真空管ギターアンプの安全設計


傾向
故障や事故の原因と基本的な考え方

対策
安全なアンプを製作するための具体的な対策

1:AC電源
コンセントから供給される電源の基礎知識

3:実例
ライブでの感電

5:電源回路
安全な電源回路について解説

7:部品選定
安全な部品について考える

2:火災
火災の原因はなんだろうか

4:感電
感電しないためにどうするか

6:配線・実装技法
安全な配線方法とは

8:アース・グランド
アースのつなぎ方とグランドの処理


緒言

古今東西問わず,自作アンプの指南本は数多く見られますが,電気機器としての安全性を説いている本は滅多にありません。

そもそも自作は自己責任が大前提のようです。

自己責任  事故が起きても  無責任」(笑)

そこで自己流であちこち調べて得られた知識をまとめておこうと思い立ちました。

さて,世の中には様々な「安全規格」が存在します。製品を売って商売するためには安全規格を守らなければなりません。 普段はあまり気になりませんが,確かに安全規格は私たちの生活を危険から守ってくれています。

しかし安全規格は難解な条件付けが多く,私には理解不能です。 ですから,暗記できるほどの条件だけで安全な真空管ギターアンプが設計出来る指針があればよいと思っています。

断っておきますが,わたしがアンプの製作を始めたのは1997年ごろ。アンプは6台ほど作りましたが,製作台数としてはそれほど多いわけではありません。 ですから,ここで定義している条件は実際に実験していない項目も多々あります。 しかも自分で定義しておきながら自分では守っていない項目も沢山あります。

ということで説得力は薄いです。自己満足で情報をまとめておくだけです。

相当に議論の余地があると思いますので,おかしな点は指摘していただけると幸いです。

また,限られた時間で多くの内容を伝えようとしているため,わかりにくい部分が多々見受けられます。年中無休で工事中とさせていただきます。

エレキギターと感電のリスク

エレキギターを抱えて感電死したというハナシは確かに聞いたことがあります。 しかし普通に使っていれば感電することはないと思います。 ムダに怖がらせるようなことは言いませんが,可能性はゼロではありません。

この先何度も述べますが,エレキギターの「弦」は電気を通します。 演奏時には弦を手で押さえますので「感電」のリスクがあります。

つまりオーディ用のアンプなどよりも安全性について真剣に考える必要があります。

安全性のポイントは電源

アンプの安全性について考える上でポイントなのはコンセントから供給されるAC電源です。 皆さんご存知のように日本ではAC100Vです。

AC電源と電源回路を中心に考えていくことによって安全性に対する理解が深まります。


電気の恐ろしさ

家庭のコンセントから供給されるAC電源は最近何かと話題の「発電所」から送電線を通って供給されています。

その発電所から送られてくる電気は非常に強力です。 扱い方を間違えると感電したり,火災を発生させるなど,人間に危害を与えるには十分余りあるエネルギーを発生することができます。 そのため,安全装置の設置が法律で義務付けられ,資格を持った人でないと電気工事ができないことになっています。

身近な安全装置・ブレーカー

身近な安全装置で代表的なのは各家庭の配電盤に設置されている15A〜60A程度のブレーカーです。 過大な電力を消費するとブレーカーが落ちて電気の供給を遮断し安全を確保します。

なかなかイメージするのは難しいですが,ブレーカーが落ちるほどの電力というのは結構大きいです。

日本ではコンセントの電源電圧が100Vなので,例えば30Aを使うと3000W,つまり3kWの電力になります。

3kWの電力と言ってもいまいちピンと来ません。

ちょっと計算してみました。

単純な熱量計算では1円玉5枚(アルミニウム5g)に3kWを加えると1秒で溶ける温度(融点660℃)まで上昇します。

電力を熱量に直接換算するとこの程度の熱量になります。いかがでしょうか。自作アンプが完成して初めてアンプのスイッチを入れる瞬間。それはレコードに針を落とす瞬間よりもスリリングなわけです。

