ギター用シールド・ケーブルの弾き比べ(比較)

MOGAMI,BELDEN,SOMMER,George L's,WEのシールド・ケーブルを比較

2021/03/07


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試したケーブル

MFR略称NameIMAGE
whirlwindWW+1accusonic+1
MOGAMI25242524
BELDEN97789778
SOMMERSXXLSPIRIT XXL
George L'sGGL1155
MOGAMI33683368
WEWE-SAWG22 1959
Balck Enamel
shielded wire
不明GBSNGibson Style
Braided shielded wire
秘密RFBKRF用同軸ケーブル

インプレッション

長さは3メートルに統一。プラグはアレコレごちゃまぜ。

略称分離
分解
太さ
存在感
巻き弦
ガッツ
ヌケ
ザラつき
シングル・ピックアップ
ストラト,テレキャス
ハムバッカー
PRS McCarty
WW+1まとまりが良い
じゃらんとした響きがフェンダーらしい
オープンコードにまとまりがあって響きがよい
2524ミドルがガツっと出る
ハイは出ているのにやや団子で張り付く感じがあるが
ハイも出てる,ミドルもでてるが,ローは感じない
9778まとまりが良く,単音が太い
クリーンと,ODが特に良い感じ
GGL1に似ている
単音が太く存在感がある,ギターソロでのチョーキングが気持ちよい
SXXLクリーンやODはドライでさらっとしてる,DISTがよいミドルがドライでクリーンは薄味,DISTによくマッチする
GGL1ギターらしいニュアンスが良く出る
滑りが良く,ヌケが気持ちよい
DISTのハイも抜けてる,美味しい帯域が出てる
ピッキングニュアンスが良く出る
3368比類なき全帯域感(全部出てる)
ゲインが高く,サスティーンが良く伸びる
ゲインが高くローも出るが,相対的にミドルが細く感じてしまいややさみしい
WE-Sピッキングに対してプリプリとした反応を示し,個性的1音1音の粒立ちがよく,コロコロした「球」が見える
GBSNハイは出ないけどギラっとするハムバッカーにマッチしてジャズに良い
RFBKキレイでハリがある
3368よりローとミッドがよく出る
3368のローミッドを増強した感じ

△:がんばろう,よわい
○:ふつう,中庸
◎:よい,強い
#OD:オーバードライブ
#DIST:ディストーション

ケーブルの静電容量と抵抗値を実測してみよう!!

データからわかることがあればケーブル選びの参考になるなと実測してみました。カタログ値はチェックしていません。 George L's 155の静電容量(Capacitance)は公式なデータが公表されてませんので貴重な資料と思います。

静電容量はpF単位で測定できるLCRメータ―
抵抗値は電流を1A流した時の電圧を測定して抵抗値に換算,プラグの抵抗値を含む

略称静電容量
pF/m
導体抵抗
mΩ/m
シールド抵抗
mΩ/m
コメント
WW+11253034
25241313158
97781723443容量大,カナレGS-6と同じくらい
SXXL942921容量小,シールド抵抗が低い
GGL18837016容量小,導体抵抗が高く,シールド抵抗が低い
3368833025容量小
WE-S2025422容量大
GBSN3684936容量大,すごく大きい
RFBK105288二重シールドなのでシールド抵抗が極端に低い

静電容量が大きいケーブルはハイミッドが強調されてくる。単音弾きでは太く感じでよい方向性。コードの分離感やピッキングニュアンスは不利になる。

逆に静電容量が小さい場合はハイが伸びてくる。これは文句なしに伸びてくる。ディストーションでのざらつきは顕著に差が出る。 ピッキングニュアンスも出やすくなる方向だ。しかし,ローは変化しない分,ミドルの美味しい部分が抜けたように感じてしまう。 これがクリーンやオーバードライブでは物足りなく感じてしまう原因になる。 しかし,GGLと3368ではバランスが違いGGLは9778にているという結果だったので,単純に低容量だからとくくるのは間違いかもしれず,他にも要素があるのかも。

