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真空管アンプの安全設計:対策

6:配線・実装技法


6-2:火災の前兆「過熱」の許容温度

配線技法とは直接関係ないのですが,機器の信頼性に影響の大きい温度上昇について考えてみました。

「過熱」と「絶縁」は密接な関係にあります。 温度が高い場合は絶縁性が悪くなってしまいます。 ですからトランスや電源コードなどは温度上昇の上限(ここでは「許容温度」と呼びます)が決められています。

「過熱」の定義も難しいですが,気分的には絶対温度で100℃を超えるともうそれはやばいです。 触れば火傷しますし,ビニールなどの樹脂は溶け出します。

例えば,ポリエチレンは架橋による強化が行われていても90℃が使用限界だそうです。 ポリエチレンは同軸ケーブルの絶縁材によくつかわれます。高周波用の配線材もポリエチレン被覆の物があります。 被覆が溶けてしまえばショート事故につながります。

通常動作状態でももちろんある程度熱くなります。それだけでなく過負荷状態など過酷な条件を与えても異常な温度上昇があってはなりません。

アンプの許容温度

具体的に許容温度について考えてみましょう。勝手に決めた目安ですが。。

基準:70℃を超えるものに触れると火傷になるらしい

・ 筐体外側の頻繁に触れないパネルなどは65℃を目安にする
・ つまみなどの操作部分はさらに低いほうがいい(50℃〜60℃とか)
・ 操作部分が金属の場合は熱容量が大きいため熱く感じるので50℃を目安とする
・ 装置内部の温度は配線材やコンデンサの寿命を考えて75℃を目安にする

許容温度と温度上昇の関係

許容温度は式1で計算されますので温度上昇を一定と仮定すると,室温(環境温度)によって許容温度が変わってきます。

許容温度 = 室温(環境温度)+温度上昇・・・式1

真空管アンプの動作条件として機材周辺の環境温度は40℃程度までは想定する必要があると思います。 まあ,この温度も適当です。機材が集積されたラック内は容易に40℃に達するでしょう。

先ほどの定義を環境温度40℃における温度上昇に読み代えると以下になります。

・ パネルなどの筐体外側で頻繁に触れない部分は+25℃を目安にする
・ つまみなどの操作部分はさらに低いほうがいい(+10℃〜20℃とか)
操作部分が金属の場合は熱容量が大きいため熱く感じるので+10℃を目安とする
装置内部の温度は配線材やコンデンサの寿命を考えて+35℃を目安にする

表にするとこんな感じです。

部位温度上昇
環境温度40℃
筐体外側パネルなど+25℃
操作部分
つまみなど
非金属+20℃
金属+10℃
装置内部+35℃

例えば,室温が25℃ならば金属の操作部は35℃以下でなければなりません。

部品の温度上昇

先ほど挙げた4箇所以外にも以下の部品は個別に温度上昇を測定して定格温度に収まるか確認するべきです。

目安として指でチョンっと触って明らかに熱い,数秒で指を離したくなる場合,60℃以上になっています。 室温で稼働中に熱くて触れない部品は要注意です。

・ トランス
・ トランジスタ,ダイオード,IC類
・ 抵抗器
・ 電解コンデンサ

最近の抵抗器は小型化が進み,熱に強いので表面が100℃でも手で触れない位置であれば大丈夫です。 しかし,周辺部品に悪影響を与える場合がありますので要注意です。 古いアンプでは発熱の大きい抵抗器の周辺は基板が変色しています。 特に消費電力が大きい抵抗器はとても熱くなりますのでどの程度の温度になっているか知っておいて損はありません。

トランジスタ,トランスは室温+50℃が目安でしょう。

コンデンサは電解でもフィルムでも熱に弱いのでできるだけ冷やします。

通常の配線材は90℃程度までは耐えてくれますが,抵抗器,トランス,トランジスタには密着させてはいけません。

樹脂部品は注意が必要です。特に熱に弱いのがポリスチロール,ポリエチレンです。 架橋していないポリエチレンは熱に弱く絶対温度で50℃が目安だそうです。 つまり,スチコンと同軸ケーブルは要注意です。装置内の電源周辺など温度が高い部分では使えません。

表にするとこんな感じです。

部品温度上昇
環境温度40℃
トランス表面+50℃
トランジスタ,IC類+50℃
抵抗器+60℃〜80℃
電解コンデンサ+35℃
できるだけ低く

この温度は周囲の室温に対する温度上昇なので,筐体内部の部品の場合はより厳しくなります。

温度測定時の条件

温度上昇を測る場合はもっとも発熱が多くなる条件にします。

B級アンプならば最大出力で運転中です。 A級アンプの場合は出力ゼロの方が発熱が多くなるかもしれません。

厳密には電源電圧も100Vジャストではなく,115Vなどの厳しい条件を設定する必要があります。 また,異常時(故障時)にヒューズが切れない条件があれば温度上昇を測定する必要があります。

温度測定は熱電対を使うのが一般的ですが,放射温度計があるとより便利です。

自作アンプの場合はそこまではできません。 しかし,普通に使っている状態で異常に熱くないか確認しておくべきです。 その場合,トランジスタやトランスは先に上げた温度より10℃以上低ければ安心できます。

やはり目安は室温で使って指で触れられる温度です。 ただし,感電するかもしれませんし,火傷するかもしれません。自己責任でおねがいします(笑)。


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