使ってください。

自作を志す際に最も重要なのは他人に迷惑をかけないことです。 トランスを定格オーバーの状態で長時間使用すると燃えます

必ずヒューズを入れなければなりません。 ヒューズ容量の厳密な選択は非常に難しく,ラッシュカレントの最悪ケースを実測して,ヒューズの溶断特性と突合せて決めていきます。

事業者が商品として販売する製品では,異常時に確実にヒューズが働き,事故に至らないかどうか安全試験をする必要があります。

私はせっかく作ったアンプが燃えたら悲しいので,無用に定格が大きいヒューズではなく, 定格ギリギリのヒューズを入れて,切れたときにすぐ交換できるように予備のヒューズを持ち歩くようにしています。

海外のアンプでは1次側のメインヒューズ以外にトランスの2次側の各タップにもヒューズを入れています。 どうやら法律で規制されているようです。 出力管のカソードにヒューズを入れているものもあります。 出力管を酷使するギターアンプでは,メインヒューズの溶断を待たずして出力段の電力を遮断することはとても効果的です。 出力管の保護には0.5A〜1A程度の速断ヒューズを使用している例をよく見かけます。 熱暴走を起こした場合や,カソードとグリッドがショートしたり,バイアス電圧が失われるなどの故障が発生した場合にパワー管に大電流が流れます。 このような現象が起きた際に発火するなどの大事故を防ぐことができます。

アンプメーカーでは,連続して定格最大出力を出す試験は当たり前として,故障時に発煙,発火しないことを確認したり, 負荷やコンデンサ,真空管がショートした場合,過大入力が加わった場合,AC電源が異常になった場合,コーヒーをこぼした場合, 高温多湿から低温度環境での動作などなど,様々な安全試験を行なっているはずです。

電力増幅器に関する試験はあまり詳しくありませんが。。。 自分の作ったアンプを限界まで動作させて壊してしまっては悲しいです。

自動車メーカーでは1車種完成させるのに何台もの車を衝突試験にかけて破壊するのはご存知だと思います。 アマチュアにはそれは出来ません。。。過保護に意味があるかわかりませんが,危険なものを見過ごすのもいかがなものかと思います。

詳しくは「真空管アンプの安全設計」を参照してください(現在準備中)。


2次側の巻き線(タップ)について

電源トランスの選定は整流方法によって左右されます。 古典的な真空管整流では両波整流方式という方式が使われます。 シリコンダイオードを使用する場合は,整流管を単純にシリコンダイオードへ置き換えて両波整流のままにすることもありますが, より効率のよいブリッジ整流を採用するアンプが多くなっています。

注意すべき点は互換性です。 ブリッジ整流用のトランスでは両波整流は出来ません。 また,両波整流用のトランスでブリッヂ整流を行なうと取り出せる電流が約半分に制限されます。 整流方式によって同じトランスから取り出せる電力が変わってきますので,考慮が必要です。

固定バイアスの場合,マイナス電圧を発生させる負電源が必要です。どのように負電源を用意するのか考える必要があります。 両波整流の場合は高電圧巻き線の途中から50V〜70V程度のタップを出すことで対応可能です。

メインの電源にブリッジ整流を採用する場合は,バイアス電源用の巻き線は別途設ける必要があります。 バイアス用の負電源は消費電流が少ないので半波整流でも十分です。

ヒーター用の巻き線は,ギターアンプで使用される真空管では6.3Vが標準的です。 2組あると大信号系と少信号系で分けられるので便利です。分離することによって多少ノイズに有利になるのではと考えています。 また,プリ管にだけ十ボルトから数十ボルトのヒーターバイアスをかけることで多少ですがノイズ抑制につながります。 一部の品種を除いたほとんどの整流管は独立した整流管専用のヒーター巻き線が必要になります。電圧は5Vが多いようです。


電源トランスの仕様

通常ギターアンプで使われているパワートランスはEI型というコア(鉄芯)を使っています。 コアには他にも色々な形状がありますが,ここの趣旨とは関係ないので割愛します。

電源トランスはハムノイズの原因になる漏洩磁束を撒き散らします。 シングルコイルピックアップをギターアンプに近づけるとブーンと言うハムが出ます。これが漏洩磁束です。

対策としてショートリングとハムプルーフベルトがあります。

ショートリング:
コアの外側を銅板のように直流抵抗が低い導体を1周巻きます。 銅板には漏洩磁束で誘導された電流が発生しますが,1周してショートさせると逆起電力で磁束がキャンセルされるため漏洩磁束が減少します。 「コアの外側に巻く」のがミソです。

ハムプルーフベルト:
パーマロイや鉄板などの磁性体でコアを囲むと磁気シールド効果を発揮して漏洩磁束を減少させます。 ケースに入れてしまうのも効果的です。

トランスの向きと設置場所でも漏洩磁束の影響を軽減することができます。 コイルを貫通する方向はもっとも磁束が出ますので,あさっての方向(天地がベスト,ダメなら前後,左右がワースト)に向けます。 設置場所は入力から一番遠い場所が最適です。また,アウトプット・トランスを近くに配置すると磁気的な結合を起こしてしまいハムノイズの原因になります。

1次側と2次側の容量結合が問題視される場合は1次側と2次側の間に静電シールド巻きます。 1次・2次間の容量性の結合によるノイズの伝播を減少させる働きがあります。 また,1次側の絶縁が破れた場合,まず静電シールドとショートして漏電遮断器が落ちるので,2次側は保護されるという安全面での効果もあります。

最近はインバーターを使用した電気機器,エアコン,冷蔵庫,洗濯機などが普及していますので,静電シールドはあったほうがよいと思います。


種類と供給

理想的に考えると整流電圧はトランスのタップに表示された電圧の1.4倍になりますが,様々な要因のため,電圧は変動してしまいます。 結局経験的な要素が強く,狙い通りの電圧が出ることはまれです(汗)。 そういった意味でも実績のある電源トランスを使うのが無難です。

私はギターアンプ用トランスに飽き足らずに,秋葉原・春日無線の特注トランスをよく利用します。 値段も高騰していますが,それでもまだ手ごろです。

海外メーカーのものを取り寄せる場合では100V用の電源トランスは特注対応となることが多いようです。 国内におけるギターアンプ用トランスの入手性が上がるのを切に望みます。


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