まとめると,クリーンやオーバー・ドライブの場合は容量が大きめの方が音が太くなり良い。 特にハムバッカーでジャズをやるなら思い切った大容量ケーブル・・・というのはないので,長めのケーブルにするとよいかも。 逆にザクザクしたディストーションの場合には低容量ケーブルの方が圧倒的に抜けてくる。 もちろん,長さでも変わる。今回は3メートルと短めだが,長さが倍になると評価が変わってしまう。 比較的容量が大きいケーブル(150pF/m以上)は5メートルか6メートルが限界だろう。それ以上の長さでは大分音が変わってしまう。

注意点の補足:
・ギター側のボリュームは全開
・ピックアップ出力に「バッファ」が入るとそれ以降のケーブル静電容量の影響は切り離される
→アクティブ・ピックアップはギター側にバッファ内蔵
→BOSSのようなトゥルー・バイパスではないエフェクターはバッファ内蔵
つまり,ギターからペダル・ボードまでのケーブルがトーンに影響するということ。


GGL1は内部導体が細く抵抗値が高いが,トーンからその細さは感じないので,導体抵抗による傾向的な違いはなさそう。 GGL1以外は30mΩ/m前後で同じような太さを使っている。

シールド抵抗値はスパイラル・シールド(横巻)よりもブレイデッド・シールド(編組)の方が抵抗値が低くなるのは当然と言えば当然。 抵抗値が低い方がドライでドンシャリになるように思うが,RFBKは別格。その抵抗値の低さが効いているのかは分からないがミドルもよく出る。

各ケーブルの紹介

whirlwind accusonic+1


1998年に購入したフェンダーのギターついてきた20年前のシールド・ケーブル。
Beldenが作っているとのこと。数年前は秋葉原の店頭で切り売りもしていたが今は?
ウチでは困ったときの相談役で立ち戻って確認する時に使う。
・今回の比較では唯一の既製品,このプラグはすごい,断線しない!!
・内部導体は裸銅の撚線
・半透明の絶縁体,黒いフィルム状の半導体層
・スズメッキのブレイデッド・シールド
・外装は黒いカバー,PVC,手触りが良く耐久性が素晴らしい!!20年たっても新品と変わらない気がする

MOGAMI 2524


切り売りケーブルの定番。持ってると何となく安心する。
プラグを比較するためにまとめて購入したので何本かある。
・プラグはスイッチクラフト
・内部導体は裸銅の撚線
・半透明の絶縁体,黒いフィルム状の半導体層
・裸銅のスパイラル・シールド
・外装は黒い普通のカバー,PVC

BELDEN 9778


初めてのBELDEN。ベルデンと言えば8412が有名だが,あれはマイク用ケーブル。
2芯なので結線に迷うし。容量でかいし。いいことない。
ベルデンを勧める人はいい人だけど,8412を勧める人は信用しないことにしてる。
・プラグはアメリカンな組み合わせを狙ってG&HのHIGH CLARITYタイプ
・内部導体は裸銅の撚線
・灰色の不透明の絶縁体(EPDM),黒い布状の半導体層,この素材は珍しい
・スズメッキのブレイデッド・シールド,周囲に白い繊維
・外装は黒いカバー,素材はネオプレンとのことで感触がゴムっぽい

SOMMER SPIRIT XXL


低容量。半透明のシースで見た目が良いけど,さわり心地はにゅるっとしてる。
3368より細いのに低容量,発泡の割合が高いのかもしれない,発泡されているが架橋もされているようで溶けにくくハンダ付けは難しくない。
・プラグはノイトリック
・内部導体はスズメッキの撚線
・白い発泡された絶縁体,黒いフィルム状の半導体層
・スズメッキのブレイデッド・シールド
・外装は半透明のPVC

George L's 155


George L's 155 cut end cross section(断面)

