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2-3:初めて作る直熱管アンプの初段設計

211(VT4C)シングル・ステレオ・アンプの自作


入力信号レベルとパワーアンプの感度

パワーアンプの初段はプリアンプからの電圧を受けてざっくり電圧増幅する役割があります。 音楽ソースとしては最近の民生用の機器を考えて入力レベルは最大で2.0Vrmsとします。

昔の機器はレベルが低かったようですが,最近の機器は-16dBV,-12dBFS(最大レベル2.0Vrms)の信号レベルで作られています。

古典的なパワーアンプは高感度すぎます。 現代の機器につなぐ小出力アンプならばゲインはせいぜい5倍あれば間に合います。

しかし,ゲイン5倍は真空管アンプとしてはかなり低感度の部類に入ると思います。 10倍でも低感度と言われます。通例は20倍以上あるのではないでしょうか。 ところが,ゲインが過剰だと音楽信号を入力のATTで絞った上にノイズと一緒に増幅することになります。 これではSNが悪化してしまい16bitのCDに対応できても24bit以上のハイレゾには対応できません。

トータル・ゲインを4.5倍とすると2Vrms入力で10W@8Ω出力となり良い塩梅です。 前作の電流帰還DCアンプはゲイン4倍でしたがATTを-20dBより上げることはほぼありませんのでウチで使う限り全く問題ありません。

ただし今回のようにパワーアンプを低感度に設定すると初段にピークで2.8V0-p入ることになります。 そうなると初段のデバイスには注意が必要になります。

具体的には12AX7はバイアスが浅いため初段でクリップしてしまいます。

12AU7ならばバイアスが深いので初段でクリップすることはありません。 ということで12AU7に決め打ちです。

初段は12AU7

12AU7や5814はかなり出回っている様子。

12AU7 5814 ECC99

左から2本ずつ,GEの5814,JAN(Philips ECG)の5814A,JJ ECC99。

12AU7(ECC82)はギターアンプで使われないので,手持ちがありませんでした。 慌てて探しても巷ではあまり見かけず,NOSは底をついているようです。 中古球はオークションに結構でています。しかし中古球はリスクがあることを承知せねばなりません。 (その後、棚を片付けていたら何本か出てきましたが。。。)

秋葉原の店頭で5814Aを,オークションで5814を入手しました。12AU7はまだ入手していません。 広く一般的に使われていた球なので今後も入手に困ることはないでしょう。必要な時に調達します。

グリッド周辺と入力回路

12AU7は双三極管なので2ユニット入りですが,ステレオの左右に振り分けるのではなく左右chそれぞれ2ユニット並列で使い合計2本使用します。 並列化することで内部抵抗も負荷抵抗も半分になりますので広帯域化と低雑音化に効果があります。 もちろん左右別球することによるチャンネル間クロストーク低減効果も期待しています。

ハイレゾに対応するためには抵抗からの熱雑音にも気を付けなければなりません。 そこで,入力は直結としてATTは設けません。 もしここに100kΩのボリュームを入れて絞って使うとボリュームから発生する熱雑音によってハイレゾの音源がノイズに埋もれます。

真空管アンプは初段のグリッド電流の影響を避けるために入力をC結することもあります。 しかしこの場合はグリッド・バイアス抵抗が発する1/f的な揺らぎが入ります。これが悪影響なのかどうかは分かりません。 もしかしたらよい影響があるのかもしれませんが,音質影響が大きいと言われるコンデンサはできるだけ減らしておきます。 12AU7は12AX7よりも電流が流れやすいのでバイアスを深めにとりますから、12AX7よりもグリッド電流の影響は少ないでしょう。 ハイレゾ対応の真空管アンプの初段にはもってこいだと思います。

カソード周辺と帰還方法

出力管のグリッドから初段のカソードへ負帰還をかけていますので,カソードのパスコンは入れません。

カソードのパスコンは音質的影響が大きいのでできるだけ入れたくないのです。

プレート周辺と電源

プレート負荷抵抗は電流から電圧へと変換する機能がありますので,音質的影響は大きいと考えています。 大型の抵抗を使うようにしています。

初段の電源には電源OFF時の放電のためと電圧安定化効果を期待して220kΩのブリーダー抵抗を入れておきます。 多少ではありますが,球のバラつきを押さえてプレート電圧を一定化する効果があります。 また、あまり想定しなくてもよいのですが、球を抜いた時の電源電圧上昇を抑えてくれます。

電源フィルタの容量は部品調達の都合で220uFと大きめです。 電解コンデンサの耐圧はトランスのタップ電圧の1.5倍見ておきます。全て耐圧450Vを使いました。

電圧増幅段

使用部品

ブリーダー抵抗の220kΩにはVishayの高耐圧メタルグレーズ抵抗(1W)を使ってみました。 大きくてごつくて頼もしいです。増幅回路をシャントする形で入るので酸金より精神衛生上好ましいです。

コンデンサは手持ちの中からオレドロ0.22uF(SPRAGUEのORANGE DROP)を使いました。 本当は0.47uFが良いのですが,持っていないという都合と,大きすぎるとという理由から0.22uFで我慢しています。 オレドロは716Pです。ただオレンジドロップといっても何種類もあるのです。416Pは円筒形なのが好きです。 716Pは円筒ではなく押しつぶされた形状ですが,銅リードなのでハッピーな気持ちにしてれます。

入力ジャックは当初CANAREを考えていましたが,もう少し安価なNeutrikを購入。 でも加工がめんどくさくて秋葉原で手に入る金メッキのRCAにしました。 千石は分かりませんが,秋月の方はテフロンっぽいですよね〜秋月で買えばよかった。まあでもいいか。 MOGAMIや海外ブランドのRCAジャックも気になります。

入力ジャックのGNDはぺるけさんのHPで紹介されている半田付け方法を試してみました。

増幅回路は極めてシンプルで部品点数も少ないので部品にはこだわりたいところです。


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