真空管ギターアンプの部品選定


スイッチの選定

電気とのはじめての出会いはスイッチだった人は多いのではないでしょうか。 壁のスイッチを操作するとパァっと電灯が点くというのは物心つく前から知っていることです。

スイッチは単純に見えて実に奥が深い部品です。 やはり,機構部分があるので不良が発生しやすい部品ともいえます。 接点があることも電気的な不具合につながる大きな要素です。


定格について

基本は他の部品と同様に定格を厳格に守ることです。 特に接点の定格が重要です。 通常,6A-125Vとか3A-250Vなどと電圧定格と電流定格が併記されています。

大電流を開閉する場合は定格電圧が下がります。 通常は定格というと交流に対する定格を示していて,直流を開閉する場合は交流の定格電圧からさらに下がります。

定格電圧は接点が開くときに発生するアーク(高温を伴う連続的な放電)によって決まるそうです。 接点距離が遠ければアークも消えやすいですが,接点距離が近ければアークが発生し続けて完全に切断できなくなります。

高圧用スイッチではアークの発生を抑制するためにスイッチ操作部の操作速度に関わらず,接点の開閉速度は一定になるように設計されています。

特に直流の場合,アークが継続して発生するため,遮断が難しく,磁力を使ってアークを曲げたり,ガスによって放熱させるなど,特別な消炎機構を内蔵するスイッチもあるようです。 最近はハイブリッドカーや太陽電池が普及してきましたので,高電圧高容量の直流スイッチやリレーの需要が増えているようです。

以上のような理由により,高圧(100V以上が目安)を切り替えるスイッチは慎重に選定する必要があります。

逆に微小な電圧や電流を切り替える場合にも専用のスイッチが必要になります。 スイッチなどの接点は表面に酸化や硫化が起こり絶縁体の皮膜ができてしまうと伝導率が著しく低下し,接触不良となります。 トゥルー・バイパスのエフェクターを切り替えたときにたまに音が出なくなることがありますが,これがその症状です。

大電流用のスイッチは接点に飛ぶ火花を利用してこの皮膜を破り,接点の接触を維持している場合が多いとのことです。 微小電流切り替え用のスイッチは接点に金メッキなどを施して酸化皮膜や硫化皮膜を形成しないようにすることで信頼性を確保しています。 また,信頼性を高くするために複数の接点を持っているスイッチもあります。

なお,微小電流用のスイッチで大電流を切り替えると表面のメッキが消し飛んでしまい意味がありません。 ひどい場合には接点が融着して開かなくなることもあるそうです。 やはり定格を守ることが必要です。

大電流用,微小電流用,いずれにせよ定格外で使用した場合に不具合につながるかどうかの判断は難しいです。 一回二回の操作では不具合は発生せず,100回単位,1000回単位で操作しないとわかりません。


種類

機構的には「トグル」,「スライド」,「ロッカー」,「ロータリー」「押しボタン」などの種類があります。 マーシャルの電源スイッチはロック向けなのでロッカースイッチです(笑)。ピンスイッチのマーシャルはロックに向きません(嘘)。

回路的には一番基本的なSPSTからDPDT,3PDT,モーメンタリなど色々ありますが,ここでは割愛させてもらいます。


使いこなし

いくら高圧用のスイッチといってもCRスナバー(スパークキラー)などで火花消しを行わないと故障することがあります。 火花は非常に幅広いスペクトルをもったノイズなので無線機器の誤動作を誘発することもあります。 スイッチには必ずスナバーをつけたほうがよいです。

ギターアンプは感電のリスクがあります。 トランスの1次側はDPSTを使って両切りにしたほうがよいと思います。

詳しくは「真空管アンプの安全設計」を参照してください(現在準備中)。


供給

大型のトグルスイッチでは「カーリング」が米国製の有名どころです。 国産なら「日開」,「フジソク」が小型から大型まで様々なトグルスイッチを作っています。小型のトグルスイッチは「ミヤマ」も有名です。

「スイッチクラフト」はスライドスイッチの品種が豊富だったりします。

ローターリースイッチは「岩通」や「ALPHA」,「ALPS」が有名です。 NEVEに使われていた「ELMA」というスイスのメーカーもあります。

スイッチはピンからキリまでいろいろありますが機構部分と接点を含むという意味では難しい部品です。

MIL規格や防衛庁仕様やなどのスイッチもあります。塩水をかぶっても大丈夫だったり,操作トルクが管理されていたりするようです。 信頼性が必要な航空機用のスイッチも頑丈に作られています。


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