初めてのGeorge L's,使って納得のGeorge L'sだった。
内部導体も外径も細くて半導体層が厚いといった個性的な構造で,細いのに低容量。
取り回しに癖があり,ブラブラする。
ソルダーレス・プラグで使うのが一般的みたいだけど普通にハンダ付けして使っている。
外装の色によってトーンが違うという伝説があったが,おそらく2000年頃のモノと今のモノは物質規制の関係で素材が違うはず。 最近の環境に優しい材料は発色が悪い。赤がピンクだったり,青が水色だったり,黒がグレーだったりする。柔軟性も変わってきており柔らかくて耐久性のよいケーブルを作るのは難しい。
・プラグはノイトリック
・内部導体は裸銅の7芯撚線,他よりも一回り細い
・白濁した固い樹脂に黒く分厚い半導体層をコーティング,非常に密着度が高い
・スズメッキのブレイデッド・シールド
・外装は薄くて固い樹脂でカバー

MOGAMI 3368


シールドの音は静電容量で決まるという私の認識を覆した違いの判るシールド。
それまでのシールドはどんぐりの背比べだったが,これは頭一つ抜けてると思い,15メートル買ってしまった。
太くて低容量,横巻シールド(スパイラル)だけどほつれない。色々工夫されている真面目なケーブル。
太くて取り回しに癖があるのでステージで使うのは難しいかもしれない。
・プラグは色々試してHKMに落ち着いたけど最近はノイトリックが多い
・内部導体は裸銅の撚線,2524と同じ構造
・裸銅のスパイラル・シールド,繊維を編み込んでいるのでほつれない
・白い発泡された絶縁体,これがとても太い,架橋されているようで溶けにくくハンダ付けは難しくない
・内部導体の周囲とシールド内側の2ヶ所に黒いフィルム状の半導体層,珍しい構造
・外装は黒い普通のカバー,PVC,外径が8mmあるのでプラグ選びには注意

WE 1959 Shielded wire


1959年製のシールドケーブル。メートル単価は一番高い(汗)。
勉強のために購入した。個性は感じるので求める方向性とマッチすればよいと思うが,わざわざ使う意味があるかどうかはあなた次第。
・プラグはHKM
・内部導体はブラックエナメル単線
・赤い布のブレイド被覆
・スズメッキ・ブレイデッド・シールド
・紙巻,布被覆
・古い単線は折れることがあるので黒く染めた太い紐に通して折れ曲がらないようにした。

GIBSON Style Braided Shielded wire


これも勉強用に購入。本来はレスポールなどギブソン・ギター内部配線用。
秋葉原の店頭で3メートル購入した。通販では1メートルしか買えないかも。
布巻なので,半田ごてを当てても溶けたりショートしたりしないので,ギターの内部配線に最適。
静電容量が大きいのでレスポールのようにギター内部で長く引き回すとトーンに変化が出てくるが,それがレスポールの音だったりする。
・プラグはノイトリック
・内部導体はスズメッキの撚線
・布ブレイド被覆
・スズメッキ・ブレイデッド・シールド
・シールドがむき出しなのでナイロン製の網をかぶせてシールドを保護

RF Coaxial double shielded cable


MIL規格のRF用同軸ケーブル。業務用というか,測定ラボで使われるケーブルのジャンク品をリユース。
2重シールドのごついやつ,半導体層はないのでケーブルを動かすとゴソゴソいう。これがマイクロフォニック・ノイズ。
固くて重くて取り回しは悪いが音はすごい。3368をさらに超えてくるという怪物。最強感半端ない。
・プラグはノイトリック
・内部導体は銀メッキ銅の単線,かなり太くて固い
・半透明の絶縁体,特に低容量ではない
・スズメッキ・ブレイデッド・シールドが2重,ものすごくゴツイ
・外装は比較的薄くて固い樹脂でカバー


ギター用ケーブルの基礎知識:取り急ぎの用語説明

ケーブルって結構奥が深いんですね。日常生活の中にありふれてるのに。



シールド・ケーブル,同軸ケーブル:Shielded Cable, Coxial Cable

シールド・ケーブルとは内部導体の周囲をぐるりと取り囲むシールド導体による遮蔽効果を利用して周囲の静電界・電磁界の影響を軽減したケーブル。 周囲を低抵抗の導体に囲まれた空間内は周辺の電界や磁界の影響を受けない。 携帯やスマホを金属製の箱に入れると圏外になるのと同じ原理。 信号を通す内部導体の周囲をシールド導体で囲むと信号に飛び込むノイズを防ぐことができる。