また,100Vという電圧自体も危険です。 たかが100Vと甘く見がちですが,年間に数人程度は100Vに感電して亡くなる方がいるようです。

つまり,電気は危険なのです。


危険の定義

電気以外を含めて日常生活で考えられる「危険」について考えてみました。 いろいろ調べてみた結果から自己流で分類してみました。。

■「破裂」:高い運動エネルギーをもった破片が飛散する

■「火災」:装置が燃える,設備や建物が燃える

■「感電」:感電する,「落下」を誘発する

■「落下」:重いものが落ちる,人間が落ちる

■「漏電」:「火災」を引き起こす,「感電」を誘発する

■「漏水」:設備や建物に損害を発生させる,「感電」や「漏電」を誘発する

■「負傷」:挟み込み,シャープエッジでの擦傷,火傷等

上記のいずれの「危険」でも重大な損害や死亡事故につながります。

これでは定義が一般的すぎるので,ここではギターアンプに限って項目を絞ります。

まず「水漏れ」は考えなくてもよさそうです。「落下」は骨折くらいで済むでしょうか。 真空管は割れることもありますが「破裂」はしません。電解コンデンサがパンクすることもありますが,安全にパンクするように設計されています。 「漏電」と「感電」は取るべき対策が近いので同列に扱ってよいでしょう。「負傷」は機械的な要因が大きくここでの趣旨から外れますので除外します。

ギターアンプの安全対策は「火災」と「感電」

結果的にギターアンプの安全対策としては「火災」「感電」の防止,この2点を重点的に考えていけば十分です。 いやなに,いろいろな文献を読んで勝手にそう解釈しただけです。

「火災」の予防については通常動作時はもちろん,異常な状態になっても「過熱しない」というのがポイントです。

異常事態を想定して危険を避けるための設計基準

安全を得ると言うことは,裏を返せば危険を排除していく行為です。

危険につながる異常な事態(故障)をどれだけ具体的に想定できるかが鍵になります。

「異常事態」を避けるための「対策」は「異常事態」を「想定」することから始まります。 「想定外」の事態が起こると重大な事故に繋がるのは,福島の原発事故と同じです。

ところが「異常事態の想定」というのは設計の中でも経験とカンが必要な難しい部類に入ります。 また,自分が作ったアンプが壊れる場面を想定するというのは心情的にやる気がでる作業ではありません。

普段何気なく使っている自動車は製品化される過程で多くの試験が行われます。衝突試験も実際に行われます。

同様にメーカーのアンプは実際に故障状態にする異常試験を行います。実際に多くのアンプを壊します。 ワンオフの自作屋にはとても無理な話です。

こういった事情を考えると自作屋が安全なアンプを作るために必要なのは「確立された設計基準」だと思うのです。 設計基準にしたがって作ることによって安全なアンプが出来上がると言うのが自作屋にとって現実的です。

進化する設計基準

ギターアンプが誕生して60年以上が経ちます。その間に安全基準は進化しています。 ビンテージ・ギターアンプは現在の安全基準から見ると不十分な部分もあります。

大手メーカーは進化する安全基準に合わせて設計基準を改善しているはずです。 こうした設計基準はまさにメーカーのノウハウであり,大量生産を行い,数々のステージをこなす中で見出されてきた法則でもあります。 ですから,設計基準は安易にWEBから入手できる情報ではありません。

だからこそ,安全な自作アンプを作るためのノウハウをここに結集するわけです。


巷にあふれる安全規格

安全規格は沢山あります。 ANSI・EN・IEC・IEEE・ISO・JISなど・・・。 MILやULなどの規格もありますし,CEマークやPSEマークのようなものもあります。 ここではほとんど触れていません。手引書なども読んだことはありません。

興味がある人はネットで引けるので見てみてください。

こういった規格の類は非常に複雑で難解です。 法律みたいなものですから記述も専門的ですし,どこに何が書いてあるのかさっぱりわかりません。 ですからコンサルタントが必要なわけです。

しかし,最初に申したとおり自作屋さんは無責任です。 自己責任とはいえ,大きな損害が発生する可能性を放置するわけには行きません。

まあ,わたしもアンプ設計はずぶの素人なので,誤解や間違いがあると思って参考意見にとどめてください。

アンプに必要な信頼性は産業用機器程度?

究極の安全性,信頼性をもつ機械といえばボイジャーのような惑星探査機でしょうか。 一度打ち上げてしまったら二度とメンテナンスできないからです。 次は軍用の機械や航空機,そして産業用の機械,最後に一般庶民が使用する機器でしょうか。

楽器はステージ・パフォーマンスという場面を考えると「産業用」の機械程度の信頼性は欲しいのではないでしょうか。

スペースシャトルも事故を起こすことからわかるように,絶対の安全は保証できません。 「想定外」の出来事が起きても大事故に至らないように工夫するのが「フェイル・セーフ」思想であり,「設計」の重要な要素であると考えています。


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参考文献



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