シールド・ケーブルと同軸ケーブルは同じ構造だが目的が異なる。 同軸ケーブルは高周波領域でインピーダンスを一定に保つために同軸構造としていて,たまたまシールド構造になっているだけ。 逆に言うと,1芯シールドは同軸構造だが,2芯シールド・ケーブルや4芯シールド・ケーブルは同軸ケーブルとは言わない。


同軸ケーブルでは内部導体と外部導体の直径比(d2/d1)が非常に重要なパラメーターであり,特性を決める。 d2/d1の最適比は誘電率εと欲しいインピーダンスから求められる。 インピーダンスは50Ωが一般的だが,ポリエチレンの誘電率に対してナノ秒オーダーで観測すると最良の特性が出るのが50Ωだそうだ。 ポリエチレンの50Ωケーブルではd2/d1≒3.6が一般的なようだ。

内部導体のサイズが同一ならば外部導体が太い方が静電容量が低く,かつ高インピーダンスとなる傾向を持つ。

楽器用シールド・ケーブル,ギターケーブル:Instrument Cable, Guitar Cable

エレキギターやベースに使われるハイ・インピーダンス・ピックアップの微小信号を伝えるためのケーブル。 シールド構造によって外来ノイズの混入を防ぐことに加え,マクロフォニック・ノイズ対策が施されていることが特徴。

ギター側のPOT(VR)が250kΩもしくは500kΩ,アンプの入力抵抗は1MΩが一般的。 一般的な音声ラインは600Ω以下,高周波では50Ωが一般的であることを考えると,立派なハイ・インピーダンス。

ケーブルの静電容量と周波数特性:Cable Capacitance & Frequency Responce

ケーブル自体が持つ特性が問題になることは稀で,ピックアップとケーブルの組み合わせによって音が変わる。

ひとつ目がギター側回路の出力インピーダンスと静電容量によるLPF効果。

ふたつ目がピックアップのインダクタンスとケーブルの静電容量によるピーキング効果。

これらの影響により,ケーブルを変えると周波数特性が変わり,トーンが変わったと認識されることになる。 したがってケーブル側の支配的なパラメータは静電容量であり,その他の要素は非常に微小と認識すべし。

その他微小な要素の代表格が表皮効果。 表皮効果によって高周波ほど伝送ロスが上昇する現象がよく知られている。 大電力ケーブルや高周波ケーブルは伝送ロスが真面目に議論される。 が,ハイ・インピーダンスの音声信号を数メートル伝えるのにどの程度のロスが出るのか・・・小さすぎて皆目見当がつかない。

他には誘電率の周波数特性や誘電体吸収がロスになるので絶縁体の物性が影響するという指摘もある。 ただしこれはスピーカー・ケーブルに関する指摘。

静電容量の影響が支配的ということは「ケーブルの長さ」が最も重要。 3メートルならばあまり差が出ないが7メートル,10メートルと言った長さでは影響が大きいので,長いケーブルを使う場合は静電容量が小さいケーブルを選ぶメリットが出てくる。

トゥルー・バイパスのエフェクターをつないだだけで音が変わるという都市伝説はケーブル1本とケーブル2本の音の違いを表す。と思ふ。

ブレイド・シールド(編組:へんそ:Braided Shield)

シールド導体を編み上げて筒状にする方法。 繰り返しの屈曲に対する耐久性が高く,ほつれにくい。 ケーブルが動く用途,楽器用ケーブルではステージ用に使われる。 粗く編むと隙間も増えてシールド率(遮蔽率)が低くなってしまい,密に編み込むと重く固くなる。

スパイラル・シールド(横巻:よこまき:Spiral/Serve Shield)

シールド導体を絶縁体の周囲に巻き付ける方法。 耐久性があまり高くなく,内部でほつれることがあるので固定設備向け。 楽器用ケーブルではペダル・ボードやラック内配線など。 シールド率は高くでき,編組シールドより軽く柔軟。

その他・シールド

1:フィルム・フォイル,アルミ箔やメタライズドフィルムを巻き付けたラッピング・シールド。多くの場合ドレイン・ワイアーが追加される。 軽量かつ遮蔽率を100%にできるが,固く小さく曲げることができないため固定設備向け。

2:パイプ,セミリジッドと呼ばれる。高周波の測定器などで使われる。ほぼ曲げられない。

3:シールドなし!ノイズは乗るけどノイズ源が無ければノイズは出ない。禅問答みたいだな。実用性はないけど実験は楽しめる。

マイクロフォニック・ノイズと対策(半導体層・セミコンダクティブ・レイヤー:Semiconductive Layer)

ケーブルと動かしたり叩きつけたりすると発生するノイズ。ゴソゴソとかそんな感じ。

ハイ・インピーダンスの伝送系ではトライボ効果,静電誘導,圧電効果(ピエゾ効果)といった現象により機械的振動が電気信号に変換されてしまい,それがノイズとなる。

トライボ効果は摩擦帯電効果とも言われ,絶縁体表面をシールド層が摩擦することによって絶縁体表面に溜まった電荷によって引き起こされるノイズ。 これを防ぐために黒い半導体層(コンダクティブ・レイヤー)が使われる。 半導体と言われるとシリコンをイメージするが,抵抗値を持ったシートのことであり,黒い導電性の樹脂や布が使われていることが多い。 黒いのでカーボンを多量に含むと考えられる。


KEITHLEYのアプリケーションノートより引用

静電誘導はコンデンサ・マイクの原理と同じで電位差のある電極間の静電容量が変化するとノイズとなる。 電圧が高いほど,インピーダンスが高いほど影響が大きくなる。

圧電効果(ピエゾ効果)は絶縁体に振動を加えると電荷が発生する現象。水晶発振器やクリスタル・イヤホンに応用されている。 テフロンは微小だが圧電効果を持つ。

絶縁体:Insulation

絶縁体は内部導体と周囲のシールドの間の絶縁を維持する重要な部分。

多くの場合はPE(ポリエチレン)が使われる。電気的特性が優れておりロスの少ないケーブルができる。適度な固さなので使いやすい。

しかしPEは高温に弱く75℃くらいまでしか使えないので高温に耐える用途ではテフロンが使われるが高価。 また低温では逆に固くなるのでシリコンを使用したケーブルもある。

ギブソン・スタイルの網線に代表されるように布を使用した線材もあるが静電容量が大きいので長く使うときは注意が必要。 天然素材なので絶縁性が良くないが,半導体層と同様に静電気を中和する効果があると言われている。 フェンダーがクロス・ワイアーを使い続ける理由なのかもしれない。

究極の絶縁体は空気であり最も誘電率が低い。真空の方が低いけど。ポリエチレンは誘電率も低く誘電正接も小さいため高性能。 ゴム系や塩ビ系は誘電率も高めで誘電正接(ロス)大きいため低性能。もちろんテフロンは高性能。耐久性なども考えるとテフロンが最高級だが高価。

スパイラル状の絶縁体を導体に巻きそれをパイプ内に入れることにより空気絶縁を指向したケーブルもあるが,実用的には高周波大電力伝送用であり,オーディオ用では見たことはあるが実用例は少ない。

液体を満たすリキッドジャケットというのもある。

絶縁体(ポリエチレンあれこれ):Polyethylene

通常は乳白色の半透明。

発泡(Cellular):CPE:スポンジのように樹脂内に気泡による空間を設ける処理。気泡が入った分だけ樹脂の分量が減り,誘電率が下がり静電容量が小さくなる。 発泡率により高発泡もしくは低密度:Low Densityと言われたりする。

架橋(Cross-Linked):XLPE:電子線照射や化学的処理により分子の結びつきを強くして溶けにくくする処理。高発泡樹脂は高温で変形しやすい。特にハンダ付けする際に溶けてしまい,ショートしたりする。 架橋されていると溶けにくくなり粘りがでるのでハンダ付けの作業がしやすい。ただし電気特性にもやや変化があるらしい。

内部導体と撚り方(同芯撚り・集合撚り)

楽器用は伝送系がハイ・インピーダンスなので導体の抵抗値が与える影響は100万分の1のオーダーとなり非常に小さい。 実際には細すぎると切れる懸念があり,太すぎると重く固く高価になるのでバランスの良い22AWG〜18AWGの範囲が多い。

楽器用は高屈曲性が求められるので撚線(よりせん)が使われる。単線は折れやすく耐久性が高くないのであまり使われない。 素線が細ければ細いほど柔軟性は高くなる。表皮効果の影響が出るという主張もあるが,音的にはどうでしょう。あまり気にしたことはない。

撚り方にも色々ある。

「集合撚り」は素線をギュッとまとめて撚り集めただけの撚線。

「同芯撚り」は乱れが出ないようにキレイに撚る合わせる方法。断面は円形に近い。 各層ごとにより方向を変えるSZ撚り(反転同心撚り)という方法もある。

同芯撚りの場合は7/19/37芯が有名で幾何学的にキレイ。12/14/20/30/50/52芯もよく使われる。 7/19/37は確実に同芯撚り。それ以外は集合撚りの可能性もある。

同心撚りと集合撚りでは作る手間はだいぶ異なるのでは。 音的な比較は難しいのですが,気の利いた音響用のケーブルは同芯撚りで作られている。

無酸素銅:OFC:Oxygen Free Copper

電気部品に使われるタフピッチ銅は素材としての純度はそれなりに高いがそれでも不純物を含む。 銅の純度を高めて含まれている酸素を除去していくと導電率があがる。

通常のタフピッチ銅に対して酸素を除去する処理を行い導電率を向上させた線材が無酸素銅。 機械的特性にも変化があり,工業用途ではむしろこの機械的特性が重宝されているっぽい。 しなやかとかしっとりとか大和撫子的な表現をよく耳する。

さらに純度を上げる処理,さらには結晶粒を大きくするアニール処理など様々な処理が線材メーカーで施される。 こういった高付加価値な線材がなぜか音響用で重宝されている。

純度が高くなると音的にはキレイで滑らかになる方向。と思う。しかし,ギター用途の場合は必ずしも好ましい方向性ではないかも。

メッキ

楽器用ではスズメッキ(TC:Tinned Copper),もしくはメッキ無しの裸銅(BC:Bare Copper)が多い。 塩化ビニル被覆のスピーカーケーブルが緑青を噴いたことがありメッキの必要性は被覆材との相性にもよる。 裸銅は被覆中でも酸化することがあり腐った線材にはハンダが乗らない。 スズメッキでもなじみが悪いことがあるので線材の先っちょはハンダ付け前に予備ハンダして馴染ませておく。

高周波用途や高温用線材では銀メッキもある。 表皮効果まで考えるとスズメッキは銅より劣り,銀メッキは銅よりロスが少ない。 メッキする場合はメッキ方法やメッキ厚,下地メッキなどにノウハウがあるらしい。 GHzオーダーまでいくと表面の粗さで特性が変わってくる。

楽器用の場合は主に作業性で気になることが多く,例えば銀メッキ線はハンダのノリが良くて作業性が良い。

音がどうかというと1対1で比較はなかなか難しいのでよくわからんが,銀メッキの線材はギラギラすると言われる。

ノイズ「ブーン」(ハムノイズ,低周波の電磁ノイズ)

電源トランスや電灯線,電熱器などが発する。 ケーブルに飛び込むというよりギターのピックアップが拾ってしまうことの方が多い。 したがって対策はギター側で実施が基本。ハムバッカーを使うこと,アンプや照明から離れること。

ケーブルからノイズ拾っていることが分かった場合は電源ケーブル,特に照明用の電源ケーブルと音声系のケーブルを離すことと平行せず直角交差させること。

ノイズ「ジー」とか「ミーン」(可聴域の電磁ノイズ)

調光器やインバーターが発するノイズ。 昔はステージ照明が主なノイズ源だったが今ではエアコンやエレベーターなどの大きな電力をつかうインバーターがノイズを発する。 隣のビルのエレベータがノイズ源だったなんてこともあるらしい。 空間を通じて広がるのではなく電源配線やアースを通じて侵入してくることが多い。

耳障りなだけに対策困難。そういう意味では静電容量が大きいケーブルでは耳障りなノイズが減るので全体のノイズ量が減ったように聞こえるでしょう。

ノイズ対策の基本はノイズ源の根元での対策だが,エアコンやエレベーターとなると設備系なので手出しが難しい。

アースの接続を外すとノイズが減少することもあるが,ギターアンプをアース無しで使うのは危険。 この場合はアースが汚染されてるのでギター専用のアース線を引けると良いがこれもなかなか難しい。

結局のところ受け手側がとれる対策としては絶縁トランスやノイズカット・トランスと言われる装置を導入するしかない。

シールド無しケーブルを使うとシールド・ケーブルの恩恵を感じる。 しかし,シールドの遮蔽率でノイズに差が出るか,というと差を感じたことはない。遮蔽率はあまり関係ないのかもしれん。

2芯シールド・ケーブル,4芯シールド・ケーブル

2芯シールドは基本的にバランス伝送用のケーブル。つまりマイク用。有名なBELDENの8412もマイク用。 別にギターに使ったからと言ってドウということはないが,容量が大きいし導電体層もないしあまりメリットは感じない。 また,結線方法にいくつかのバリエーションがあり,方向性があるケーブルというものができたりして楽しいのかもしれない。

ややこしいモノってなんか高級そうな雰囲気ですが,方向性といってもシールドを片側接地にする場合にどちら側を接地するかという問題なので音にはあんまり関係ありません。 高周波信号では両側接地しなければなりませんが,音声信号の場合は2芯シールドを使って片側接地にするとシールド線に音声信号が通らないという効果が生まれます。メリットは分かりませんけど。 ハイブリッド接地というのもあります。これは誰も試してないみたいですね。2芯シールドに関してはあまり有益な情報は持ってないです。

4芯シールドはカッド撚り(スター・クアッド)することによってハムノイズに強くなると言われる。ギター用途に関しては恩恵を感じたことはない。 ステージ上でマイク・ケーブルを長く引き回す場合は効果があるかも。

おまけ:プラグ

最近はノイトリック多い。ハンダ付けしやすい。シールド側のハンダ付けがちょいと難しいけど。あとは締めあげるのに力がいるけど耐久性は高い。

HKMは好きだったのに廃業してしまった。一体の削りだしで構造がとっても頑丈。ハンダを乗せるのにしっかり温めないといけないので予備半田が必要。

G&HはHIGH CLARITYタイプが魅力的だがそれだけ。

スイッチクラフトはプラグからマイクロフォニック・ノイズが出たことあるので使わなくなった。

ハンダ付けしていると樹脂が溶けてきてユルユルしてくる安物プラグはダメ。 内部導体電極がカシメで作られているものは緩んだことがあるので意図的に避けてる。 それ以外は何でもいいんじゃない?

アンプにケーブルをつないでギター側は何もつながない。先っちょに触らないようにプラグをドライバーの柄などで叩いてみよう。カンカンと音がする。これがプラグの音!


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ケーブルの数学メモのメモ

Cは内部導体と外部導体の比が関係してくる。外部導体径d2/内部導体径d1が大なら容量小さい。つまりGGLの容量が小さいのは内部導体が細いからともいえる。
Lも内部導体と外部導体の比が関係している。外部導体径d2/内部導体径d1が大ならインダクタンスが高い。
表皮効果によりインダクタンスに周波数特性がでる。ωLとRの変曲点が可聴域にあるらしい。


参考:ケーブルの深淵なる世界
https://www.furukawa.co.jp/product/catalogue/pdf/wire/wire_all.pdf
http://www.mogami-wire.co.jp/2019_Catalog_J_190919.pdf
http://www.intex.tokyo

ケーブル買うなら
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